改正不動産登記法と改正民法、新法の相続土地国庫帰属法

この度不動産登記に関して重要な法改正があったことをご存じでしょうか。
これまで不動産登記の表題部については新築後1ヶ月以内に登記申請する必要がありましたが、権利部の登記については義務化されていませんでした。
それが今回の改正によって、相続における権利部の登記である相続登記についても義務化する法案が可決成立しました。
そこで今回は、改正法の内容について詳しく解説したいと思います。
1.相続登記は義務化されていなかった
不動産登記のうち所有権などの権利に関する部分については、法的に義務化されていませんでした。
意外に思う人も多いでしょう。なぜなら、ローンを組んで不動産を購入する際については、売買手続きの一環として当然のように所有権の保存登記がされているからです。
今回義務化の対象となるのが、相続によって不動産を取得する際に行ういわゆる相続登記と住所変更登記なのですが、まずは改正の主な内容についてみていきましょう。
1)相続登記の申請を義務化
- 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けました。(罰則あり)
- 相続登記の申請義務の実効性を確保するよう周辺環境の整備。
2)登記名義人の死亡等の事実の公示
登記官が住基ネットなどから死亡等の情報を取得して職権でその旨を登記に表示することが可能になりました。これにより登記で死亡の有無の確認ができるようになります。
3)相続人申告登記の新設
これまで煩雑だった相続登記手続きを簡略化し、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を登記所に申告することで、相続登記の申請義務を簡易に履行できるようになります。
4)住所変更登記の義務付け
住所変更登記の申請が義務化されます。(2年以内で罰則あり)
また、他の公的機関から取得した情報に基づいて、登記官が職権的に変更登記をする方策も導入されます。これにより、引越しに伴う住所等の変更が簡単な手続きで登記に反映されることになります。
以上が改正の主な内容です。では、なぜこのような法改正がされることになったのでしょうか。
2.所有者不明の解消に向けた動き
実は今全国的に所有者不明の土地が増えていることをご存じでしょうか。
近年、国交省が約62万筆の地籍を対象に調査を行ったデータによると、所有者が登記簿からわからなかった土地の割合が全体の約20%もあることがわかりました。
登記簿を見てもわからないということは、現実的には所有者がどこの誰なのかほぼわからないということを指しています。
ではなぜこのような状況になっているのでしょうか。
所有者がわからない2つの原因
相続登記が放置されている
不動産売買によって土地を取得した場合、売買手続きの中で所有権の登記は当然のように行われます。
一方、相続によって不動産を取得する場合、間に不動産会社が介在しているわけではないので、相続人自らが動かなければ登記名義は亡くなられた人のまま放置されてしまうのです。
ある程度利用価値のある土地や実際に自分たちが使用する予定のある土地であれば、自発的に相続登記をするケースが多いのですが、反対に使う予定のない地方の土地などについては、固定資産税の負担から意図的に逃れる目的で相続登記をあえてしないまま放置するケースがよくあります。
また、意図的ではないにしても相続登記は書類をそろえて申請しなければならないという手間もあれば、登記費用が掛かるという点も相続登記が放置される原因といえるでしょう。
住所変更登記が放置されている
不動産の所有者が引越しした場合、本来であれば所有している不動産の登記上の住所も変更するのが望ましいのですが、複数の不動産を所有している人にとって引越しの都度、住所変更登記をするのはとても大変ですし費用も掛かります。
そのため、登記簿上の所有者を訪ねてもその場所に住んでいないという状況が多発しているのです。
このように相続登記と住所変更登記という2つのポイントにおいて登記が放置されていることが、今日の所有者不明土地の増加の原因と考えられ、今回の法改正に至ったのです。
3.外国に居住する人への対応も強化
不動産登記の問題でもう一つ課題となっていたのが、外国居住者です。
外国居住者については、個人の特定が難しいケースや連絡がとれないというケースも多く、所有者不明土地の増加の一因となっていました。
また、日本の土地を所有している外国に居住する外国人については、本人確認書類をどうするかという点についても、必ずしも明確化されていないとの指摘もありました。
そこで今回の改正では、外国居住者で登記名義人となっている場合、国内の連絡先を登記に記載することとなります。これにより連絡先が容易に把握できるようになるということです。
また、外国人の場合添付書類として外国政府等が発行した身分証明書が添付された公証人等作成の宣誓供述書の提出を求めることになるとのことです。
これにより、実在する自分であることが確認できるようになります。
4.まとめ
今回の法改正により、今後は登記簿を見れば所有者が特定できるようになると考えられます。
ただ、住所変更を放置している案件は無数にあると考えられるので、これらを登記させる実行性の部分を罰則規定以外にも強化する必要があるでしょう。