病気で「住宅ローンが払えない」は一発アウト?健康リスクと対策を解説

マイホームは一生に一度の、人生で一番大きな買い物といっても過言ではないでしょう。
そのため、マイホームの購入には、ほとんどの方が何十年という住宅ローンを組んで代金を支払っていくことになりますが、いくら契約時は健康そのものでも、今後何十年も病気をせず過ごせる保証はなく、もしかしたら働けなくなり、ローンを支払えなくなってしまうかもしれません。
そこで今回は、そのようなリスクに対処する方法や、万一ローンを支払えなくなった場合の対処法などについて解説していきたいと思います。
1.病気への対策3選
まずは病気や健康リスクへの対策方法を紹介します。
1)団体信用生命保険(団信)に加入する
病気や健康リスケの対策として、団体信用生命保険(以下、団信)への加入が挙げられます。
団信に加入していると、ローン契約者に万一のことがあり、ローンが支払えなくなった場合に、保険会社が代わりに残債の返済をしてくれます。
多くの金融機関では、住宅ローンを組む際には団信への加入を義務付けています。
参考記事:不動産投資は生命保険の代わりになる?「団体信用生命保険」とは
「万一のこと」とは、具体的にはローン契約者が死亡、もしくは高度障害状態になることを指します。
高度障害とは、主に以下のような状態のことです。
高度障害とは
・両眼の視力を永久に失った状態
・言語または咀嚼の機能を永久に失った状態
・中枢神経系、精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を必要とする状態
・両腕とも手関節以上で失ったか、両腕を全く動かすことができない状態
・両足とも足関節以上で失ったか、両足を全く動かすことができない状態
・片腕を手関節以上で失っていて、片脚を足関節以上で失ったか、全く動かすことができない状態
・片脚を足関節以上で失っていて、片腕を手関節以上で失ったか、全く動かすことができない状態
上記を見ると、主に事故にあってしまった場合の保険のように思えるかもしれませんが、病気により視力を失ったり、手足が動かなくなってしまったりすることもあり得ますので、団信に加入しておくことで健康リスクへの対策になるでしょう。
団信への加入が任意であるフラット35などの住宅ローンもありますが、怪我や病気に備えるのなら加入すべきです。
ただし、団信には審査があり、持病があると加入できない場合もあります。
その場合は、ワイド団信への加入を検討するとよいでしょう。
ワイド団信は、例えば高血圧症、糖尿病、肝機能障害などの持病があり、団信には加入できない方でも、加入できる可能性がある保険です。
そのかわり、通常の団信に比べると、年0.3%を上乗せした金利が適用されるため、支払額の負担は大きくなってしまいます。
また、ワイド団信加入の審査基準は各金融機関や、同じ病気であったとしてもその方の病状によっても違うので、審査に通らない可能性があることは理解しておきましょう。
参考記事:ワイド団信(うつ病)ローンとは?フラット35とも比較
2)特約付きの団信に加入する
近年、がんや疾病に関する特約付きの保障を追加可能な団信も増えたので、健康面に対するさらなるリスク対策をするのであれば、そちらへの加入をおすすめします。
三大疾病保障付団信
三大疾病とは、がん、急性心筋梗塞、脳卒中のことです。
上記の病気になった場合、要件を満たしていれば保険金が支払われます。
注意点としては、その病気になったら必ず保険金が支払われるというわけではないことです。
金融機関によっても違いがありますが、がんといっても、上皮内がんや皮膚がんなどは対象外であることが多いです。
脳卒中や急性心筋梗塞の場合も、診断を受けた日から60日以上特定の症状が続いているという医師の診断を受けた場合、などの条件があります。
八大疾病保障付団信
八大疾病とは、先ほどの三大疾病に、糖尿病・高血圧症・肝硬変・慢性腎不全・慢性膵炎 を加えたものです。
こちらも、診断されたら必ず保険金が支払われるわけではなく、継続して180日以上入院した場合などの条件があります。
金融機関によっては、がんに特化した「がん団信」特約がある場合や、三大疾病と八大疾病を合わせて十一大疾病としている特約もあります。
また、特約を付けた場合は、当然ですが月々の保険料は上がってしまうので、どの金融機関の疾病特約が自分に合っているのかや、保険料はどの程度になるのかなど、よく検討することが重要です。
3)一般の保険で対処する
団信や、特約付き団信で全ての病気をカバーするのは難しいです。
そこで、団信で保障しきれない部分を一般の保険で補填する、という方法があります。
例えば、医療保険に加入しておけば、団信での住宅ローンの支払いの保障に加え、医療保険で治療費も保障され、より安心できるでしょう。
また、就業不能保険に加入していると、病気や怪我で長期間働けなくなった場合に毎月保険金が支払われるため、疾病保障付団信の保障対象となっていない病気が理由で働けなくなるリスクにも対処可能です。
2.ローンを支払えなくなってしまった場合の対処法
健康リスクに注意し、万全な対策をしていると思っていても、離婚などの家庭の事情や、新型コロナウイルスの蔓延による失業など、予期せぬ出来事があり、ローンを支払えなくなってしまう場合もあるかと思います。
そんな時はどうしたらいいのでしょうか。
1)金融機関に連絡する
まずは借入先の金融機関に相談しましょう。
事情を説明し、今後もローンを支払っていきたいという旨を伝えれば、返済条件の変更を提案してもらえる場合があります。
例えば、一定期間は利息のみの支払いをする、借入期間を延長することで、一定期間返済を減額する、などです。
条件の変更をしてもらえるかどうかは、金融機関や支払い不能となった事情によって異なりますが、滞納してしまったり、どこかからお金を借りてその場しのぎで用意したりするよりは、一度相談してみるべきでしょう。
2)労災保険が利用できるか確認する
勤務中に起こったことが原因である怪我や病気であれば、労災保険が利用できる可能性があります。
労災保険は、正式名称を「労働者災害補償保険」といい、労働者を保護するための社会保険であり、略して労災ともいいます(以下、労災)。
例えば、パワハラなどが原因で精神的な苦痛を与えられ、うつ病を患い働けなくなった場合にも労災は適用されますが、原因の解明が難しいため認定に時間がかかる、または認定を受けられないケースもあるので注意しましょう。
また、労災の給付には申請手続きが必要であり、会社が行ってくれることもありますが、自分で申請しなければならないケースもあります。
労災の申請手続きには期限が設けられているので、利用できる可能性がある場合は早めに申請することが重要です。
3)新型コロナウイルス生活支援特設ホームページを見る
新型コロナウイルスの影響による収入の減少や失業の場合、厚生労働省による「新型コロナウイルス生活支援特設ホームページ」に、給付金や補助金など支援の情報が掲載されているので、支援の対象者であるかどうか確認してみるのがよいでしょう。
まとめ
住宅ローンは、何十年もかけて返済するものなので、契約した当時は健康でも、返済中に年齢を重ね、病気になってしまう可能性は十分にありえます。
しかし、団信に加入して、さらに特約を付けたり、一般の保険にも加入したりして、少しでも病気になった場合のリスクを減らすことは可能です。
また、ローンを支払えなくなってしまった場合でも、滞納して最終的にマイホームを手放すことにならないよう、できることはあります。
ご自身と、大切な家族が安心してマイホームで生活できるよう、事前にできる対策をしておきましょう。