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コラム

相続前の準備と不動産で家族に資産を残す方法

執筆者:棚田 健大郎 棚田 健大郎

2015年に相続税の法改正が行われて以降、相続対策について積極的に検討する人が増えてきました。

中でも不動産を所有している方については、基礎控除額が引き下げられたことで相続税の負担が重くなる可能性が高いので注意が必要です。

そこで本記事では、不動産相続で取るべき対策や相続発生後の注意点について解説したいと思います。

1.そもそも不動産は持つべき売るべき?

不動産を所有している方から「相続対策を考えた場合、売った方がいいのか、それとも売らない方がいいのか教えてほしい」というご質問を頂くことがよくあります。

結論からいうと、「相続対策の目的によって違う」というのが答えです。

相続対策と一言でいっても、大きく分けて次の2つのケースがありどちらの目的を達成したいかによってとるべき対策は異なります。

節税対策が目的の場合

相続税の節税対策が目的であれば、不動産はそのまま持ち続ける方が有利です

例えば1億円のアパートを保有していた場合、生前に売却して現金1億円に資産を組み替えると1億円が相続税の課税対象になってきます。

対して、1億円のアパートをそのまま保有していて相続が発生した場合は、時価の7割程度の相続税評価額に置き換えてそこに相続税が課税されるので、相続税負担は圧倒的に軽くなるのです。

現金の生前贈与を活用しよう

このように不動産は現預金よりも課税対象となる評価額が低く抑えられるので、保有していた方が相続税の節税効果は高いのですが、アパートのように家賃収入が生じる場合は生前贈与を組み合わせることでより節税効果が高まります

贈与税には年間110万円までの基礎控除があるので、その範囲内で家賃相当額を生前贈与していくことで、節税効率の悪い現預金の蓄積を防止することが可能です。

遺産分割対策が目的の場合

相続人予定者が複数いる場合は、節税対策よりもむしろ遺産をどう分けるかの遺産分割対策の方が重要になる可能性があります。

相続財産が現預金だけであれば、法定相続分に従って分配すれば問題は生じませんが、不動産が相続財産に含まれる場合は物理的に分けることが難しいので、誰が相続するのかについてトラブルになることがよくあるのです。

特にアパートなど収益性が高い不動産の相続については、相続人同士で取り合いのような状態に陥ることもあるので、いっそのこと売却して現金化しておく対策をとるケースもあります。

基礎控除額以下なら売却したほうがいい

そもそも相続税はすべての人に課税される税金ではなく、以下の計算式で算出した金額を課税評価額が上回った場合にその部分に対して相続税が課税されます

相続税の基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)

例えば相続人が3名いるケースであれば基礎控除額は4,800万円なので、この金額を超えなければ相続税は課税されません。都心の不動産を売却すると軽く超えてしまう金額ですが、地方の物件であれば売却して現金化したとしても超えない可能性があります。

基礎控除額を超えなければ相続税を気にする必要はないので、遺産分割対策だけを考えて売るかどうか判断すればよいでしょう。

法定相続人

民法で定められた「相続の際に遺産を受る権利がある人」と認めている一定の相続人のこと

売却したらアパートの賃借人はどうなるの?

アパートを売却するとなると、今住んでいる賃借人のことを心配する人もいるのではないでしょうか。

賃貸物件の売買については、原則として現在交わしている賃貸借契約をすべて引き継ぐ「オーナーチェンジ」というやり方で行われるので、賃借人は家賃の振込先が変わるくらいで特段の支障はありません。

ただし、売却した価格によっては譲渡所得税が課税される可能性がありますので、事前によく確認してから判断しましょう

オーナーチェンジ

区分所有や一棟所有の分譲マンションなど投資用物件を賃借人が居住している状態で賃借権とともに所有権を次の買主(新オーナー)に移転すること

2.どうしても売れない土地はどうする?

目立った資産はないものの、地方の利用価値の低い土地を複数保有しているという場合は、次の世代に負の資産を残してしまう恐れがあります。

2020年3月現在では、まだ土地の放棄は認められていないので、たとえ使わない土地だとしても相続した以上は管理し続けなければなりませんし、固定資産税も負担しなければなりません。

評価額が低ければ固定資産税が課税されない場合もありますが、相続税については倍率評価で計算することから予想外に高い税額になることもあるので油断してはいけません。

倍率評価

固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出すること

相続放棄する選択肢も

どうしても生前に処分ができなかった負の資産がある場合については、相続発生時に相続人が相続放棄をすることですべてを放棄することも可能です。

プラスの財産も一切相続できなくなる点に注意が必要ですが、将来にわたって使わない土地の管理から逃れられるという点においては一定のメリットがあります。

相続放棄のやり方は簡単で、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して裁判所とやり取りをすればよいのですが、一度相続放棄が受理されると原則として取り消すことができないので慎重に判断しましょう

3.まとめ

不動産相続は相続対策の目的によって、売るべきか売らざるべきかの判断が変わってきます。相続税の課税対象財産のうち半分以上の価格割合を不動産が占めているといわれているので、どのように対策をとるかによって相続税負担も大きく変わることになります。

まずは相続対策を講じる前に目的を明確にしてから、それにあった対策を考えるとよいでしょう。

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