1.ローン残債あっても売れるのか
昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で、ローンの返済が苦しくなってきて売却を検討したいという方からご相談をいただくケースがちらほら出てきています。
確かに、ローンの返済が難しい状況であれば物件自体の売却も検討せざるをえないところではありますが、必ずしも売却で解決できるわけではありません。
ローン残債がある物件を売却するためには、物件に設定されている金融機関の「抵当権」を抹消する必要があります。抵当権を抹消するためには、ローン残債を一括返済しなければなりません。
抵当権
金融機関等が融資をする際にローンを借りる人が所有する不動産に設定をする権利
ローン残債は一括返済が必要
ローン残債がある物件を売却する際、通常は売買代金をそのままローン残債に充当して一括返済をします。
例えば、ローン残債が1,000万円で売買代金が1,300万円だとした場合、決済日当日に1,300万円が振り込まれたと同時に1,000万円が引き落とされて300万円が手元に残るイメージです。(アンダーローン)
ところが、物件によってはローン残債以下の金額でしか売れないというケースもよくあります。この状態をアンダーローンに対してオーバーローンといいます。
上記のケースで、仮に800万円でしか売れない場合は不足する200万円を自分自身キャッシュで準備して返済しなければ、物件を売却することができないのです。
このようにローン残債が残っている物件の売却を検討する際には、必ず一括返済しなければならないので、まずは物件がローン残債以上で売れるのかどうかを不動産会社の無料査定などを利用して確認する必要があります。
2.ローンが残っている物件を売却する際の流れ
ローン残債がある状態で物件を売却する際の手続きは、概ね以下のような流れになります。
- ローン残債と査定額を確認する ※この時点でオーバーローンかアンダーローンかがわかります。
- 募集開始
- 売買契約締結
- ローン一括返済の申し込み ※この時点で、オーバーローンの場合は不足する金額が確定するので、決済日までに繰り上げ返済をします。
- 決済引き渡し
基本的に通常の売買と同じ流れですが、オーバーローンの場合は決済日までの間に不足する金額をキャッシュで準備して繰上げ返済しなければならない点に注意が必要です。
3.どうしても一括返済が苦しい場合
物件を購入後、それなりの期間が経過していればローンの返済も進んでいるためオーバーローンの問題はそんなに起きません。問題なのは購入後、早い段階で売却せざるをえなくなったような場合です。
私が過去に相談を受けたケースで、約2,000万円で購入した投資用マンションのキャッシュフローが予想よりも悪く、なんとか5年は頑張ったがもう厳しいので、すぐにでも売りたいという方がいました。
ところが不動産会社で査定をとってみると、1,200万円前後と購入価格を大幅に下回る金額だったのです。
都内の物件だったのですが、新築当初の分譲価格は高かったものの、駅から10分以上かかるという点がネックとなり中古市場での価格は大幅に低くなるというのが現実でした。
結局その方は、不足する800万円を準備することができないということで、売却を断念することになりました。
仮にそれでもなんとか売りたいという場合、どのような方法があるのでしょうか。
任意売却ならオーバーローンでも売れる
オーバーローンで一括返済が難しいものの、今のままのローンを返済し続けていくこと自体が難しいという方については「任意売却」という手続きが残されています。
任意売却とはローンを組んでいる金融機関の了承を受けた上で売却する方法で、オーバーローンで一括返済が難しい場合に、返済額の免除や売却後の分割返済といった対応をしてもらうことができる債務整理の手続きのうちの1つです。
ただし、任意売却すると個人信用情報機関いわゆるブラックリストに記録が残ることになるため、以降の借入やクレジットカードの利用ができなくなります。
また、任意売却は本人から直接金融機関に相談してもなかなか取り合ってもらえないため、任意売却の専門業者や弁護士などの専門家に依頼する必要も出てきます。
このように任意売却には一定のリスクがありますので、それでも任意売却に踏み切るかどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。
4.まとめ
ローンがない物件であれば、自分の納得できる売買代金で契約して代金の支払いを受ければ何の問題もありませんが、ローン残債がある物件を売却するとなると、一括返済が必要になることからいくらで売れるのかが非常に重要となってきます。
オーバーローンになっている方については、そのまま持ち続けた場合と、キャッシュを準備して一括返済した場合とでどちらの方が得なのかを慎重に判断することが重要です。
また、どうしても繰上げ返済するキャッシュが準備できないという場合は、任意売却専門業者や弁護士に相談してみるとよいでしょう。