1.コロナ禍でも増え続けた人口
東京都は新型コロナウイルス感染症対策として、県をまたぐ移動の自粛を呼びかけたほか、上京のタイミングについて見合わせるよう促していましたが、4月中に約2万人も人口が増えています。
※出典:東京都総務局 東京都の人口(推計)https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jsuikei/js-index.htm
注目すべきは内訳です。
昨今の東京都の人口増加の一要因だったのが外国人の入国で、2019年は約12,000人も増加していましたが、コロナ禍による入国制限で外国人の入国は大幅に減少しました。
一方で日本人の東京への流入が約14,000人と過去最多となっているのです。
コロナ禍の世界的な影響により、これまで海外にいた日本人約9,000人が一斉に帰国して都内等に流入したことが主な要因でしょう。コロナ禍の影響はしばらく続くと考えられるため、今後も日本人を中心とした人口流入が続くと予想されます。
不動産投資において人口増加の傾向はすなわち賃貸需要の底上げにつながることから、基本的にはプラス要因と見てよいのですが、実は都内でも区によって状況が違ってくる可能性があるのです。
2.新宿区の人口が減少したわけ
東京都の人口が増加する中、実は4月の人口が減っているのが意外にも新宿区です。
新宿区は4月において人口が295人減少しており、23区内で唯一100人以上の減少がありました。
この動きには今後の都内の不動産投資市場を攻略するうえで、重要なヒントが隠されています。
1)留学生人口の減少
新宿区の人口が減少した要因、それは外国人留学生の減少です。
もともと新宿区は早稲田大学、東京理科大学をはじめとする大学や、専門学校や日本語学校が数多くあり、そこに通う留学生の人口が毎年一定程度ありました。
ところが、コロナ禍の影響で感染拡大防止と学生の安全確保のため当面の間留学生の受け入れを中止する学校が増えたのです。
新宿区は総人口の約12.4%を外国人が占めていることもあり、外国人留学生の動向が人口変動に影響を与えやすいと考えられます。
ちなみに、新宿区のほかに23区で人口が減少した区がもう1つあります。
荒川区です。
荒川区も外国人人口が23区内で上位3位に入るので、新宿区と同じ傾向があると考えられます。
2)人口が増加している区の特徴
2020年4月において23区で人口増加が多かったのが江東区、世田谷区、品川区です。
実はこの3つの区は新宿区や荒川区とは違い、総人口に占める外国人比率が非常に低い地域で、コロナ禍の影響をほとんど受けておらず、むしろ帰国者などの影響で人口増加につながっていると予想できます。
このように都内全体でみると1,400万人を突破したとはいえ、地域によって傾向に差が出始めているのです。
3)不動産投資で今後注目すべきエリア
人口増加を賃貸需要の指標として考えた場合、今後投資エリアとして注目すべきは都内の中でも外国人の人口比率が少ないエリアといえるかもしれません。
23区内で考えると、新宿区、豊島区、荒川区、台東区は外国人比率が高いので学生をターゲットとするワンルーム投資やアパート投資については慎重に検討すべきです。
対して、世田谷区、大田区、江東区、練馬区、板橋区、江戸川区などは外国人比率が低いのでコロナ禍による影響を受けにくいと考えられます。中でも、世田谷区は三軒茶屋周辺の再開発事業など、今後日本人の人口流入にプラスとなる開発が進められていますのでより注目したいところです。
4)ねらい目は都下の割安物件か
都内全体を見渡した場合、穴場になりそうなのが東京都下、つまり市部です。
東京都市部は外国人比率が非常に低く、コロナ禍による外国人人口の影響はほとんど受けていません。むしろ、コロナ禍による新しい生活様式によってプラスに転じる可能性があるのです。
テレワークが急速に普及したことで、これまで通勤のために無理をして都心部の高い家賃の部屋を借りていた人たちが、徐々に家賃が安い郊外へと移っていく可能性があります。
仕事や学業などあらゆることがリモートで対応できるようになりつつある中、都心で高い家賃を負担して住む価値について見直されるでしょう。
そう考えると、今投資すべきは都内でも比較的割安感のある都下の物件といえるかもしれません。
3.まとめ
東京都の人口が1,400万人を突破したこと自体は、都内の不動産投資にとって追い風になるのは間違いありません。
ただ、内訳を細かく見ると外国人留学生やインバウンド需要の影響を受けやすいエリアとそうではないエリアで事情が変わってくる可能性があることには注意をした方がよいでしょう。
不動産業界も観光業界と同じで、しばらくの間は国内需要を確実に取り込むことがアフターコロナにおいて生き残る秘訣となるのではないでしょうか。