1.ペアローンとは
ペアローンは、一定の収入がある同居親族と一緒に、それぞれが債務者として住宅ローンを組む方法です。
ペアローンを組むのが必要になるケースは、1人の年収だけでは、住宅ローンの借入可能額が、希望している借入額に届かず、ペアローンを組むことで借入額を増やすことができるときです。
ペアローンは、収入は合算しますが、借入額も毎月の返済額もそれぞれ個別に設定できる独立したローンです。各自がお互いの住宅ローンの連帯保証人になり、団体信用生命保険に加入することになります。
2.ペアローンのメリット
1)借入額が増える
金融機関は、返済が滞りなく行われることを重視しますので、家庭内に収入がある人が2人いれば、1人の場合よりも借入の審査は通りやすくなります。さらに2人の年収を足して審査を受けられるので、借入できる金額を増やすことができます。
2)住宅ローン控除を2人とも受けられる
夫婦がそれぞれ住宅ローン契約を行って、お金を借りた場合は、夫婦の2人とも住宅ローン控除を受けることができます。
住宅ローン減税は、毎年の住宅ローンの年末残高の1%が所得税から直接控除されます。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 2人の合計収入が3,000万円以下
- 延床面積が50平米以上の住宅
- 返済期間が10年以上
住宅ローン控除は最大で40万円という上限があります。
例えば、6,000万円のローン残高があるとして、単独で住宅ローンを組んでいる場合は、住宅ローン控除額は40万円までとなります。これが、ペアローンで夫婦それぞれ3,000万円の借入残高がある場合、お互いに30万円の住宅ローン控除が受けられ、合計60万円の控除を受けることができるのです。
3)売却するときの3,000万円特別控除を増やせる
将来、物件を売却した場合、売却によって得られた利益について3,000万円までは税金がかかりません。ペアローンでは物件を共有名義にするため、将来売却するときは、3,000万円の特別控除を2人とも受けることができます。
3.ペアローンのデメリット
1)事務手数料等の費用が2倍かかる
それぞれが独立したローンですので、住宅ローンの事務手数料や登記手数料が2本分になります。
2)団体信用生命保険でカバーできるのは片方だけ
団体信用生命保険には2人とも加入はできますが、万が一どちらかが亡くなった場合に債務免責されるのは1人分のみです。残った方の住宅ローンは返済し続ける必要があります。
1人で住宅ローンを組んだ場合は、団体信用生命保険によって全て完済されますが、その点では、ペアローンを組む際は注意が必要となります。
3)返済のリスク
夫婦でペアローンを組む場合、ずっと共働きが続くとは限りません。物件購入当初は共働きで2人とも収入があっても、出産や育児などで片方の収入がなくなった場合どうするかという問題もあります。育児がひと段落したら職場復帰するつもりでも、実際にその通りになるとは限りません。また、離婚となってしまった場合に権利関係の調整が必要です。
ペアローンで2人の収支を合算できるといっても、借入額を上限いっぱいに設定するのではなく、10年、20年先を見据えた家計を検討する必要があります。
住宅ローンは「借りられるか」ではなく「返せるか」を考えなければなりません。長期視点を見誤らないよう注意しましょう。
4.まとめ:ペアローンに向いている人
ペアローンに向いているのは以下のような人です。
- 夫婦ともに、安定した収入があり、出産や育児休暇後も復帰できる家庭
- 団体信用生命保険に2人とも問題なく加入できる
借り入れ当初に共働きでも、どちらかが休職し、その後復帰できないと、これまで通りの収入ではなくなります。その場合でも住宅ローンの支払いは続いていきます。もし、収入や仕事が不安定であるなら、ペアローンを組むことはかえって負担になってしまうかもしれません。
また、ペアローンでは団体信用生命保険には2人とも加入はできますが、仮にどちらかの健康状態に問題があり、団体信用生命保険に加入できなかった場合、ペアローンも組むことはできません。
共働きで収入が安定していて、どちらも団体信用生命保険に加入できる夫婦であればペアローンを組むメリットは大きいといえるでしょう。
ただし、諸費用も2本分になるため、ペアローンとそうでないローンの複数のパターンで試算し、トータルコストの少ない選択を心掛けるようにしましょう。