不動産取引「決済」に立ち会わないとダメ?買主や売主不在で手続きを進める注意点
不動産取引の「決済」とは、買主が売主に売買代金の支払いを行うことです。
不動産を購入する場合、買主が購入する不動産の所在地に赴き、残代金の支払いを行い、物件の引き渡しを受けます。
決済が確認されると、不動産の所有権を売主から買主へと移す移転登記が行われるのです。
しかし、不動産投資を目的として遠方物件を購入する場合や、体調に問題がある場合など、不動産の所在地まで足を運べないケースも。
そのような場合、買主や売主が立ち会わない形で不動産の決済を進めることは可能でしょうか。
本記事では不動産取引の決済について、立ち会いの必要性、買主や売主不在で決済を進める場合の注意点も解説します。
1.「決済」の流れと立ち会いが必要な理由
決済とは、買主が売主に売買代金を支払うこと。
不動産購入時の決済では、原則として買主と売主の立ち会いが必要です。
決済手続きの流れと、決済時に立ち会いが必要な理由について解説します。
1)不動産「決済」手続きの流れ
通常の決済手続きは、次のような流れで行われます。
- 決済の場にいる売主と買主の身分証や実印、所有権移転に必要な書類などを司法書士が確認します。
- 買主が売主に残代金を支払い、買主がローンを利用する場合は融資が実行されます。
- 現金で支払う際は現金が確かに売主に渡されたこと、振込の場合は代金が売主の口座に入金されたことが確認できたら、買主に領収書が発行され、物件の鍵や書類が引き渡されます。
- 司法書士が法務局で所有権の移転登記を行い、決済は完了します。
2)不動産「決済」に立ち会いが必要な理由とは
不動産売買では契約締結後、すぐに所有権が移転されるわけではありません。
契約締結のタイミングではなく、売買代金を全額支払ったタイミングで所有権は移転されます。
そのため、通常は買主と売主、不動産会社の立ち会いの下で、買主から売主に代金の残額がすべて支払われたことを確認し、所有権の移転登録が行われるのです。
自分が住む目的で不動産を購入する場合は、とくに買主や売主の立ち会いが必要となります。
また、不動産の決済には多額のお金が動きます。
そのため、支払代金や契約書の内容に不備があるなどして、決済終了後に何らかのトラブルが発生する可能性も否めません。
トラブルの発生を極力抑えられるよう不動産会社や司法書士が同席し、契約内容と共に売主と買主の双方の意思も確認したうえで決済手続きを進めます。
3)代理人を選任すれば立ち会わずに「決済」手続きを進めることも可能
原則として、不動産の決済手続きには買主・売主の立ち会いが必要です。
しかしながら、何らかの事情で不動産の決済に立ち合えない場合、買主や売主に代わって手続きを進める代理人を選任することで、決済を代行してもらうことができます。
また、代理人に決済の手続きを委譲する場合は、委任状の準備が必要です。
2.不動産投資の「決済」に立ち合わない場合は委任状が必要
不動産取引の決済に買主や売主が立ち会わない場合、決済に必要なさまざまな手続きを代理人が行います。
買主や売主は、代理人に不動産の決済に関する手続きを委任する旨を明記した委任状の準備が必要です。
また、委任状以外にも準備しなければならない書類があります。
1)委任状とは
法律など重要な事柄を扱う手続きは、本人の意思に基づいて行う必要があります。
しかしながら、やむを得ない事情によって本人が直接手続きを行えない場合、代理人を選任することで代理人の行為を本人と同等の行為とみなすことができるのです。
代理人に手続きを依頼した場合、本人から依頼された人物であることを証明する必要があります。
また、代理人に何の権限を委譲するのかについても示さなければなりません。
本人が代理人に委任をした旨と、代理人に委任する権限の範囲を証明する書面として、委任状が必要になるのです。
2)委任状に記載が必要な項目
委任状には、とくに決まったフォーマットがあるわけではありません。
しかし、不動産取引の決済を代理人に委任する場合、委任状に以下のような項目を記載する必要があります。
- 所在や地番、地目など土地の表示項目
- 家屋番号、種類、床面積など建物の表示項目
- 不動産売買契約の締結に関する権限、売買代金の支払い等に関する権限等、具体的な委任の範囲
- 代理人の氏名及び住所
- 委任者である買主、または売主の氏名及び住所の署名、実印による押印
- 書面記載日の日付
3)買主や売主が立ち会わない場合に不動産の決済に必要なその他の書類
買主や売主が決済に立ち会わない場合、委任状に加えて次の書類の準備が必要です。
- 買主の印鑑証明書、住民票
- 売主の印鑑証明書、住民票
- 代理人の印鑑証明書、本人確認書類
代理人が委任状に記載された人物だと証明するために、代理人も印鑑証明書と本人確認書類を準備する必要があります。
また、買主や売主の印鑑証明書と住民票も必要です。
3.不動産の「決済」を買主・売主が立ち会わないで行う場合の注意点
委任状を準備すれば、買主や売主が立ち会わずに、不動産の決済を進められます。
しかしながら、立ち会わずに決済を行う場合、注意点もあります。
1)委任状の内容を十分に確認する
委任状は、本人が代理人に権限を委譲したことを証明する書類です。
そのため、代理人が委任状をもとに行った行為は、本人が行ったことと同等とみなされます。
したがって、不動産の決済手続き完了後に、何らかの誤りがあったと気が付いても、代理人の行為だからといって簡単に決済を撤回することはできません。
不動産売買取引における委任状は、一般的に買主や売主本人が作るのではなく、不動産会社が作成するケースがほとんどです。
したがって、委任状に署名・捺印を行う前に、表示項目や権限を委任する範囲等について記載内容に誤りがないか、しっかりと確認をしなければなりません。
署名・捺印後、何らかの項目が追記されてしまう可能性もあるため、文末には「以上」の記載があるかどうかも確認しておきましょう。
2)信頼できる代理人を選定する
不動産の売買契約は高額な取引となり、多額の現金を代理人に預けることも。
最悪の場合、現金をそのまま持ち逃げされる可能性もあるでしょう。
したがって、不動産投資の決済を買主や売主不在で行う際は、信頼のおける代理人を選定することが大切です。
一般的に、代理人には夫や妻、子どもなど信頼できる家族を選任するケースが多くなっています。
家族や親族に委任できる人がいない場合、司法書士など専門家に代理人を依頼すると安心です。
実は不動産投資の場合、金融機関と不動産会社だけで決済を行うケースも少なくありません。
不動産会社によっては、これまでに買主・売主不在の決済に関わった経験もあるはずです。
信頼できる不動産会社に、代理人の選定方法や買主・売主不在の決済の進め方について相談してみることをおすすめします。
3)「決済」口座にお金を多めに入れておく
買主が立ち会わない場合、代理人が決済の手続きをとります。
代理人となった司法書士に支払う報酬は、買主が支払うことが多いでしょう。
また、振込には振込手数料も発生するものです。
しかし、決済をする銀行口座に物件購入の残代金だけしか入れていなかった場合、決済費用が不足してしまうことに。
代理人に決済を委任する場合、万が一の事態に備え決済をする銀行口座にはお金を多めに入れておくようにしましょう。
まとめ
原則として不動産投資の決済は、買主や売主、不動産会社、司法書士などが立ち会う形で行われるケースがほとんどです。
しかしながら、さまざまな事情で立ち会いが難しい買主や売主は、委任状を作成して契約手続きや決済手続きを代行する代理人を選定することで決済ができます。
委任状によって買主や売主から権限を委譲された代理人の行為は、本人と同等の行為としてみなされます。
したがって、不動産の決済に立ち会わない場合、代理人には信頼性の高い人物を選定しましょう。
また、代理人となった司法書士に報酬を支払う必要があり、「決済」口座には余裕を持たせた金額を入れておきましょう。
実は不動産取引では、買主や売主が立ち会わず「決済」手続きを進める場合も少なくありません。
代理人の選定に不安がある場合、立ち会わないで決済を進めたい場合は、不動産会社に相談してみるのもおすすめです。