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税金

【総まとめ】個人こそ使いたい節税一覧【対策編】

執筆者:宍戸 智之 宍戸 智之

サラリーマンの方、副業をされている方、また個人事業主の方。

どの方々にも共通してその利益に対して税金がかかります。

できれば支払う税金は少なくしたいという方が多いと思います。

今回は特に個人の方に知っておいていただきたい制度についてまとめました。

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1.そもそもどれだけ税金を支払っているのか?

1)サラリーマンが負担する税金・社会保険

サラリーマンの方は毎月の給与から、所得税・住民税・社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)および雇用保険が差し引かれていると思います。

それぞれ会社が計算してくれるため、なかなかご自身でその内容を確認することは少ないのではないでしょうか。

 

下の図に、それぞれの年収(横軸)に対する負担率(縦軸)を示すグラフを記載しました。(筆者計算)

年収に応じて、税負担(所得税及び住民税)率は6~27%と上昇していきます。

所得税については収入に応じて税率が上昇していくという仕組み(累進課税制度)となっているためです。

住民税は所得の大きさに関わらず一定の税率になっています。

 

なお、ここでいう「年収」は給与額面のことです。

所得税を計算する際の「所得金額」とは異なります。

収入金額と所得金額の違い

収入金額(いわゆる年収)
個人事業主の場合は、売上金額のことを指す。
サラリーマンの場合だと、税金や社会保険料が引かれる前の給与総額(額面)のこと。

所得金額
個人事業主の場合は、売上から経費を差し引いて残った金額のこと。
サラリーマンの場合だと、会社員の必要経費とみなされる「給与所得控除」を差し引いた金額のこと。

そして、もう一方の社会保険と雇用保険は16%から9%と下降していきます。

これは社会保険のうちの厚生年金の料率は月額66.5万円が上限となっているためです。

そのため、その12か月分であるおよそ年収800万までの負担割合は15%程度で一定となっています。

税金・社会保険等のそれぞれを合計すると、おおよそ年収の2,3割が税金等で控除されていることがおわかりいただけるかと思います。

所得税に関して

サラリーマンの方の所得税は、年末に勤務先で実施される「年末調整」で確定することになります。

毎月の給与から差し引かれている所得税は、その月の給与等に応じて概算で差引かれています(源泉徴収)ので、年末調整により確定した金額よりも源泉徴収された金額が多い場合は、還付されることになります。

住民税に関して

一方、住民税は確定した税額を基に翌年の6月から12か月にわたって給与から差し引かれます(特別徴収)。

社会保険料に関して

社会保険は原則的に4月から6月の給与の平均額に応じて負担額が決まります。

昇給等がなければ、おおよそ9月又は10月の給与から12か月にわたって同額が給与から差し引かれます。

2)個人事業主が負担する税金

個人事業主の方でもサラリーマンの方と同じく所得税・住民税が発生します。

サラリーマンの方の所得は「給与所得」となりますが、個人事業主であれば、「事業所得」、不動産賃貸業を行っている場合は「不動産所得」を計算して所得税・住民税を計算します。

さらにその事業が70の法定業種に該当すれば個人事業税が課される場合があります。

不動産賃貸業でもワンルーム10室以上など一定規模以上になると課税されます。

サラリーマンの方でも条件に当てはまれば該当しますので、その規模となっている場合には注意です。

 

社会保険については、所得に応じて金額が決まる国民健康保険と定額の国民年金を負担することになります。

個人事業主の方はサラリーマンの方と違って勤務先がないため、年末調整ではなく、翌年3月に「確定申告」をすることにより、その税額が確定されることになります。

>>合わせて読む「不動産投資の確定申告のやり方。節税方法や注意点を解説

2.個人こそ使いたい節税対策一覧

収入が増加するにつれて税金の負担割合は増加していきます。

その負担割合を少しでも下げたいという方も多いと思います。

サラリーマンの方や個人事業主の方ができる節税対策としては、次のようなものが考えられます。

節税対策1)ふるさと納税

✔ 最大で「寄付額-2,000円」の効果

2020年度の受入金額は約6725億円(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」)にのぼり、その認知度も高い制度となってきています。

自身で選んだ自治体に対して寄付をすることで、その寄付金額の一部がその年の所得税及びその年の翌年に支払う住民税から控除されることになります。

本来の地方創生の趣旨とは異なりますが、返礼品を受取る場合には税金の前払により商品を受取るイメージとなるため、その意味ではお得な制度といえます。

 

会社員でもふるさと納税はできる?

会社が行う年末調整では、ふるさと納税の適用を受けることはできません。

その適用のためにはご自身で確定申告をする必要があることに注意が必要です。

ただし、寄付先の自治体数が5以下である場合には、申請書を提出することにより確定申告は不要となります(ワンストップ特例制度)。

 

ふるさと納税の控除範囲は?

寄付による控除額には上限があり、ご自身の所得によって異なります。

上限内の寄付であれば、「寄付額-2000円」を控除した金額が税金から控除されます。

上限額については、サラリーマンの方であれば、源泉徴収票を基にふるさと納税のサイトなどで把握できるようになっていますので、事前に確認されることをお勧めします。

実際の控除額は、寄付年の所得税の申告書に記載した寄付金控除額(寄付金控除額×自身の所得税率=適用額)および寄付年の翌年6月ごろに交付される住民税の明細書で確認できます。

ふるさと納税のまとめ

・サラリーマンがふるさと納税を利用するには、基本的には確定申告が必要

・ただし寄付先の自治体数が5以下の場合は確定申告は不要(ワンストップ特例制度)

・上限内の寄付であれば、「寄付額-2000円」を控除できる

・上限額の確認は、源泉徴収票を基にふるさと納税のサイトでできる

節税対策2)住宅ローン控除

✔ ローン残高等の1%の節税

ローン残高等の1%を10年間(一定の場合は13年間)所得税額から控除する制度です。

非常に有名な制度なのでご存じの方が多いでしょう。

基本的にこれから購入する物件についての年間の控除上限は40万円(一部50万円)です。

ただし、これは「消費税を納めるべき売主」から購入した物件に限られます。

売主が株式会社であれば基本問題ないのですが、中古物件を個人間で売買するような場合、売主が「消費税を納める義務がない」ということが多いです。

この時の上限は年間20万円(一部30万円)となりますのでご注意ください。

 

また、原則としてその面積が50㎡以上でなければ適用はありませんが、所得金額が1000万円以下であれば、40㎡以上で適用を受けることができるようになりました。

 

なお、ローン控除は購入した時のみではなく、一定のリフォームをするために住宅ローンを借り入れた場合についても適用があります。

適用条件について事前にリフォーム業者などに確認をしてみることをお勧めします。

適用については、1年目のみ確定申告が必須となりますが、2年目以降は年末調整でも適用可能です。

住宅ローン控除のまとめ

・ローン残高等の1%を10年間、所得税額から控除できる

・年間の控除上限は40万円(一部50万円)

・所得金額が1000万円以下であれば、床面積40㎡以上で適用を受けることができる

・一定のリフォームをするための住宅ローン借り入れも控除対象

節税対策3)生命保険料控除

✔ 所得金額から最大で12万円を控除

支払った保険料について、最大で12万円を所得金額から控除できる制度です。

税金からの控除ではなく、所得金額からの控除であるため、控除額に自身の所得税率をかけた金額が節税額となります。

控除額12万円は保険の種類に応じて一般、年金、介護医療それぞれで上限4万円となります(平成23年12月以前の契約は5万円ですが、全体の上限は12万円で変わりません)。

どの種類となるかはそれぞれの控除証明書に記載されています。

保険加入の検討をしている方は適用していない種類の保険があるかどうかも合わせてご確認ください。

生命保険料控除のまとめ

・最大で12万円を所得金額から控除できる

・内訳は、一般、年金、介護医療それぞれで上限4万円

節税対策4)医療費控除

✔ 所得金額から「年間支払医療費-10万円」を控除

年間医療費のうち10万円を超える金額が、最高200万円を限度に所得金額から控除される制度です。

入院保険の給付金、高額療養費や出産一時金など、医療費の補填として受取る金額は支払医療費から差し引きます。

受け取った金額は、その補填対象となった医療費を限度としますので、引ききれない金額を他の医療費から差し引く必要はありません。

年間医療費が10万円に満たない場合は、セルフメディケーション税制の適用をご検討ください。

これはスイッチOTC医薬品などの特定の医薬品の購入額が1万2千円を超える場合は、通常の医療費控除に代えて、その超える部分の金額を所得金額から控除する制度です。

対象となる医薬品は、レシートなどに印がついていますので、集計が可能な場合は適用することができます。

医療費控除は年末調整での適用はできないため、確定申告が必須となります。

医療費控除のまとめ

・年間医療費のうち10万円を超える場合に適用できる

・最高200万円を限度に所得金額から控除

・年間医療費のうち10万円に満たさない場合は、セルフメディケーション制度を活用

・特定の医薬品の購入額が1万2千円を超える場合は、その超える部分の金額を所得金額から控除する

節税対策5)扶養控除

✔ 所得金額から38~63万円を控除

扶養している親族がいる場合は、下図※の要件を満たせば下記のとおりの金額を所得金額から控除することができます。

配偶者は配偶者控除があるため、この扶養控除には含まれません。

「生計を一にしている」というのは、同居をしている必要はなく、別居しているとしても仕送りで生活費の負担をしている場合も含まれます。

そのため、遠方に住んでいる父母などに生活費の送金をしている場合は、扶養控除を適用することができます。

ただし、その場合銀行振込とするなど、その証明を残しておくことをお勧めします。

扶養控除のまとめ

・親族の所得が48万円以下の場合に控除適用できる

・16歳以上~70歳未満の親族の場合、38万円控除される

・配偶者は配偶者控除があるため、この扶養控除には含まれないので注意

節税対策6)ひとり親控除・寡婦控除

✔ 所得金額から35万円(寡婦控除は27万円)を控除

①がひとり親控除の要件となります。

①に該当しない場合で、②の要件に該当すると寡婦控除の適用となります。

該当する場合、所得金額からそれぞれの金額が控除されます。

確定申告をしない方は年末調整で適用を受けることができますが、勤務先に提出する扶養控除申告書への記載が漏れてしまうと控除もれにつながりますのでご注意ください。

ひとり親控除・寡婦控除のまとめ

・自身の所得金額が500万円以下で、子がいる等→35万円控除(ひとり親控除)

・自身の所得金額が500万円以下で、夫と離婚後婚姻していない等→27万円控除(寡婦控除)

・勤務先には必ず扶養控除申告書を提出すること

節税対策7)iDeCo/小規模企業共済等掛金控除

✔ 所得金額から支払掛金全額を控除

iDeCo(イデコ)とは?

iDeCoとは自身で支払った掛金を運用し、積み立てる年金制度のことです。

国民年金や厚生年金とは異なりその加入は任意です。

メリットは、その支払額の全額が所得金額から控除できること、運用益は非課税であることです。

月額掛金の上限は個人事業者の方であれば6.8万円、サラリーマンの方であれば2.3万円です。

年金の受取は毎月受け取る形や一時金として受取る形が選択でき、いずれの方法で受取る場合も控除額があるため、受取時の税負担は低くなることが見込まれます。

デメリットとしては、原則60歳まで掛金を引き出せないこと、運用であるため元本を下回るリスクがあること、運用には手数料がかかることです。

とはいえ、税制上非常に優遇されている制度といえますので、手元資金に余裕があれば是非利用いただくことをお勧めします。

 

小規模企業共済とは

個人事業主の方については、小規模企業共済という別の退職金制度があります。

こちらも掛金の全額(月額上限7万円)が所得金額から控除できるなど、ほぼ同様の内容ですが、加入期間20年以上の場合は支払額以上の給付が見込まれます。

加入期間は長いですが、万が一の場合には、加入したまま掛金累計額の範囲内で借入をすることができる制度があります。

そのため、個人事業主の方であれば、iDeCoよりもまずは小規模企業共済に加入されることをお勧めします。

両制度は併用もできますので、余裕があれば双方に加入する選択もあります。

なお、小規模企業共済は、サラリーマンの方が副業で個人事業主をしている場合は加入することはできません。

その他の加入要件もありますが、あくまでも本業で個人事業主をされている方、会社に所属していても役員である方が加入できる制度となっています。

iDeCo/小規模企業共済等掛金控除のまとめ

【iDeCo】

・iDeCoとは、自身で支払った掛金を運用し、積み立てる年金制度のこと

・メリットは、その支払額の全額が所得金額から控除できる

・デメリットは、原則60歳まで掛金を引き出せない

【小規模企業共済】

・小規模企業共済とは、個人事業主にとっての退職金制度のこと

・加入したまま掛金累計額の範囲内で借入ができる制度がある

・サラリーマンの方が副業で個人事業主をしている場合は加入できない

【後編へ続く】

【総まとめ】個人こそ使いたい節税一覧【対策編】をご紹介してきました。

内容をまとめると以下の通りです。

個人こそ使いたい節税一覧【対策編】まとめ

✔個人事業主は「確定申告」が必要
✔ふるさと納税は、「寄付額-2000円」を控除できる
✔ローン残高等の1%を10年間、所得税額から控除できる(住宅ローン控除)
✔最大で12万円を所得金額から控除(生命保険料控除)
✔最高200万円を限度に所得金額から控除(医療費控除)
✔親族の所得が48万円以下であれば控除対象(扶養控除)
✔ひとり親控除は所得金額から35万円(寡婦控除は27万円)を控除
✔所得金額から支払掛金全額を控除(iDeCo/小規模企業共済等掛金控除)

知っているか知っていないかで、納税額に大きな違いが出ることもあります。

確定申告前の今だからこそ、利用できる節税対策はないか見直してみると良いでしょう。

次回は節税一覧【実践テクニック3選】編をお送りします!

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