家賃収入に消費税はかかる?課税・非課税の違いを徹底解説
税金と言うと所得税の節税を思い浮かべる人は多いでしょう。
それはそれで必要な知識なのですが、忘れてはならないのが消費税です。
アパートやマンションを貸し出すことで得る家賃収入には、消費税がかかる場合とそうでない場合があります。
この違いについて知っておかないと、後々大きな損をすることにもなりかねません。
そうならないためにも、家賃収入における消費税について知識を身に着けておきましょう。
1.消費税は課税売上高1,000万円が基準
まずは消費税の基礎についておさらいです。
税金の世界ではしばしば課税・非課税といった文言が出てきます。
本記事でも頻出度が高いので、ここでおさらいしておきましょう。
課税とは、税金がかかることを意味します。
非課税とは、税金がかからないことです。
さて消費税の課税・非課税の有無ですが、これは課税売上高によって決まります。
課税売上高とは
簡潔に言うと消費税がかかっている売上高のことを言います。
本記事中では、アバウトに年間の売上げだと思ってください。
※実務では企業ごとによって異なる場合もあるので、顧問税理士に確認するようにして下さい
この課税売上高が1,000万円を超えていれば、消費税を納める必要があります(消費税課税事業者となります)。
消費税課税事業者かどうかは、前々年度(2年前)の課税売上高で判断します。
例えば令和元年に課税売上高が1,000万円超えていれば、令和3年度は消費税課税事業者となります。
2.家賃収入の消費税の課税・非課税対象について
家賃収入を得ると、不動産所得税がかかります。では消費税はどうでしょうか。
結論、貸し出す物件の種類によって消費税課税の有無は変わってきます。
1)住宅用物件は非課税
住宅用物件は原則非課税(消費税がかからない)です。
マイホームやアパート、マンションは消費税がかかりません。
家賃以外でも、礼金や敷金、共益費、更新料も非課税対象です。
しかし例外があります。
自分がオーナーで人に居住用として貸し出しているつもりでも、賃貸期間や契約書の内容によっては非居住用物件となる恐れもあります。それによって消費税課税対象になります。
なので、以下2点を必ず確認してから賃貸に出しましょう。
① 居住期間が1か月未満ではないこと
賃貸期間が1か月未満の物件は、消費税がかかってしまいます。
なぜなら賃貸期間1か月未満だと、貸付ける期間として短く、居住用ではないと判断されるためです(年間の課税売上高1,000万円以上の場合は非課税対象になります)。
一般的に居住用であれば2年契約ですが、必ず居住期間について確認するようにしましょう。
② 賃貸借契約書に「居住用」と明記していること
居住用であるか否かの判断は、賃貸期間のほかに契約書で判断します。
賃借人との間でお互いに「居住用」という認識があったとしても、契約書に店舗や事務所と記載されていれば消費税課税対象となる恐れがあります。
なぜなら賃貸借契約書の内容をもとに会計処理をし、決算申告するからです。
賃貸借契約書に「居住用」と明記しているか、意識的に確認するようにしましょう。
2)事業用物件は消費税課税
一方で、事務所や店舗等は消費税がかかります。
土地と建物を同時に貸す場合も消費税がかかるので、注意が必要です。
例外もあります。
・礼金や敷金、保証金など将来返還義務のある金銭は非課税対象
・土地のみ貸し出す場合は非課税
・事業用であっても、家賃収入が1,000万円以下であれば非課税
(ただし、事業用賃貸以外にも別の事業を営んでおり、その事業と事業用賃貸の家賃収入の売上高の合計が1,000万円以上の場合は課税対象となります)
3.副業で家賃収入を得ると消費税は非課税?
本業が会社員で、副業で家賃収入を得ている場合はどうでしょうか?
この場合でも、
・事業用の物件を貸し出している
・不動産賃貸業で課税売上高が1,000万円以上
であれば、消費税を納める必要があります。
4.家賃収入の消費税の支払い方法とタイミング
消費税の申告・納付は「消費税の確定申告」によって行います。
個人事業主であれば、その年の翌年の3月31日までに申告と納付をします。
法人であれば、原則決算日の翌日から2月以内です。
例えば3月決算の法人であれば、3月31日が決算日です。その2か月後である5月31日までに、消費税の申告と納付を行わなければいけません。
ご自身の申告時期について調べたい場合は、国税庁の「申告と納付」を参考にすると良いでしょう。
申告時の注意点などは以下の記事を参考にしてみてください。
>>合わせて読みたい「不動産経営の確定申告!必要経費に該当するものやアパート・マンションの家賃収入を申告する際の注意点」
5.消費税納税が節税できる簡易課税制度とは
誰もが「少しでも消費税の支払いを減らしたい!」と思うものです。
そこで耳よりな情報です。不動産賃貸業だからこそお得な節税対策があります。
それが「簡易課税制度」の利用です。
簡易課税制度とは
個人事業主や中小企業のための制度。
通常の消費税納税方法よりも簡易的な方法で納税する仕組み。
具体的には、業種ごとに定められた「みなし仕入れ率」を利用する。
簡易課税制度の具体的な説明の前に、一般的な消費税の計算方法についてご説明します。
1)一般的な消費税(本則課税)の計算方法
消費税は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。
支払った消費税の方が多い場合は還付を受けます。
これを本則課税と言いますが、計算例でみてみましょう。
【例】売上高(税込み):1,100万円
預かった消費税:100万円
支払った消費税:20万円
納付税額:100万円―20万円=80万円
2)簡易課税を利用した場合の計算例
一方で、簡易課税制度というのは、預かった消費税に対して「みなし仕入れ率」を乗じた額を税務署に納めます(出典:国税庁より)。
不動産業は第6種にあたるので、みなし仕入れ率は40%となります。
例をもとに納税額を出してみましょう。
【例】売上高(税込み):1,100万円
預かった消費税:100万円
みなし仕入れ率:40%
納付税額:100万円―100万円×40%=60万円
本則課税と比較してみると、20万円低い納税で済むことが分かります。
3)簡易課税制度を受けるには
簡易課税制度を受けるには、税務署に対して「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しないといけません。
※引用元:国税庁
簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は、その課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することにより、簡易課税制度を選択することができます。
「課税期間の初日の前日まで」とは、決算月最終日のことを言います。
3月決算の法人であれば、3月31日までです。
個人事業主であれば、12月31日となります。
ただし簡易課税制度を受ける上で注意点があります。
冒頭でもお伝えしたように、これは個人事業主や中小企業のための制度です。
そのため、年間の課税売上高が5,000万円以上の場合は、この制度を利用することはできません。
他にも、条件によっては利用できない場合があるので、国税庁HPや顧問税理士に確認するようにしましょう。
簡易課税制度のまとめ
・消費税の納税方法には「本則課税」と「簡易課税制度」の2つがある
・「簡易課税制度」はみなし仕入れ率で計算する
・不動産貸付業なら「簡易課税制度」の方がオススメ
6.駐車場には消費税がかかる?
前述のとおり、土地の譲渡や貸付は非課税対象です。
駐車場も同様に、更地で砂利の状態などで貸す分には非課税です。
しかし以下の場合には課税対象となってしまいます。
1)整備された駐車場
→アスファルトや砂利をひく、駐車区画を設ける、等
2)次の3つの要件を満たしていない
①1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されている
②入居者が車を保有しているかどうかにかかわらず全戸分の駐車場が入居者に割り当てられている
③住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していない
→これら3つの要件を満たしていないアパートやマンションの駐車場も、課税対象となります。
駐車場の消費税まとめ
・原則非課税
・砂利やアスファルトを引くと課税対象
・住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受した場合などは課税対象
7.まとめ
今回のまとめ
住宅用物件は基本非課税!
✔年間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、非課税
✔住宅用物件の家賃収入は非課税
✔家賃以外でも、礼金や敷金、共益費、更新料も非課税対象
✔土地も非課税(駐車場は3つの要件を満たす必要あり)
納税方法と節税対策
✔消費税の納税タイミング
・個人事業主であればその年の翌年の3月31日まで
・法人であれば原則決算日の翌日から2月以内
✔ 節税対策としては、簡易課税制度がある
純粋にアパートやマンションの貸付事業だけをやっていれば、年間の課税売上高が1,000万円を超えても消費税はかかりません。簡易課税制度を上手に利用することで節税も期待できます。
せっかく「資産形成」しても無駄に納税しては元も子もありません。
資産の防衛についても積極的に学んでいきましょう。