【総まとめ】個人こそ使いたい節税一覧【実践テクニック3選】編

総まとめ【対策編】では、個人こそ使いたい7つの節税対策をご紹介しました。
今回は実践で使えるテクニック3つをご紹介します。
また、不動産投資が節税商品としても有効な理由も伴わせて解説していきます。
1.さらに節税効果を高めるテクニック3選
個人こそ使いたい節税一覧【対策編】では、サラリーマンの方、個人事業主の方共通の制度をご紹介してきました。
ここからは個人事業主の方、サラリーマンの方で副業を行っている方への制度をお伝えします。
1)青色申告
最大65万円の青色申告特別控除
青色申告にはいくつかメリットがありますが、中でも効果が大きいものは最大65万円の青色申告特別控除です。
本業が個人事業主である方の所得である事業所得、不動産貸付業を行う方の不動産所得がある方は青色申告をすることができます。
青色申告特別控除は、青色申告の承認を受けると適用することができます。
65万円の控除を受けるためには電子申告をすることなど、いくつかの要件があります。その要件を満たさない場合は10万円の控除となります。
なお、青色申告とするための申請期限は、原則として青色申告をしようとする年の3月15日です。
2)損益通算
事業所得又は不動産所得で生じた赤字は給与所得から差し引くことができる
損益通算とは
サラリーマンの方が副業で不動産投資を始める場合、投資用の不動産を購入して不動産賃貸業を開始します。
初年度は不動産取得税や登録免許税などのイニシャルコストが生じることになるので、そのコストが賃料収入を上回る場合があります。この時、不動産賃貸業の所得である「不動産所得」自体は赤字となります。
その赤字はご自身の給料の所得である給与所得と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。結果として、給与から天引きされた所得税の一部が還付されることになります。
他の副業との損益通算はできない
損益通算は不動産所得のほか、事業所得の赤字についても適用があります。これを利用して、副業で物販業などを開始し、それを事業所得として損益通算を考える方もいるでしょう。
しかし、事業所得とはあくまでも「本業」のこと。すなわち、その収入をメインとして生活している場合の所得をいいます。
そのため、サラリーマンの方が副業で行う事業は「事業所得」ではなく「雑所得」として判断される可能性が高いです。「雑所得」の赤字は損益通算できません。
何をもって「事業所得」とするか、この判断基準は税法では明確にされていないため、過去の判例などを参考に実態判断していくことになります。サラリーマンの方が税務署に届出を出せば事業所得になるといった記載を目にすることはありますが、全くの誤りです。副業を事業所得とされる際には慎重なご判断をお願いします。
3)法人化
個人と法人の税率の差により負担が小さくなる場合がある
個人と法人との税率の差を検証
給与所得が400万の方が、副業で100万円の給与所得以外の所得を得る場合で比較してみます。
個人の所得税率は所得に応じて段階的に高くなっていきます。給与所得が400万である場合の所得税率は20%です。
税率は段階的に高くなるため、その所得が195万までの部分には5%、330万までの部分には10%、そして400万までの部分に20%の税率がかかり、それぞれの合計額が所得税額372,500円となります。
下図の速算表から、400万の所得の場合は400万×20%-427,500円=372,500円となるため、上記の計算は正しいことがわかります。
また、住民税は一律で10%ですので、追加で100万の所得がある場合には、その部分に対して20%+10%=30%の税額がかかることになります。
※復興所得税は無視し住民税の所得は所得税と同額として計算しています。
対して法人所得とした場合の法人税等の実効税率は、その所得に対しておおよそ23%程度です(所得400万以下の中小企業の場合)。
よって、所得100万円を個人所得とした場合よりも法人所得とした場合の方が、税負担率は低くなることになります。
法人化を検討する場合の所得の目安という観点では、副業を除いた給与所得から基礎控除などの所得控除を差し引いた金額(給与所得のみとした場合の所得金額)が330万以上となる場合は、副業の法人化が有利となる可能性があるといえます。
法人化の目安は所得金額900万越え
ただ、これはあくまでもサラリーマンの方の副業部分の検討になります。
個人事業主の方がその事業の全部を法人化する場合は、所得金額が900万を超えたところから法人化が有利となることが多いです。
さらに法人化に伴い給与を支給する場合は、原則として社会保険料の負担も生じますので、税負担に加えて社会保険料の比較を行うことも重要です。
法人化は設立時や万が一の廃業時にも費用はかかります。専門家を交えて様々な要素を考慮した上で意思決定をするようにしてください。
>>合わせて読みたい「不動産投資で法人化するタイミングはいつ? メリット・デメリットや方法について」
2.不動産投資が個人の節税に良いといわれる理由
1)不動産所得の損益通算
事業を始める場合、当初は赤字が生じる性格のものも多いと思います。不動産事業についても同様で、不動産取得税などのイニシャルコストにより赤字となることがあります。
不動産所得で赤字が生じた場合、所得税の損益通算が可能であることは前述のとおりです。不動産貸付業であれば不動産所得に該当するため、その規模に関わらず損益通算が可能です。これはサラリーマンの方の副業であっても同様です。
不動産貸付業以外の事業での赤字は、その事業が「事業所得」となるか「雑所得」となるかで、損益通算の可否が決まります。「事業所得」はその実態で判断されるため、その理解があいまいなまま赤字を出して還付を受けても、税務署より指摘を受けるリスクが伴います。
このリスクがない分不動産所得は有利であると言えます。
2)税率の低い譲渡所得
不動産投資はその運用時だけではなく、出口である売却も考慮する必要があります。不動産を売却した場合は、その利益に対して譲渡所得税が課されます。譲渡所得は給与所得や不動産所得とは別に税額が計算されるのですが、この際の税率は所得税住民税合わせて20%※と低い税率に設定されています。これは売却益の大きさに関わらず一定となります。
日本の税制の中では株式の売却益に課される税率などと同様に低い税率となっています。
※所有期間5年超の長期譲渡所得の場合。復興所得税は考慮外。
>>合わせて読みたい「長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?不動産投資で活用できる特例制度も」
3)相続対策にも効果的
不動産投資は相続対策のうちの節税対策にも効果があります。
相続税はその財産の評価額に対して課税されます。そのため、その評価額を下げることができればそのまま節税につながります。
財産のうち現金は、その金額が100%課税対象となりますが、その現金で不動産を購入し賃貸した場合、評価額がその半分ほどになることもあります。
ただし、相続税の節税のみを狙って投資効果の低い物件に投資することは本末転倒となりますので、節税ありきで考えないように注意してください。
まとめ
節税テクニック3選のまとめ
・最大65万円の青色申告特別控除
・不動産所得で生じた赤字は給与所得から差し引くことができる
・個人事業主の場合、所得金額900万円超えから法人化が有利となる可能性がある
個人の節税対策は、所得税と相続税についてのもので大きく異なります。
その中で今回は主に所得税の節税についてお伝えしました。
ご自身の状況を今一度確認いただき適用が漏れているものはないか、可能性があるものはないかといったセルフチェックにご活用いただければと思います。