固定資産税評価額とは?調べ方や税金計算への影響を解説
不動産にはさまざまな税金が課されることとなり、新築や売買を行った場合だけでなく、所有し続けることで発生する税金もあります。
それぞれの税制を十分に理解することなく不動産オーナーとなることによって、思いがけず資金繰りが圧迫されるケースも少なくありません。
不動産に関する税金については「固定資産税評価額」に基づいて計算されるため、不動産オーナーは固定資産税評価額に関する正しい知識を身につけましょう。
今回は、固定資産税評価額の概要や調べ方、固定資産税評価額によって計算される税金について解説します。
1.固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、文字どおり固定資産税などの税金を計算する上で基準となる土地や建物の評価額をいいます。
固定資産税評価額は、その不動産が所在する市町村によって個別に決定され、その評価額に基づいて計算された固定資産税が不動産所有者へ課されます。
1)固定資産税評価額の目安
固定資産税評価額は、土地や建物に関する「課税上の評価額」であり、対象となる不動産の時価を表すものではありません。
一般的な固定資産税評価額の目安については下表のとおりです。
種類 | 固定資産税評価額の目安 |
土地 | 公示価格の約70% |
建物 | 再建築価格の約50%~70% |
土地の固定資産税評価額については公示価格の70%程度となるケースが多く、土地が所在する地域や形状、面積などによって決定されます。
なお「公示価格」とは、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が公示しており、毎年1月1日時点における全国約26,000地点の標準地に基づく「正常な価格」をいいます。
また市場価格である「実勢価格」については公示価格の1.1倍程度、相続などの際に使用する「路線価」については公示価格の約80%が目安とされています。
一方で建物の固定資産税評価額については、再建築価格に基づいて算定されます。
「再建築価格」とは、その建物を改めて建て直した場合に発生する建築費用をいい、その費用総額から経年劣化による減価分を差し引いて評価額を決定することとなります。
建物の固定資産税評価額については、その構造や面積、築年数によって変動しますが、再建築価格の50~70%程度となるケースが一般的です。
2)3年ごとに「評価替え」が行われる
固定資産税評価額については、3年に一度のペースで評価替えが実施されます。
公示価格や路線価は毎年見直しが実施されるのに対し、固定資産税評価額の場合は各市町村が個別に調査を行うため、業務負担を加味して3年ごとに見直しが行われるのです。
なお固定資産税評価額の見直しについては市町村の職員ではなく、自治体から委託された不動産鑑定士が行います。
2.固定資産税評価額をもとに計算される税金は?
固定資産税評価額は、固定資産税以外にも不動産に関するいくつかの税額を算定する際に使用されています。
不動産の売買や新築を行う際にそれらの税金について失念していると、思いがけず資金繰りを圧迫する恐れもあるため、固定資産税評価額をもとに計算される以下の税金について正しく理解しましょう。
1)固定資産税
固定資産税とは毎年1月1日時点における土地や建物の所有者に対して課税される地方税であり、「課税標準額×1.4%」で税額が計算されます。
上記算式の課税標準額の基礎となるものが固定資産税評価額であり、建物の場合には原則として「課税標準額=固定資産税評価額」となります。
一方で土地に関しては、住宅用地などの課税標準の特例措置が適用されるケースもあり、課税標準額と固定資産税評価額は必ずしも一致しないためご注意ください。
市区町村によっては独自の税率を設定している場合や、減免制度を設けている場合もあるため、詳細については不動産が所在する自治体へご確認ください。
なお固定資産税に関して自治体独自の条例を定めている場合を除き、同一市町村の区域内で所有する固定資産の固定資産税評価額の合計額が下表の免税点を下回る場合には、固定資産税は課されません。
種類 | 固定資産税評価額 |
土地 | 30万円未満 |
建物 | 20万円未満 |
償却資産 | 150万円未満 |
2)都市計画税
都市計画税とは、毎年1月1日時点で市街化区域内に土地や建物を所有している場合に課される地方税であり、道路や公園、下水道整備などの費用に充てられます。
市街化区域とは、都市計画法で指定される都市計画区域のひとつであり、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」を意味します。
なお市街化区域に関しては、各自治体のホームページや都市計画課で確認することが可能です。
購入する物件が市街化区域内に所在する場合には、都市計画税の負担が毎年発生するためご注意ください。
都市計画税については「課税標準額×0.3%」で計算します。
課税標準額は固定資産税評価額に基づいて決定しますが、固定資産税と同様、土地に関しては課税標準の特例措置によって固定資産税評価額とは一致しない場合があります。
3)不動産取得税
不動産取得税とは、登記の有無や有償・無償にかかわらず、不動産を取得した場合に課される税金です。
売買や新築だけでなく、増改築や交換、贈与によって土地や建物を取得した場合にも課税対象となるためご注意ください。
ただし相続による取得の場合には非課税となります。
不動産取得税は「課税標準額×税率」で計算します。
基本的には「固定資産税評価額=課税標準額」となりますが、令和6年3月31日までに宅地等を取得した場合には、固定資産税評価額の1/2が課税標準額となります。
新築住宅や認定長期優良住宅、中古住宅のうち、床面積要件などを満たす住宅を取得した場合には、固定資産税評価額から一定の金額を控除した額を課税標準額とする軽減制度も設けられています。
税率に関しては標準税率が4%に設定されているものの、取得日が令和6年3月31日までの場合には特例として下表の税率が適用されるため、一定の場合には税負担を軽減することが可能です。
4)登録免許税
登録免許税とは登記などに際して課される税金であり、不動産の所有権登記だけでなく、法人登記などの場合にも発生します。
登録免許税についても他の税金と同様に「課税標準額×税率」で計算され、不動産登記の場合には原則として固定資産税評価額が課税標準額となります。
なお登録免許税は、下表のとおり不動産の種類や取得方法によって税率が異なるためご注意ください。
土地の売買による所有権移転登記については、令和5年3月31日までに登記を受ける場合には1.5%に軽減されます。
そのほかにも住宅用家屋に関する所有権の保存登記や移転登記については、床面積や取得時期などの一定の要件を満たす場合には軽減税率の適用を受けることが可能です。
3.固定資産税評価額の調べ方
不動産に関する税金を理解するためには、それぞれの税額計算の流れを理解するだけでなく、税金の根拠となる固定資産税評価額の確認方法を抑えておく必要があります。
一般的には以下3つのうちいずれかの方法によって確認を行います。
1)固定資産税課税明細書の確認
土地や建物の所有者に対しては、不動産が所在する市町村から毎年4月頃に固定資産税の納税通知書が送付されます。
納税通知書には、納税の際に必要な納付書に加えて「固定資産税課税明細書」が添付されており、税額計算の根拠となった固定資産税評価額について物件ごとに確認することが可能です。
なお固定資産税評価額と課税標準額は必ずしも一致しないため、固定資産税評価額を確認する際には、課税明細書のうち「評価額」や「価格」などの記載がある欄をご参照ください。
2)固定資産評価証明書の取得
固定資産税評価額は、「固定資産評価証明書」によって確認することも可能です。
「固定資産評価証明書」は不動産を管轄する市町村の役所にて取得できる書類であり、窓口や郵送によって請求できます。
申請の際には申請書に加え、マイナンバーカードなどの本人確認書類や、代理申請の場合には委任状が必要となるためご注意ください。
3)固定資産課税台帳の閲覧
上記以外にも、固定資産課税台帳を直接閲覧することも可能です。
固定資産課税台帳は、固定資産税の課税対象となる土地や建物について、その所有者や評価額などを記載した帳簿であり、各市町村に備え付けられています。
納税義務者本人や同居家族、委任を受けた人のみが閲覧あるいは記載内容の証明申請が可能であり、いつでも市町村の担当部署で申請できます。
また固定資産課税台帳には「縦覧制度」が設けられています。
「縦覧制度」は、不動産の所有者が自らの土地や建物の価格が適正かどうか確認するために、他の不動産と比較できるように一定の情報を公開する制度です。
不動産所有者に関する情報は記載されておらず、不動産の所在地や価格などの情報を確認することが可能です。
毎年4月1日から固定資産税の第1期の納期限までの期間しか申請できないため、縦覧制度を利用する場合には上記期間内に手続きを行ってください。
固定資産税評価額を確認し、投資シミュレーションに役立てよう
固定資産税評価額は、不動産に関する税金の基礎となる金額であるため、物件ごとの評価額を確認することで将来発生する税負担を予測できます。
また実勢価格や路線価とは異なるものの、これらの金額とのおおよその差異を知ることによって、売買や相続などのさまざまなケースにおいても活用することが可能です。
まずは対象となる物件の固定資産税評価額を確認し、自らの不動産投資計画の立案に役立てましょう。