キャピタルゲイン狙いの不動産投資はあり!?成功例を踏まえてポイントを解説
不動産投資で得られる利益には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2種類があります。
インカムゲインは月々の家賃収入で得る利益のこと。
一方、キャピタルゲインは売却益のことで、物件の購入時よりも高い値段で売りぬければ大きな利益を得られます。
本記事では、キャピタルゲインを狙うメリット、不動産投資を成功させるポイントについてご説明します。
1.キャピタルゲイン狙いの不動産投資とは
まずは、キャピタルゲインについてご説明します。
1)キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、不動産を売却する際に得られる売却益です。
物件の購入価格よりも高い金額で売却できれば、その差額がキャピタルゲインとなります。
つまり、安く仕入れた物件を高く売ることでキャピタルゲインは生じます。
キャピタルゲインを狙う不動産投資は、景気の回復期や不動産取引が活発となる状況下など、不動産価値が上がるタイミングで大きな収益を期待できる投資法です。
一方、不動産投資における賃料収入を「インカムゲイン」と言います。
キャピタルゲインとインカムゲインの違いについては、以下の記事をご参照ください。
関連記事:不動産投資初心者が失敗しないために知っておくべき基礎知識
2)キャピタルゲイン狙いの不動産投資のメリット
キャピタルゲインを狙う不動産投資には、毎月の家賃収入を基本とするインカムゲインと比較し、大きな収益が見込めるメリットがあります。
また、不動産価格の高騰を見据えたキャピタルゲイン狙いは、物価が上昇するインフレの時期に成功率が上がります。
新型コロナウイルスの流行以前は、消費者物価指数の上昇率がわずか0.2%程度でした。
ここ数年は、世界的なエネルギー価格の高騰や円安で物価が急激に上昇しています。
2022年4月には増税の影響があった期間を除き、約13年半ぶりに消費者物価指数が前年同月の2%以上を記録。
それ以降、伸び率は鈍化しているものの、2024年1月も消費者物価指数は2%以上をキープしています。
不動産価格も年2%ずつ高騰していくと仮定した場合、物件価格ごとの資産価値の推移は以下の通りです。
1年後 | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | |
1,000万円 | 1,020万円 | 約1,104万円 | 約1,104万円 | 約1,349万円 | 約1,486万円 |
2,000万円 | 2,040万円 | 約2,208万円 | 約2,438万円 | 約2,697万円 | 約2,971万円 |
3,000万円 | 3,060万円 | 約3,312万円 | 約3,656万円 | 約4,046万円 | 約4,458万円 |
5,000万円 | 5,100万円 | 約5,520万円 | 約6,095万円 | 約6,743万円 | 約7,430万円 |
1億円 | 1億200万円 | 約1億1,100万円 | 約1億2,200万円 | 約1億3,500万円 | 約1億4,900万円 |
安定的にインフレ率2%を維持したとしても、建物は経年劣化するため、実際に上記の通りになるとは限りません。
しかし、立地によっては地価が上がる可能性も十分に考えられます。
いずれにせよ資産を現金で持つよりも、不動産投資の方が高い利益を得られるかもしれません。
また、首都圏を中心にマンション価格は上昇を続けています。
不動産経済研究所が発表したデータによると、2023年の新築分譲マンション平均価格は前年比15.4%で5,911万円です。
首都圏の新築マンション平均価格は、上昇率が対前年比28.8%で値上がりしていることがわかるでしょう。
新築マンションの価格が上昇すれば、中古マンションの価格も上昇します。
このような不動産市況であれば、過去に購入した物件が購入時よりも高い値段で売れる可能性があり、キャピタルゲインを得やすくなります。
参照元:不動産経済研究「全国 新築分譲マンション市場動向 2023 年」
3)キャピタルゲイン狙いの不動産投資を始めるために知っておきたい税金
不動産の売却益は、譲渡所得という扱いになります。
譲渡所得には分離課税方式が適用され、不動産の売却費から取得費と譲渡費用を差し引いた額に対して、税金が課せられます。
譲渡所得の税率は、不動産を5年超所有して売却した場合に抑えられます。
<譲渡所得の課税率>
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 39.63% | 20.315% |
投資用物件を所有してから、どのくらいで売却するかによって、売却益に課せられる税金が大きく変わってくるのです。
そのため、キャピタルゲインを狙った不動産投資では、売却時点での所有期間を考える必要があるでしょう。
2.キャピタルゲイン狙いの不動産投資で儲けるためのポイント
キャピタルゲインを狙った不動産投資で収益を上げるためには、値上がりが期待できる物件を選ぶこと。
また、売却のタイミングを見極めることが大切です。
1)都心の人気エリアにあるマンション
キャピタルゲインを得るためには、購入時よりも物件価格が上がるマンションを選ばなければなりません。
一般的にマンションなどの建物は、時間の経過で価値が下がります。
しかしながら、都心の一等地などに建つマンションであれば、時間が経過しても一定の人気を保つ可能性も。
キャピタルゲインを狙う場合、都心の人気エリアなど資産価値の落ちにくいマンションを選ぶことが重要です。
2)駅近のマンション
都心の人気エリアであっても、駅から離れたマンションだと、高い賃貸需要があるとは言い難いでしょう。
したがって、キャピタルゲインを狙うのであれば、人気エリアかつ駅近で利便性の高いマンションがおすすめです。
3)物件価格は高くても値上がりが期待できるマンション
都心の人気エリアで駅近のマンションとなると、その価格は高額になるはずです。
しかし、キャピタルゲイン狙いで不動産投資をする場合、高額でも好立地で人気のあるマンションを取得する必要があるでしょう。
なぜなら、物件価格が低い郊外や駅から遠い場所にあるマンションを購入しても、将来的にマンション価格が高くなる可能性は低いからです。
不動産投資は、失敗のリスクがあります。
高額物件を購入するとなると、万が一マンションが値上がりしなかった場合の負担が大きくなります。
そのため、購入時には慎重な判断が必要です。
将来的な資産価値が推察できるよう、投資用不動産がどのように評価されるかを把握しておきましょう。
投資用物件の価値を評価する際に用いられることの多い収益還元法について、詳しく説明した以下の記事をご一読ください。
キャピタルゲインを狙った不動産投資の失敗リスクを抑えることにつながります。
4)購入してから5年以内は売却しない
不動産を売却して収益を得た場合、譲渡所得として扱われ、所得額に応じた所得税と住民税が課税されます。
不動産を取得して5年以内に売却した短期譲渡所得では、39.63%という高額の税率が課せられてしまいます。
そのため、キャピタルゲインを狙う場合、購入から少なくとも5年間は売却せずに賃貸マンションとして運用しましょう。
投資効率を示す指標「CCR(自己資金配当率)」は、物件購入に費やした自己資本に対するリターンの割合が把握できます。
CCR(%)=年間キャッシュフロー ÷自己資金額×100
元を取るまでの年数=1÷CCR
所有期間5年未満だと譲渡所得にかかる税率が高くなりますが、だからといって所有期間が長ければ長いほど良いというわけではありません。
自己資本金の回収期間が長すぎると、経年劣化に伴う修繕リスクが発生する可能性も。
また、築古になれば、資産価値が低下してしまう恐れもあります。
売却益を最大化できるタイミングを見極めることが大切です。
3.キャピタルゲイン狙いの不動産投資の成功例と物件取得価格を抑える方法
不動産価格の上昇局面では、物件購入時よりも高い金額で売却できる可能性があるため、キャピタルゲインは狙いやすくなるでしょう。
しかし、キャピタルゲイン狙いの不動産投資は、インカムゲインをメインとした不動産投資よりも難易度が高くなります。
将来的に物件価値が上がる可能性があるかどうかを見極めるために、さまざまな情報を正確に読み取り、値上がりを予測する専門的な技術が必要だからです。
しかしながら、キャピタルゲイン狙いの不動産投資で成功しているケースはあります。
成功事例をご紹介しましょう。
1)売り時を見送ってキャピタルゲインを得たSさんの事例
【購入した物件】
・東京都のコンパクトマンション
・購入時の価格:2,000万円
・取得年月日:2008年
・利回り:4.2%
・自己資金比率:50%
・金利:2.5%
・返済期間:25年
・年間手取り額:約9.1万円
資産形成の一環として、都内のコンパクトマンションを所有していた会社員のSさん。
赤字ではなかったものの、利益が大きくなかったため、所有期間5年を超えたタイミングで売却を考えます。
査定額は、購入時とほぼ変わらず2,100万円。
しかし、東京オリンピック開催を控え、都内のマンション市況が良くなると予測し、所有を続けることにしました。
これが2014年のことです。
以降、マンション価格は右肩上がりに高騰し、コロナ禍を経て一層、加速しました。
所有期間14年目を迎えた2022年の売却額は、なんと3,000万円に。
1,000万円借り入れた融資残額は半分程度にまで減少しており、諸費用等を差し引いても手元に約2,000万円が残ります。
Sさんはこの資金を元手に、好立地のタワーマンションに買い替え、当時より収入を増やしています。
2)キャピタルゲインを狙える地方都市もある
都内のマンション価格は、かなり高騰しています。
そのため、物件取得にはかなりの費用が必要となります。
自己資金等が十分に用意できない場合や、属性等の問題から高額な融資を受けられない場合もあるでしょう。
それでも不動産投資でキャピタルゲインを狙いたいのであれば、地方都市のマンションがおすすめです。
2023年9月に発表された基準地価の全国平均は「+1.0%」でしたが、地方4都市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の住宅地の上昇率は平均「+7.5%」となっています。
その他、半導体工場の誘致で大きく地価が高騰した北海道千歳市や、熊本県の菊陽町と大津町なども注目です。
値上がりが期待される地方都市のマンションであれば、東京に比べて物件価格が抑えられ、比較的リスクの低い不動産投資ができるでしょう。
まとめ
キャピタルゲイン狙いの不動産投資とは、物件を買った時よりも高い値段で売却して利益を得る投資法です。
家賃収入をメインとするインカムゲイン目的の投資に比べ、成功すれば大きな収益を上げられるメリットがあります。
しかしながら、キャピタルゲイン狙いの不動産投資は難易度が高いのも事実。
経済状況や地価の上昇率に注視して、将来的に資産価値が向上する物件を見極めることが重要です。
また、所有してから5年以内に売却してしまうと、課税額が高額になります。
キャピタル狙いの場合、賃貸として運用し、5年以上はインカムゲインを得ることも想定しておきましょう。