用途地域をまたがるアパート用地は知らないと危ない建ぺい率・容積率・防火地域の話
アパート用の土地を購入する際、土地が2つ以上の用途地域にまたがるケースがあります。そのような場合は、建ぺい率や容積率などの基準が異なるため、どちらの基準に合わせてアパートを建築すべきなのでしょうか。
今回は、アパート用地を取得する前に知っておきたい用途地域の概要や、用途地域や防火地域が複数にまたがる場合の対処法についてご説明します。
アパート用地購入時になぜ、用途地域が重要なのか?
アパート用地を取得する際に、なぜ用途地域を確認しておくことが重要になるのでしょうか。土地を購入する前に用途地域を確認することの重要性についてご説明します。
用途地域とは
用途地域とは、都市計画法における土地の分類です。アパートは積極的に建物が建設できる市街化区域に建てられます。
市街化区域はさらに13の用途地域に分類されています。
用途地域によって異なること
アパートの高さが変わる
用途地域によって建築できる建物の高さや種類が異なります。
例えば、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域の場合は、高さの制限があるため、建築できるのは3階建て程度の低層アパートです。
その他の地域に建設する場合は、建物の高さに制限は生じません。
建ぺい率と容積率の制限が異なる
用途地域によって敷地面積に対する建築面積の割合を示す建ぺい率と敷地面積に対する容積の割合を示す容積率の制限も違ってきます。
斜線制限が異なる
斜線制限とは、近隣の建物等の通風や日当たりを確保するために、道路境界線や隣地境界線からの距離に応じて建物の高さを制限するルールです。
斜線制限も用途地域によって適用される基準が異なります。
用途地域の違いがアパート経営にもたらす影響
用途地域によって、建設できるアパートの高さが変わってきます。
例えば、第1種低層住居専用地域にアパートを建てる場合は、3階建てまでのアパートしか建てられません。
また、用途地域によって建ぺい率や容積率の制限も変わってくるため、建ぺい率と容積率の制限が厳しい地域や斜線制限が厳しい地域では、たとえ広い土地を取得しても、建物を建てられる面積が制限されてしまいます。
したがって、どの用途地域にアパートを建てるかによって、建築できるアパートの階数が変わり、建築面積も変わるわけです。
高い建物を建てられ、建ぺい率と容積率の制限も緩い用途地域であれば、同じ面積でも多くの部屋数を持つアパートを建てられます。
反対に、高さ制限があり、建ぺい率と容積率の制限も厳しい用途地域であれば、同じ面積であっても建築できるアパートの部屋数は少なくなります。
つまり、どの用途地域にアパートを建設するかによって部屋数が変わるため、収支にも大きな影響が出るのです。
用途地域の他に防火地域にも注意が必要
防火地域とは、都市計画法によって市街地における火災の危険を防除するために定める地域として指定されるエリアです。
火災発生時に被害が拡大しやすい建物の密集度が高いエリアや消防車等の緊急車両が通行する幹線道路沿いのエリアなどが防火地域に指定されるケースが多くなっています。
防火地域に該当するエリアの場合、建築資材や構造に厳しい規制があります。
したがって、防火地域にアパートを建築する場合には、利用できる建築資材に規制があり、建築コストが高くなる可能性があることを覚えておきましょう。
用途地域をまたがる土地で抑えておきたい3つのポイント
用途地域によって建築できるアパートの高さや広さなどが異なることをご説明してきました。
では、複数の用途地域にまたがる土地にアパートを建設する場合は、どの基準を適用すればよいのでしょうか。
用途地域がまたがるときは、敷地面積の過半を占める用途地域の建築制限を適用
用途地域が複数にまたがる土地の場合は、原則として敷地面積の半分以上を占める用途地域の建築制限が適用されます。
もし、第2種低層住居地域と第1種中高層住居専用地域にまたがる土地であり、土地の60%が第2種低層住居地域に該当する場合は、第2種低層住居専用地域の建築制限に当てはまるアパートを建築するということです。
用途地域がまたがるときの建ぺい率と容積率の計算式
用途地域がまたがる土地にアパートを建てる場合の建ぺい率と容積率は、案分計算を行って限度を決めます。
次のような敷地があった場合を例に、建ぺい率と容積率を計算してみます。
敷地面積:300㎡(第1種中高層住居専用地域の敷地面積:180㎡、第2種低層住居専用地域の敷地面積120㎡)
第1種中高層住居専用地域の建ぺい率60%、容積率300%
第2種低層住居専用地域の建ぺい率50%、容積率150%
建ぺい率=建築面積/敷地面積×100
建ぺい率は上の計算式で求められます。
上の例の場合、この敷地に建築できる面積は、180㎡×60%+120㎡×50%=168㎡となります。
また、建ぺい率の限度は(180㎡×60%+120㎡×50%)÷300㎡×100=56%です。
容積率=延床面積/敷地面積×100
容積率は上の計算式で求められます。
この場合、この敷地に建築できる建物の容積は、180㎡×300%+120㎡×150%=720㎡となり、容積率の限度は(180㎡×300%+120㎡×150%)÷300㎡×100=240%となります。
防火地域と準防火地域がまたがった場合の建築基準
防火地域と準防火地域がまたがる土地の建築基準は、より厳しい基準である防火地域の建築基準が適用されます。
ただし、準防火地域の敷地に防火壁を設けた場合は、防火壁から先にある部分に関しては準防火地域の建築基準を適用できるようになります。
まとめ:不動産知識を勉強すれば用途地域がまたがる土地は怖くない
用途地域によって建築できるアパートの高さや敷地面積、部屋数などが変わってくるため、運営できるアパートの部屋数も変わってしまいます。
部屋数によって家賃収入の額も変わってくるため、アパート建築のための用地を取得する際には、用途地域と建ぺい率や容積率を確認することが大切です。
複数の用途地域にまたがる土地であっても都市計画法等、不動産に関連する知識を身に付けておけば、建ぺい率や容積率などのルールも理解できるようになります。
また、防火地域の場合は、建築資材や建築構造に厳しい基準が定められているため、建築コストが高くなる可能性があります。
アパート用用地を取得する際には、用途地域や建ぺい率、容積率に加え、防火地域であるかどうかも考慮するようにしましょう。