【抵当権】仮登記が抹消されてから投資すべき!その理由をわかりやすく解説
これから不動産の購入を考えられている、ご両親から相続によって受け継いだ不動産を売却したい、こんな場合、不動産に「仮登記」という記載があれば注意が必要です。
この仮登記の内容を知ることで、安心して不動産の取引を行うことができます。
ここでは、仮登記の内容や種類、抹消の手続きなどを説明していきます。
1.仮登記とは
1)仮登記とは
仮登記とは
その言葉の通り「仮」に登記を行うこと。
手続上の不備のため本登記を行う要件が整っていないときに、将来の本登記の優先順位を確保するための登記のことを言う。
例えば、不動産の売買が行われた際の所有権移転登記時や金融機関からの融資を受けた際の抵当権設定などの本登記を行う場合に仮登記をする。
仮登記をしておくと、それ自体第三者に対して権利を主張することはできませんが、後に仮登記を本登記をした場合には、先に申請された仮登記の順位が本登記の順位となります。
すなわち、万が一、仮登記が行われた後に不動産の所有者が第三者に売却し、所有権の本登記をしたとしても、仮登記しておけばその第三者に権利を主張することができ、仮登記をした者が優先します。
2)仮登記の種類
仮登記といっても、大きく分けて1号仮登記と2号仮登記の2種類があります。
1号仮登記とは
まず、1号仮登記は、所有権等の変動はあるが、書類の不備等がある場合になされる登記です。
条件不備の仮登記と呼ばれることもあります。
つまり、登記すべき権利変動はすでに生じているのですが、登記申請に必要な条件が揃わないときに、あらかじめ順位を確保しておくためになされる仮登記です。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
①登記義務者(不動産の所有者等)が登記申請手続きに協力してくれない場合。
②登記義務者の登記識別情報(登記済証)を提供できない場合。
③第三者の許可、同意、承諾を要する場合で、その許可等を証する書面の提供ができない場合。
2号仮登記とは
次に、2号仮登記は、物件変動はまだ生じてないが、将来において権利変動を生じさせる請求権が発生している場合に、
・これを保全するための請求権保全の仮登記と
・物権変動そのものが始期付又は停止条件付の場合に行う条件付権利の仮登記
の2種類があります。
請求権保全の仮登記は、例えば、売買の予約や抵当権設定の予約がなされた場合で、将来、その予約完結権を行使することで不動産のの所有権や抵当権を取得することができるので、あらかじめ順位を確保しておくために行う仮登記です。
これに対し、条件付権利の仮登記は、たとえば、農地について売買が締結された場合、農地法所定の許可を得ないと所有権移転の効力が発生しないので、この許可を得ることを条件として所有権移転仮登記をする場合が該当します。
3)仮登記の確認方法
不動産に仮登記がなされているかは登記簿を確認すれば調べることができます。
この登記簿は、お近くの法務局で誰でも取得することができ、全部事項証明書と呼ばれています。
登記簿の中身は、「表題部」と「権利部」に分かれます。
このうち仮登記は「権利部」に関わりますので、ここでは「権利部」についてご説明させていただきます。
仮登記がされる権利部とは
権利部には、不動産の所有者の氏名、住所、抵当権や根抵当権の権利などを記載します。
権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。
権利部の甲区欄には、所有者に関する事項が記録されています。
その所有者は誰で、いつ、どのような原因(売買、贈与、相続等)で不動産を取得したかが分かるようになっています。
そして、所有権保存や所有権移転の仮登記がされると、この権利部の甲区欄に記載がされます。
権利部の乙区欄には、抵当権、根抵当権や賃借権など所有権以外の権利に関する事項が記録されています。
例えば、住宅ローンを組んでいて、抵当権が設定されていれば、この乙区欄を見れば、誰が債務者で、どこから、いくら借りているのかが分かります。
そして、抵当権や根抵当権の仮登記がされると、権利部の乙区欄に記載がされます。
2.なぜ仮登記物件は危ない?
よく仮登記がある物件は危ないと言われますが、なぜなのでしょう。
何度か説明しましたが、仮登記にはあらかじめ登記の順位を保全しておく意味合いがあります。
2つのケースをもとに仮登記の危険性について確認してみましょう。
抵当権を設定している場合
たとえば、不動産を購入し、金融機関からも融資を受けて抵当権を設定していたとします。
しかし、購入物件には自分の名義に所有権移転前に第三者名義で仮登記がなされていると、その第三者が仮登記の本登記を行うことで、先になされた登記が優先し、せっかく購入した不動産の所有権を失ってしまうということが起きてしまいます。
つまり、購入した不動産を手放すだけでなく、銀行への借金だけが残ってしまいます。
仮登記名義人に相続が発生した場合
仮登記にも相続が起こります。つまり、仮登記名義人に相続が発生した場合には、その相続人へ仮登記の権利が引き継がれます。
実際に、仮登記を抹消しようとしたところ仮登記名義人に相続が発生したケースがあります。
相続関係を調べたみたところ、相続人が数十人いることが判明。
なかなか協力を得られなかったり、そもそも相続人の中に所在不明の方がいたりして、抹消の手続きに何年も費やし、しかも裁判を起こさなければならない事例でした。
このような事態を防ぐためにも、あらかじめ仮登記を抹消しておく必要があります。
3.仮登記抹消の必要性
このように仮登記がある物件は非常に高いリスクがあります。
そのため、事前に登記内容をよく確認する必要があります。
仮登記は、本登記をすることが出来ない場合に将来の登記の順位をあらかじめ確保しておくために行われます。
その本登記をすべき必要性がなくなった場合には、当然に抹消登記をしなければなりません。
仮登記の中には不動産の売買にあたって事前に抹消できるものもありますので、仮登記があった場合には、詳しくは売主側に確認し、事前に抹消してもらうようにしましょう。
1)仮登記の抹消とは
これまで説明してきました仮登記を消すためには、仮登記の抹消登記を管轄の法務局へ申請する必要があります。
そして、仮登記の抹消登記を行うには、以下の3つのいずれかの方法で手続きを行います。
①共同申請による方法
共同申請登記権利者(不動産の所有者)と登記義務者(仮登記の名義人)が共同で登記を申請します。
②判決による方法
登記義務者(仮登記名義人)が仮登記の抹消手続きに協力しない場合には、仮登記を抹消することによって登記上利益を受ける者は、仮登記を抹消すべき旨の判決を得て、単独で仮登記の抹消を申請することができます。
③仮登記名義人の単独申請による方法
仮登記名義人が単独で仮登記の抹消登記を申請します。
④登記上の利害関係人による単独申請による方法
利害関係人(不動産の所有者や後順位の抵当権者等)が単独で仮登記の抹消登記を申請することもできます。
ただし、この場合、仮登記名義人の承諾書が別途必要となります。
承諾書は、利害関係人の実印で押印と、それに対応する印鑑証明書の添付が必要になります。
2)仮登記抹消を売主に交渉
仮登記を抹消する場合、上記のような手続きを取る必要がありますが、不動産の買主側では行うことができないため、必ず売主側へ仮登記の抹消手続きを依頼しましょう。
売主側にとっても、仮登記があると不動産を売却できないなどトラブルの原因となりますので、その点も説明し、必ず協力をしてもらってください。
まとめ
以上のように、売却したいもしくはこれから購入したい不動産に仮登記が付いていると売却することができなくなってしまったり、仮登記を抹消する際に仮登記名義人に相続が発生したため、多大な労力と費用を費やさなければならなくなってしまったりするケースも考えられます。
そうならないためにも、不動産を購入する際には登記簿の内容をよく確認し、また不動産を売りたい方は、所有している不動産に昔の仮登記が付いていないかよく調べて、取引が円滑に進むよう注意して下さい。