ポンジスキームの見分け方とは?好条件の不動産投資で入金遅延は要注意
ポンジスキームは、投資詐欺の代表的な手法です。
決して新しくはない詐欺の手法ですが、現在もさまざまなシーンにおいてポンジスキームを用いた詐欺が横行しており、不動産投資も例外ではありません。
不動産投資でよく見られるポンジスキームの事例は、好条件を謳ったサブリースでの賃料未納トラブルです。
ポンジスキームの詐欺被害に遭わないためにも、うまい投資話があったときは「それは安全なものなのか」「詐欺の可能性がないのか」を見極めることが重要になります。
そこで今回は、ポンジスキームについて、概要と見分け方、不動産投資における事例についてご説明します。
1.ポンジスキームとは
ポンジスキームとは、どのような手法の詐欺なのでしょうか。
それを見破るためにも、まずポンジスキームの仕組みと特徴を理解しておくことが重要です。
1)ポンジスキームは投資詐欺の1つ
ポンジスキームの名称は、1910年代~1920年代にかけてアメリカで活動したチャールズ・ポンジという詐欺師の名前に由来します。
ポンジスキームとは、投資詐欺の1つで、日本においては出資金詐欺と呼ばれる詐欺の手法です。
ポンジスキームでは、出資金の運用によって高い配当を得られるとして、まずは投資家に話しを持ち掛けます。
投資開始から一定の期間は、高い配当金を投資家に支払いますが、実際に出資金の運用は行われません。
他の投資家から受け取った出資金をあたかも運用益のように偽り、配当金として返還しているというものです。
2)仮想通貨や未公開株などで横行
詐欺師は、多額の出資金が集まったところで資金を持ち逃げします。
詐欺被害に投資家が気づくのは、配当金の支払いが遅れたり、担当者が音信不通になったりする頃でしょう。
現在でも、未公開株や暗号資産、仮想通貨、海外資産など、あらゆる投資商品でポンジスキームが横行。
そして、不動産投資もポンジスキームによる嘘の投資対象として扱われることが多くなっています。
不動産投資の場合、配当をサブリース契約の家賃収入に置き換えて考えてみると想像しやすいのではないでしょうか。
2.ポンジスキームの6つの見分け方
ポンジスキームには、次のような見分け方があります。
1)相場に比べて、高利回りであることが多い
ポンジスキームでは、投資家が食いつくような高利回りを謳っている投資商品がほとんどです。
月利8%、年利30%など相場に比べて高配当を謳うものが多く、短期間で多額のお金を集めて逃げようとする魂胆が見え隠れしています。
2)元本保証を謳って投資を募るケースが多い
元本保証のある金融商品は、銀行に預ける預貯金だけです。
また、国が発行する個人向け国債も元本が保証されます。
法律上、銀行の預貯金や国債以外の商品を、元本保証や元本確保の商品として提供することはできません。
ポンジスキームでは、元本保証がないにもかかわらず、元本保証があるかのような勧誘をするケースが多いのも特徴です。
3)初めは少額の投資から誘う
ポンジスキームでは、初めから高額の出資を募るわけではありません。
「少額から始められるから」と誘い、高利回りの配当金を支払うことでまずは投資家を安心させます。
そして徐々に、高額の出資につなげる手口が多くなっています。
4)紹介システムで手数料が入る
ポンジスキームによる被害拡大の理由の1つに、紹介システムがあります。
友人や知人に投資商品を紹介し、その人が出資をしたら紹介元に手数料が入るという仕組みです。
高利回りかつ健全な投資商品であるという紹介元の思い込みと、高額な紹介手数料が入るメリットから友人らを勧誘。
ポンジスキームでは投資家は被害者である一方で、知らずに詐欺に加担してしまう加害者の立場にもなる可能性があります。
5)海外物件への高額投資を勧める
海外にある物件の場合、物件を確認するにしても渡航費用や日数が掛かり、簡単に現地を訪れることはできません。
そのため、ポンジスキームでは物件を直接確認できない、海外の物件への高額投資を勧めるケースも。
気軽に現地を訪れることができない点を利用し、実際には存在しない物件のパンフレットや動画などを紹介して、言葉巧みに高額な投資を勧めるのです。
6)サブリースで相場より高い家賃収入を謳う
不動産賃貸管理の一手法であるサブリース契約を利用したポンジスキームも存在します。
「相場より高い家賃収入を得られる」と吹聴し、サブリース契約を締結した不動産投資家から資金を集めるケースも。
しかし、相場よりも家賃が高い物件は入居者が付きにくく、家賃収入すら得られない状況に陥る恐れがあります。
サブリース契約については、仕組みや詳細を以下の記事で紹介!
関連記事:サブリース契約の不動産投資は危ない?メリットとトラブル事例をわかりやすく解説
3.悪質業者が飛ぶタイミングとその兆候は?
悪質な業者が投資家から集めた資金を持って逃げる、つまり「飛ぶ」と表現されるタイミングは、ある程度のお金が集まったタイミングです。
資金がまだ十分に集まっていない状態では逃げても十分な儲けが出ず、かといって利益を増やすためにギリギリまで逃げる時期を引き延ばしてしまうと逮捕される可能性が高まります。
そのため、ポンジスキームでは瞬間的にお金を最大限に膨らませ、そのタイミングで飛ぶことが多いのです。
悪質な業者が次のような動きを見せた場合には、飛ぶ前の予兆だと考えられます。
・増資を促すための大規模なキャンペーンを打つ
・出金を制限する
・配当の支払いが遅れる
・連絡の頻度が低くなり、連絡が取りにくくなる
4.不動産投資で用いられるポンジスキームとは?
ポンジスキームは、投資詐欺の一種です。
詐欺師は「高い利益を上げられる投資がある」と持ち掛けて出資金を募り、お金が集まったタイミングで持ち逃げします。
あらゆる投資商品でポンジスキームが横行する可能性があり、不動産投資もその一つです。
日本で起きた不動産投資のポンジスキームについて、実例をご紹介しましょう。
1)「かぼちゃの馬車事件」
2017年に起きたかぼちゃの馬車事件と呼ばれる詐欺は、不動産業界に震撼が走りました。
かぼちゃの馬車事件とは
ある不動産会社が建設・販売・管理をしていた「かぼちゃの馬車」という女性専用のシェアハウスをめぐる詐欺事件です。
かぼちゃの馬車は、都内を中心にサブリース契約という形で不動産投資家に販売。
締結されたサブリース契約は、賃料を30年にわたって保証するもので、利回りが8%という好条件でした。
不動産会社の経営破綻によって賃料収入が途絶える
かぼちゃの馬車は、土地代と建築費用を合わせて1億円以上の価格で販売されていました。
そのため、投資家は不動産会社が提携する金融機関から多額の融資を受け、物件を建設するための用地取得費用と物件建築費を支払っていたのです。
しかし、物件の専有面積は狭く、相場に比べて家賃が高額だったため、入居者を集めることができませんでした。
結果、数年も経たないうちに不動産会社は経営破綻。
多くの投資家は不動産会社から賃料が支払われず、ローン返済が不可能になりました。
高額な物件価格、割高な家賃、高利回りのサブリース契約といった条件を考えれば、かぼちゃの馬車を建築した不動産会社は当初から賃貸管理で利益を得るつもりはなかったと考えられます。
この詐欺事件では、投資家は配当金ともいえる家賃保証を受け取ったものの、用地取得費用と物件建築費が戻ることはありませんでした。
金融機関による不正融資が高額な負債を招く
1億円以上の物件を手に入れるためには、金融機関からの融資が必要になります。
しかし、不動産投資の初心者にこのような高額融資をする金融機関は通常多くありません。
かぼちゃの馬車事件では、不動産投資初心者の投資家がなぜ1億円近くの融資を受けることができたのでしょうか。
その真相は、不動産会社が投資家の資産状況に関する書類を書き換え、実際の資産よりも金融機関に多く見せていたのです。
提携先の金融機関は、その事実を黙認。
頭金もない状態で1億円ほどの融資を実行していました。
不動産会社の破綻後、投資家は高額な負債を背負うことになります。
かぼちゃの馬車事件で取られた救済措置
高額な負債を背負った投資家の中には自己破産する人も。
金融機関では、返済期間を延ばす救済措置を実施しました。
しかし、相場よりも物件購入価格が高額だったことから、残債を処理できる売却益は得られず。
返済期間を延ばしても、完済に苦慮する事態となったのです。
最終的に裁判が行われ、土地と建物を手放せば、投資家の借金を0にするという救済措置が取られました。
不動産投資は自己責任で行うのが原則です。
かぼちゃの馬車事件のような救済措置が取られるのは異例のこと。
今後、ポンジスキームで被害にあったとしても、同様の救済措置が取られるかは分かりません。
2)サブリース賃料未払い問題は2022年にも…。国交省が行政処分
2022年にも、かぼちゃの馬車事件と似たサブリース賃料未納のトラブルが発生。
2023年3月には、対象の会社に対し、国土交通省から業務停止と指示処分が科せられました。
逆ザヤが招いた倒産とその後の音信不通
東京都の不動産投資会社「ReVie社」は、投資用マンションを販売する際にグループ会社である「BLAZE社」とのマスターリース契約を投資家に提案。
サブリース物件として家賃収入を得られるように、投資話を持ち掛けていました。
提案内容は、入居者が支払う賃料と同等、または賃料よりも高い金額でBLAZE社が投資家から物件を借り上げるというものだったのです。
入居者が支払う賃料よりも高い賃料を投資家に支払うには、ReVie社が投資用マンションを販売した利益で埋めるしかありません。
当然、サブリースの赤字をいつまでも補填し続けることはできず、BLAZE社からの賃料の支払いは滞り始め、音信不通の事態に。
さらに、BLAZE社は別のサブリース会社に転貸をしていたことも発覚しています。
国土交通省による行政処分
国土交通省は、2023年3月にBLAZE社に対し、賃貸住宅管理業法に基づく監督処分を発表しました。
違反行為は、重要事項説明書の未交付と契約書に記載すべき内容の未記載の2点で、業務停止処分と指示処分が科せられました。
一般的に3ヶ月以上の賃料の未払いが発生していれば、マスターリース契約を解除することは可能です。
そのため、投資家は物件を売却したり、入居者と直接契約を結んだりといった対応を取っています。
しかし、入居者がBLAZE社に支払っている分の賃料と入居当初に入居者が支払った敷金は未だ回収できない状態です。
ポンジスキームを疑う1つの例として、サブリースであるにもかかわらず相場より高い賃料を保証している場合をご紹介しました。
BLAZE社の場合も典型的なポンジスキームの手口に合致します。
相場より高い賃料を謳う、高利回りの不動産投資の勧誘があった場合には、ポンジスキームを疑った方が賢明でしょう。
次の記事では、不動産投資をめぐる詐欺のよくある手口をご紹介していますので、ぜひこちらもご一読ください。
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まとめ
ポンジスキームとは、高利回りを謳って投資家から出資を募る投資詐欺の1つです。
一定期間は高い利回りの配当金を支払うことで投資家を安心させ、多額の出資を集めたところでお金を持ち逃げするというもので、不動産投資においてもポンジスキームを使った詐欺は横行しています。
高利回りや高い紹介料を支払う紹介制度といった特徴が、ポンジスキームを見極めるうえでの判断材料となります。
また、元本保証を謳えるのは預貯金と国債だけですが、不動産投資で元本保証を謳う場合は間違いなくポンジスキームであるといえるでしょう。
不動産投資を始める際には、今回ご紹介したような点に注意し、安全な商品を見極めるようにしてください。