インスペクションとは?中古住宅市場の活性化のために

中古住宅の売買市場ではインスペクションと呼ばれる住宅診断や建物状況調査が重要になってきています。
そこでインスペクションの内容や重要になってきている理由、さらにメリット・デメリット、実施の際の流れや大切なポイントについてお伝えしていきます。
1.インスペクションとは?
インスペクションは元々英語の「Inspection」で、日本語では「住宅診断」、「建物検査」、「建物状況調査」などと呼ばれています。インスペクションとは、住宅診断の専門家によって、建物の外壁や屋根、マンションの共用部など建物各部の欠陥や劣化があれば報告し、必要な修理についてのアドバイスをすることです。
インスペクションは中古住宅の状態や品質についての不安を取り払う手段として非常に重要です。日本では政府をあげて中古住宅の市場活性化のためにインスペクション普及を重視しています。そのための動きとして国土交通省は2013年に検査業務の技術や検査基準を統一化するためのガイドラインとして、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しました。このガイドラインによって、それまではバラバラだったインスペクションの基準が統一され、診断内容や検査の質において一定の水準に保たれるようになっています。
※出典:国土交通省 既存住宅インスペクション・ガイドラインhttps://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf
インスペクションについて中古住宅の売買に最も大きな影響をもたらしたのは、2018年4月から施行された「改正宅地建物取引業法」です。改正宅地建物取引業法では、中古戸建や中古マンションに限らず、「中古住宅」の売買時においては、不動産業者から売主や買主に対してインスペクションについての説明責任が新たに義務化されることになりました。尚、改正宅地建物取引業法においてインスペクションは「建物状況調査」という名称で呼ばれています。
※出典:国土交通省 改正宅地建物取引業法の施行についてhttps://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf
注意が必要なのは、インスペクションそのものは義務化の対象ではないという点です。義務化されたのは、あくまで媒介契約・重要事項説明・売買契約の3つのタイミングにおいて、以下の内容を不動産業者が売主・買主に対して説明することになります。
- 媒介契約時:インスペクションについての説明を行なうこと
- 重要事項説明時:インスペクション実施済の場合にその調査結果の説明を行なうこと
- 売買契約時:売買対象となる建物の状況について売主・買主双方が書面で確認すること
2.インスペクションのメリット・デメリット
インスペクションは売主側にとって以下のようなメリットやデメリットがあります。
インスペクションのメリット
売却前にインスペクションを通じて建物の瑕疵などを事前に把握できるため、買主に告知すれば後から責任が追及されなくなります。また、インスペクション済であることをアピールすることで、買い手が見つかりやすくなることも期待できます。
尚、個人が売主の場合、瑕疵等が見つかっても瑕疵担保責任を負わない免責特約を契約書に設定することができます。インスペクションすることはこのように買主との売却後のトラブルを減らす効果があるのです。
インスペクションのデメリット
反対にデメリットとしてまず挙げられるのが、費用負担です。インスペクションの費用は物件の種類や広さ、エリア、依頼する業者などによっても異なりますが、「5万~15万円程度」というのが相場になります。
さらにインスペクションで高額な補修費用が必要な瑕疵等が見つかった場合、補修しないと売りにくくなるといったデメリットも考えられます。しかし、売却後に見つかるよりも事前に把握できたほうがトラブル回避のためにはメリットとしてとらえて対処することが大切です。
3.インスペクションの流れや知っておきたいポイント
次にインスペクションを専門業者に依頼する場合の流れや立会いの必要性などについてご紹介します。
インスペクションの流れ
1:問い合わせ
まずは不動産会社の紹介やインターネット検索でインスペクションの専門業者を探します。
2:見積り
電話やネット上から依頼して見積りを取ります。費用について気になる方の場合は複数の業者に相見積もりを取ると良いでしょう。見積もりの内容と料金を比較しながら、依頼する業者を絞り込んでいきます。
3:申込み
依頼業者を絞り込んだら連絡をとって、検査のスケジュールを決めていきます。事前に必要な書類の確認も合わせておこないます。
4:インスペクションの実施
通常は立会いの上で検査してもらいます。
5:報告書の受取り
インスペクションが完了したら報告書を受け取ります。検査内容について疑問がある場合にはこの段階で確認しておきましょう。
6:料金支払い
インスペクションの内容に問題がなく、疑問がある場合にそれを解消したら料金を支払い、全てが完了します。
立会いの必要性について
インスペクションを依頼する場合に立会う必要があるのか疑問に思われる方がいます。インスペクションの実施にあたり、どうしても家主がいないと実施できない場合を除けば、立会わなくても実施することは可能です。しかし、インスペクションがしっかりと実施されているかを当日に立会いのもと確認することはとても重要です。スケジュールの関係でどうしても立会えないという場合、家族に頼んで代わりに現場を見てもらってもいいでしょう。
4.まとめ
今回は中古住宅の売買において重要なインスペクションについてご紹介してきました。今後はインスペクション済の中古物件が当たり前になる時代になるかもしれません。中古住宅の売買ではインスペクションがますます重要になってくるでしょう。