木造住宅の耐震性・断熱性・気密性を上げる方法
住宅会社の広告や住宅展示場で目にすることが多い「高気密・高断熱住宅」や「耐震性の高い住宅」。
耐震性・断熱性・気密性が大切だというのは、なんとなく知っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、耐震性・断熱性・気密性を上げる方法と、数値の目安を解説します。
1.木造注文住宅の耐震性を上げるには?
木造住宅の耐震性を上げるための方法と、耐震性の高い木造住宅の目安「耐震等級3」について解説します。
1)耐震性を上げる必要性とは?
木造住宅の耐震性は、耐震等級1から3で表すことができます。
耐震等級1は、建築基準法で定められた「住む人の命を守る」基準です。
大地震が発生したときに、人が建物から外へ避難する時間は倒壊しないことが目安になっています。
倒壊してしまった家は、もう住めないだけでなく、いったん更地にするには解体費用もかかります。
一方で耐震等級3は、大地震が繰り返し起こっても住み続けることができます。
現段階で耐震等級3は、構造における最高基準です。
住む人の財産と暮らしを守る基準といえます。
2)これから木造住宅を建てるなら耐震等級3
今後も大地震が起こる可能性があることを考えると、大地震後も住み続けられる耐震等級3は、命だけでなく、家と財産、暮らしを守るために必須といえます。
耐震等級については、下記の記事でも解説しています。
【建築士が説く!】戸建ての耐震等級は1で十分?耐震等級3の強さと費用及び必要性を解説
標準仕様で耐震等級3を提供している住宅会社なら、設計・施工経験も豊富で、追加費用もかからないため、より良いといえます。
標準仕様で提供していない住宅会社でも、オプション料金20~30万円程度で耐震等級3認定を取れるなら、良心的といえるでしょう。
2.木造注文住宅の断熱性能を上げるには?
高断熱とは、建物の壁やサッシ等に外気の影響を受けにくい建材を使い、建物内の気温が外の影響を受けづらくした建物仕様のことです。
木造住宅の断熱性能に特に大きく作用するのは、窓(サッシ枠、ガラス)です。断熱性を上げるため、サッシ枠はアルミサッシではなく樹脂サッシまたはアルミ樹脂複合サッシを採用し、ガラスは『Low-E複層ガラス』等の断熱性の高いガラスにしましょう。
建物の断熱性を表す「Ua値」についてもご説明します。
1)サッシはアルミではなく樹脂サッシを採用する
アルミサッシと比べて樹脂の熱伝導率は1000分の1。
断熱性能が高いため、樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシを採用することは断熱性能を上げるために有効です。
注意点は、アルミサッシと比べて樹脂サッシは約1.5~2倍と価格が高いことです。
2)窓ガラスはLow-E複層ガラス等を採用する
「Low-E(ローイー)複層ガラス」とは、2枚の板ガラスにLow-E金属膜と空気層を挟みこんだものです。
Low-E複層ガラスは、ガラス1枚の単板ガラスに比べて約3~4倍の断熱効果があります。
3)断熱性を表す指標と数値について解説
建物の断熱性を表す指標には「Ua値(外皮平均熱貫流率)」と「Q値(熱損失係数)」があります。
1999年に改正された次世代省エネ基準からUa値が登場しましたので、現在はQ値ではなくUa値が使われます。
Ua値(外皮平均熱貫流率)[W/m2K]=総熱損失量[W/K]/外皮面積[m2]
日本は南北に細長く、場所によって気象条件が異なるため、建設地によってUa値の数値が異なります。
下表の地域区分は、国土交通省の地域区分新旧表(令和2年7月時点)で確認できます。
「断熱等性能等級」は、以前は1から4まででしたが、2022年4月1日に、断熱等性能等級5(ZEH基準)と一次エネルギー消費量等級6が新設されました。
また今後、断熱等性能等級6・7(戸建住宅)が創設されます。(2022年10月1日施行)
3.木造注文住宅の気密性能を上げるためにできること
高気密住宅とは、外部と建物との隙間が少なく、気密性が高い住宅のことです。
熱が逃げやすい気密性の低い窓(ジャロジー窓・引き違い窓・上げ下げ窓など)は少なめに、建具サッシは気密性の高いものを選びましょう。
気密性は気密測定試験を行えば、数字で確認できます。
1)高気密住宅のメリットは断熱性・換気効率・防音性
高気密住宅にすると、外の気温変化の影響を受けにくくなります。
寒い日も暑い日も、室内の気温を一定に保つことができるのです。
冬でも、高気密住宅ではトイレや浴室、玄関も温かく、建物内の気温差もありません。
浴室や洗面室も極端に冷え込むことがないため、ヒートショックのリスクが軽減されます。
気密性が高くなることで、家の隙間から外気が入ってくることがなくなり、冷暖房が効きやすくなります。
そのほか、高気密住宅では、建物内でペットが吠えたり赤ちゃんが泣いたりしても「防音性」が高く、外に漏れにくいのもメリットです。
2)気密性を表すC値を気密測定試験で確認
気密性能を表すのは「C値(隙間相当面積)」です。
C値が小さいほど気密性が高く、一般的にC値が1.0以下で高気密住宅といわれます。
C値=隙間面積(cm2)÷延床面積(m2)
施工している建物がきちんと気密性を保てているのかは、気密測定試験で確認できます。
気密測定試験とは、施工中の建物に隙間がないか、専用機械で測定するものです。
気密性能を表す「C値」は、目では見えない家の隙間面積の合計を床面積で割って算出します。
3)気密測定試験のデメリットは費用がかかる
気密測定試験は、工事途中(気密施工後)と住宅完成時に2回行うのが理想です。
気密測定試験を1回のみ行う場合は、工事途中に行われることが多いです。
もし目標のC値に達していない場合、工事途中であれば、隙間を埋めるなどの対応ができるからです。
気密測定試験を標準仕様で行っていない住宅会社の場合は、1回約5万円の追加費用がかかります。
費用はかかりますが、気密測定試験を行うことで数値化でき、建物の気密性を証明できる点で有効です。
住宅性能を上げるには依頼先の見極めも必要
構造、断熱、気密とも、性能の目安が数値化できます。
すべてを高性能にするのが理想ですが、その分だけ工事費用が高くなります。
優先順位をつけながら、バランスの良い着地点を見つけてください。
耐震性の高い住宅、高気密・高断熱住宅を希望されるなら、設計・施工経験が豊富な住宅会社に依頼することが何よりも大切です。