ふるさと納税はやるべき?不動産所得がある場合の上限や注意点

年末が近づいてくるとふるさと納税はやったほうがいいですか?というご質問をいただくことが多くなります。
「やったほうがいいと思います」とお伝えしてはいますが、その内容をきちんと理解されることが重要です。
そこで今回はふるさと納税の是非をご自身で判断できるようになっていただけるよう、内容と注意点などをお伝えしていきます。
1.ふるさと納税とは
2020年度の受入金額は約6,725億円(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」)にのぼり、その認知度も高い制度となってきています。
自身で選んだ自治体に対して寄付をすることで、その寄付金額の一部がその年の所得税及びその年の翌年に支払う住民税から控除されることになります。
言い換えれば、本来納める所得税と住民税の一部を寄付に充てる制度ということになります。
そのため、税金が安くなるという制度ではありません。
しかし、本来の地方創生の趣旨とは異なりますが、もとより支払うべき税金の前払により、返礼品を受取るといった場合には、その返礼品の金額分の得をするといえます。
その意味ではメリットがある制度といえるでしょう。
2.ふるさと納税をする主なメリット
1)税金の控除を受けられる
所得に応じた上限の範囲内であれば、次のとおり税金から控除されることになります。
所得税から控除される金額
①(ふるさと納税額―2,000円)×所得税の税率
住民税から控除される金額
②(ふるさと納税額―2,000円)×10%
③(ふるさと納税額―2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)
上限の範囲内であれば、①から③の合計額が、ふるさと納税額から2,000円を控除した金額となります。
※出典:総務省ホームページ
2)自分の好きな自治体に寄付できる
ふるさと納税の本来の趣旨の部分となります。
通常、所得税は国に納付し、住民税は住民票のある自治体に納付することになります。
それがふるさと納税を使えば、税金に代わって寄付金という形で自分の好きな自治体に支払うことができるのです。
3)返礼品を受取れる
多くの方のメリットとなる部分になります。
ふるさと納税を行うことにより、地域の特産品などの返礼品が受け取れます。
上限内でのふるさと納税をすることができれば、2,000円の負担で自治体からの返礼品を受取ることができます。
3.不動産所得がある場合のふるさと納税の上限
寄付による控除額は上限があり、ご自身の所得によって異なります。
上限内の寄付であれば、寄付額-2000円を控除した金額が税金から控除されます。
上限額については、サラリーマンの方であれば、源泉徴収票を基にふるさと納税のサイトなどで把握できるようになっていますので事前に確認されることをお勧めします。
では、不動産所得がある場合はどうなるでしょうか。
ふるさと納税の上限は所得に応じて変動します。
よって、給与のほかに不動産所得がある方は、その分ふるさと納税の上限額が増加する(赤字であれば減少)ことになります。
4.ふるさと納税上限額のシミュレーション
では、上限額をどう把握すればいいでしょうか。
前述したとおり、サラリーマンの方であればふるさと納税サイトなどである程度把握することができます。
通常、サイトでは給与所得以外の所得がある場合の計算には対応していないかと思います。
そこで、自身で上限の概算額を算出する場合は、下記算式で計算することができます。
計算式
(①+②)×20%/((90%-③×1.021)+2,000 )
①住民税所得割
【(A+B)×10%】
住民税の計算の基礎となる金額です。
概算を算出する場合で給与所得者、かつ、不動産所得がある場合は次のAにBを加算した金額でおおむね近い金額の把握ができるかと思います。
なお、不動産所得が赤字である場合は、その金額をAから控除して計算してください。
A:源泉徴収票
給与所得控除後の金額―所得控除の額の合計額
B:不動産所得の見込額
所得の金額であるため、収入から経費を控除した金額です。なお、青色申告であれば、さらに青色申告特別控除額を控除した金額になります。
②住民税所得割(譲渡所得分)
【譲渡所得×不動産分離譲渡税率】
不動産の譲渡などの譲渡所得がある場合、上限額はさらに増加することになります。
譲渡所得は譲渡収入―取得費―譲渡経費で計算されます。
譲渡税率は、不動産の所有期間に応じて5%(長期譲渡)又は9%(短期譲渡)となります。
譲渡所得がマイナスである場合は②の金額は0円となります。
③所得税率
ご自身の所得に応じた所得税率です。この税率は不動産の譲渡といった分離課税の所得がある場合でも、総合課税の税率を使用します。
課税される所得金額が6,950,000円から8,999,000円である場合には所得税の速算表により23%としてください。
※出典:国税庁HP
計算例
源泉徴収票より計算した上記Aの金額…5,000,000
不動産所得の見込額…2,000,000
不動産の短期譲渡所得…1,500,000
((5,000,000+2,000,000)×10%+1,500,000×9%)×20%/(90%-23%×1.021)+2,000≒253,063円
この例の場合おおよそ253,000円までのふるさと納税が上限となります。
上記Aの金額の5,000,000円のみである給与所得者の方の上限額は、おおよそ145,000円であることがわかります。
5,000,000×10%×20%/(90%-20%×1.021)+2,000≒145,719円
5.不動産所得があれば確定申告は必要?
会社が行う年末調整ではふるさと納税の適用を受けることはできません。
その適用のためには、ご自身で確定申告をする必要があることに注意が必要です。
ただし、寄付先の自治体数が5以下である場合には、申請書を提出することにより確定申告は不要となります(ワンストップ特例制度)。
ここまでは給与収入のみのサラリーマンの方の場合の話になります。
不動産所得がある方で、その金額が20万円を超える場合は所得税の申告義務が生じます。
その場合には、寄付先が5以下であってもワンストップ特例は適用されません。
確定申告を行う必要がある方は、その申告にふるさと納税を含めることを忘れないようにしてください。
医療費控除や初年度の住宅ローン控除など、確定申告をしないと適用できない制度を利用する場合も同様になります。
確定申告では自治体から発行される証明書ごとに納付額を入力いただく必要があります。
ただし、2021年分より国税庁が指定した事業者が運営したサイトでふるさと納税を行うと、その年分のふるさと納税額の合計額が記載された証明書の発行がされることになりました。
詳細は今後把握できるかと思いますが、あくまでもそのサイトごとの合計となるため複数サイトを利用している場合は、それぞれの証明書が必要になるものと思われます。
>>必ず確認したい「不動産投資の確定申告のやり方。節税方法や注意点を解説」
まとめ
実際にふるさと納税が上限の範囲内だったかどうかは、支払年の翌年6月ごろに受け取る住民税の通知により確認することができます。
ふるさと納税による控除額は、次の①+②となります。
①寄付年の所得税の申告書…寄付金控除額×自身の所得税率×102.1%
②住民税の通知書…寄付金控除額(又は税額控除額)
こちらの金額を計算して答え合わせをするようにしてください。