不動産投資ローンを借り換えるタイミングはいつ?メリット・デメリットと手順を解説

不動産投資ローンを利用している方の中には、現在のローンの金利の高さが気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、日本銀行がマイナス金利政策を解除したことにより、今後の金利上昇を懸念している方もいるかもしれません。
不動産投資ローンの金利や金利タイプは、借り換えによって変えることができます。
しかしながら、すべてのケースにおいてローンの借り換えによるメリットを享受できるわけではありません。
では、不動産投資ローンの借り換えによって得をするタイミングはいつになるのでしょうか。
今回は、不動産投資ローンの借り換えで金利を下げられるタイミングや借り換え手続きの手順、借り換えによるデメリットなどについて詳しくご説明します。
1.不動産投資ローンの借り換えとは
不動産投資を始める場合、多くの人は金融機関から融資を受け、不動産投資ローンを利用して物件を取得しているのではないでしょうか。
不動産投資ローンの借り換えとは、現在借り入れている金融機関から金利等の条件が良い別の金融機関に乗り換えることです。
また、固定金利から変動金利、変動金利から固定金利に借り換えることで、返済額の低減や金利上昇リスクの回避が見込めます。
借入額が多額であり、借入期間の長い不動産投資ローンでは、わずかな金利の差であってもトータルで見た場合の差額が大きくなる可能性も。
金利が収益に与える影響は大きく、低金利の金融機関で不動産投資ローンの借り換えができれば月々のキャッシュフローが改善する可能性があるのです。
2.不動産投資ローンの借り換え(メリット)
まずは、不動産投資ローンの借り換えによって生じるメリットを4つご紹介します。
1)低金利の不動産投資ローンへの借り換えでキャッシュフローが改善
不動産投資ローンの借り換えで現行のローンよりも金利が低くなれば、金融機関に支払う利子の総額を減らすことができ、結果として収益を増やせます。
元利均等方式で返済すれば、月々の返済額が少なくなるためキャッシュフローの改善にも繋がるでしょう。
これが不動産投資ローン借り換えの最大のメリットです。
2)大手金融機関への借り換えで不動産投資家の信用力アップ
大手金融機関は金利が低く、地方銀行や小規模の金融機関に比べて良い条件で融資を行っています。
その一方で審査は厳しく、大手金融機関から融資を受けているという事実は不動産投資家としての信用力向上につながります。
信用力がアップすれば、次なる不動産投資の物件を購入する際にローン審査で有利になるのです。
不動産投資で順調な収益を上げている場合や本業で年収がアップした場合などは、大手の金融機関への借り換えを検討してみても良いでしょう。
3)景気や市場金利の状況に合わせた金利方式が選択可能
不動産投資ローンは多くの場合、変動金利または短期間の固定金利です。
当初は変動金利を選んでいたものの、市場金利の上昇が見込まれるようなケースでは、固定金利に借り換えることで金利上昇のリスクに備えられます。
固定金利で借りていたけれど、市場金利が下落している間は変動金利に借り換えることで、利子の支払い額を軽減できます。
不動産投資ローンの借り換えでは、景気や市場金利に合わせた金利方式が選べる点もメリットです。
2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、固定金利は上昇傾向にあり、変動金利についても今後は金利上昇が懸念されます。
4)金融機関と金利交渉できる場合も
不動産投資の運用実績が評価されれば、他の金融機関から不動産投資ローンの借り換えを打診されるケースがあります。
他の金融機関から借り換えの提案を受けた場合は、その金融機関との金利交渉を有利に進められる可能性があります。
また、現在融資を受けている金融機関に対しても金利交渉ができる可能性も。
不動産投資ローンの借入額が大きいほど金融機関としても利益が大きくなるため、今後も別の投資物件の購入のために新たな借り入れを行う可能性がある投資家と取引をしておきたいと考えるものです。
他の金融機関の条件を提示し、現在取引中の金融機関と金利交渉ができれば、不動産投資ローンを借り換えることなく金利を下げられる可能性もあります。
3.不動産投資ローンの借り換え(デメリット)
不動産投資ローンの借り換えにはデメリットもあるため注意が必要です。
1)借り換え時に様々な費用が発生する
借り換えの際は、元の金融機関と新しい金融機関での手続きが必要になります。
その際には様々な費用が発生します。
具体的に必要となる費用は次のようなものです。
- 繰り上げ返済手数料
- 抵当権抹消登記費用(登録免許税、登記報酬料)
- 融資手数料
- 保証料
- 印紙代
- 抵当権設定登記費用(登録免許税、登記報酬料)
繰り上げ返済手数料や融資手数料は融資額や返済期間によって変動しますが、借り換え時の手数料を合計すると決して少なくない額の費用が発生します。
2)借り換えには時間と手間がかかる
不動産投資ローンの借り換えは、金利が低く好条件で借り入れができる新たな金融機関を探し、審査の申請をしなければなりません。
融資の審査には、さまざまな書類の提出が求められます。
審査を通過した場合、元の金融機関での解約手続きが必要です。
また、借り換えることで本当にメリットを得られるのか、シミュレーションを行う必要もあるでしょう。
このように不動産投資ローンの借り換えには、時間と手間がかかります。
そして、新たな金融機関にローン申請をしても、必ずしも審査に通るわけではありません。
3)現在の金融機関とは今後取引ができない可能性がある
現在の金融機関から新たな金融機関に借り換えを行えば、現在の金融機関からの信頼を失ってしまう可能性があります。
金融機関は投資家や企業に融資を行い、その金利を収益としています。
例えば、返済途中で融資を一括返済してしまうと、そのぶん金融機関の収益は減少。
こうした行いにより投資家は、新たな融資を申し込みたい時に現在の金融機関と取引ができなくなる可能性があるのです。
4.不動産投資ローンの借り換えで得するタイミングを見極める方法
不動産投資ローンの借り換えは、金銭的なコストのほかに時間と手間がかかることをご紹介しました。
本当に得をするかどうかを見極めなければ、ローン借り換えがかえってマイナスになってしまうことも。
不動産投資ローンの借り換えで得するかどうかは、次の方法から判断してみると良いでしょう。
1)借り換えのタイミングを逆算する
借り換えによってどのくらい得になるかの計算は「借り換えによって減る返済額」から「借り換えに必要となる諸費用」を差し引くと求められます。
借り換えで得となるおおよその金額は、次の式で計算できます。
借り換えで得する金額={(現在のローン残額×金利の差×残りの借入期間)÷2}-借り換え手数料
2)ローン残債と残りの返済期間から考える
物件購入から時間が経過し、残債が少なかったり返済期間が短かったりする場合は、金利が多少変わっても支払総額に大きな違いは生じません。
むしろ、借り換えに生じる手数料の方が大きな負担になるでしょう。
一般的には、ローンを借り入れてから10年以内、残債が1000万円以上ある場合に、1%以上の金利差があれば借り換えを検討してみると良いと言われています。
3)キャッシュフローのマイナスが続いているときに考える
毎月のローン返済額を高く設定しすぎてしまい、キャッシュフローがマイナスになっている場合、不動産投資ローンの借り換えを検討してみると良いでしょう。
キャッシュフローがマイナスになるということは、収入に対して支出が上回っている状態です。
この場合、キャッシュフロー改善の家賃値上げは現実的ではないため、支出を減らす対策を考えなければなりません。
ローンの借り換えによって金利を低くできたり、融資期間を長くできれば、毎月の返済額は軽減されます。
キャッシュフローが赤字になっている場合も不動産投資ローンの借り換えを検討してみると良いでしょう。
5.不動産投資ローンを借り換えるベストなタイミング
では、具体的な借り換えのベストタイミングはいつなのでしょうか?
1)年収が上がったタイミング
年収が上がったタイミングは、借り換えを検討すべきタイミングの1つです。
年収は、与信に大きく関わる要素になります。
そもそも、金融機関が借りる人によって金利を変えているのは「しっかり返済してくれるかどうか」の信用が人によって異なるからです。
同じ物件、同じ融資額であっても、金融機関は年収が高い人のほうがしっかり返済してくれる可能性が高いと考えます。
年収が上がれば自分への信用が高まるため、今より良い条件で融資を受けられる可能性があるのです。
2)物件購入から10年以内かつ金利差1%以上
条件が良い不動産投資ローンへの借り換えは、早ければ早いほどその恩恵を受けやすくなります。
物件購入から一定の期間が経過すると、残債もそれなりに減り、借り換えで金利を下げても利息負担の軽減効果は大きくありません。
利息負担の軽減効果は、返済期間や借入額、金利などで変わりますが「10年」が1つの目安です。
ただし、物件購入から10年以内でも、借り換え後の金利差が1%に満たない場合、大きな効果は期待できません。
金利差が1%を下回るようであれば、逆に諸費用等の負担で損してしまう恐れがあります。
3)キャッシュフローがマイナスの場合は売却と併せて検討を
キャッシュフローがマイナスになっている場合、積極的に借り換えを検討したほうが良いというのは先述のとおりです。
しかし、ローンの借り換えでキャッシュフローをプラスにできても、その効果が限定的だったり、借り換えの手数料が負担になったりするようであれば、売却を視野に入れるよう検討してみましょう。
とくに、キャッシュフローがマイナスになっている要因が、空室率の高さや度重なる修繕などであれば、ローンを借り換えたとしても大幅な改善は見込めません。
6.不動産投資ローンの借り換え手続きの方法とは
不動産投資ローンの借り換えについて、手続きの流れをご紹介します。
1)ローン借り換えが得になるのかシミュレーションを実施
不動産投資ローンの借り換えには、メリットもあればデメリットもあります。
借り換えによってどの程度のメリットが生じるのか、ご自身の状況に合わせてしっかりとシミュレーションを行いましょう。
2)新たな金融機関に審査の申し込み
不動産投資ローンの借り換え先を決定したら、ローン審査の申し込みをします。
ローン審査では、一般的に次のような書類の提出が必要になります。
<投資家本人に関する書類>
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 本人確認書類
- 所得を証明する書類(源泉徴収票や確定申告書のコピー、給与明細書等)
- 預金通帳、有価証券等、資産を証明する書類
- 職務経歴書
<対象物件に関する書類>
- ローンの返済予定表
- 対象物件の売買契約書
- 重要事項証明書
- 工事請負契約書
- 登記事項証明書
- 公図・実測図
- 事業計画書
- レントロール(賃料表)
ただし、金融機関によって提出を求められる書類は異なります。
必要書類は事前に金融機関に確認しておきましょう。
3)現在の金融機関で解約手続き
新しい金融機関のローン審査に通過したら、現在の金融機関にローン借り換えの申し出を行い、残債の一括返済の手続きをします。
場合によっては、現在の金融機関から金利の引き下げ等の交渉が行われる可能性もあります。
その際は、借り換えによって得られるメリットと、現在の金融機関と取引を続けるメリットを比較して決断しましょう。
4)新たな金融機関からの融資実行と抵当権抹消の手続き
借り換えを決定し、新たな金融機関からの融資が実行されたら、これまで利用していた金融機関に入金を行いローンを完済します。
ローン完済日には、抵当権の抹消手続きを行い、新たな金融機関で改めて抵当権を設定します。
これで一連の借り換え手続きは完了です。
7.不動産投資ローンの借り換えはどこに相談すればいいの?
不動産投資ローンを借り換える前に、次のような点を明確にする必要があります。
- 条件の良いローンへの借り換え可否
- 借り換えによる効果
これらの点は、金融機関に相談すれば解消できるでしょう。
一方、借り換えという選択が適切かどうかの判断に迷っている場合は、管理会社に相談することをおすすめします。
現時点で借り入れている金融機関や借り換え先の候補となる金融機関に相談すると、どうしても自社の利益を優先した助言しか得られないからです。
まとめ
不動産投資ローンの借り換えで金利を下げられれば、支払総額が減額され、月々のキャッシュフローが改善される可能性があります。
しかし、ローンの借り換えには様々な費用が発生するなどのデメリットも。
残債が少ない場合や返済期間が短い場合は、借り換えを行ってもそれほど大きなメリットは生じません。
不動産投資ローンの借り換えを検討する場合は、物件の取得から10年以内など早めのタイミグで検討した方が賢明です。
5年以内に購入し、なおかつ収入が上がった人は、借り換えのチャンスかもしれません。
いずれにせよ、手続きにかかるコストや手間を踏まえながら、ローンの借り換えによってどの程度の得が生じるのかをよく検討するようにしましょう。