不動産投資の融資が厳しい状況|利用すべき理由と銀行が融資したくなる人
不動産投資用の物件を買うには、築年数や立地条件にもよりますが、通常一千万円前後から数千万円以上の資金が必要となります。
しかし、このような多額の資金を自分の財産で賄える方はほとんどおらず、銀行から融資を受けて物件を購入することになりますが、近年、融資を受けるのが大変厳しい状況になっていると言われています。
そこで今回は、不動産投資の融資についてのポイントや、融資を受けやすい人について詳しく見ていきたいと思います。
1.不動産投資の融資で知っておくべきポイント
不動産投資の融資で知っておくべきポイントについて解説していきます。
1)融資審査の基準は借主の属性と物件の採算性
住宅ローンでは、年収や勤続年数など個人の属性を主とした審査が行われますが、不動産投資ローンの融資審査は、個人の属性だけでなく、物件の採算性も重視されるのが特徴です。
不動産投資ローンの場合、返済の多くは家賃収入から捻出することになるため、物件の収益性や採算性が重要となるのです。
さらに、ローンが支払い出来なくなった場合に備え、銀行は対象物件に抵当権を付けて担保にするので、いざという時は物件を売却し、融資した金額を回収するためにも、収益性、採算性の高い物件でなければなりません。
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2)融資額は勤務先の会社が大きく影響する
融資金額は、借主の年収や勤続年数などの属性が上がるごとに増えていきます。
勤務先の規模や属性も影響し、大手企業は勿論、黒字経営が続いている会社、上場企業などは融資金額が高くなるでしょう。
職業で言えば、高収入が予想される医師、安定した勤務先であることが保証されている公務員なども有利です。勤務先は返済能力の高さと直結しており、安定した給与があるということは返済能力があるとみなされるのです。
しかし、たとえ勤務先の属性や職業が良くても、カードローンの借入があったり、ローンの返済滞納があったりすれば融資限度額は下がるので注意しましょう。
3)融資金利は住宅ローンに比べて高め
不動産投資ローンと住宅ローンとでは、不動産の購入目的やローン支払いの資金源が異なります。
住宅ローンは自分で住むための家を購入し、主に給与から支払いますが、不動産投資ローンは収益のための物件を購入し、家賃収入から支払います。
給与は毎月得られるため安定性のあるものですが、家賃収入は、入居者がいなくなると次の入居者が決まるまで全く得られないというリスクがあるので、不動産投資ローンの融資金利は、住宅ローンに比べて高く設定されているのです。
また、不動産投資ローンには、金利の変動が無い固定金利と、金利の見直しのある変動金利とがあるので、どちらを選んだ方がいいのか、それぞれのメリット・デメリットも知っておくことが大切です。
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2.今不動産投資の融資審査が厳しいって本当?
現在、不動産投資の融資審査が厳しくなっているのは事実です。
まず一つ目の理由として、 銀行の不正融資問題、建築会社の偽装建築問題などの影響が挙げられます。
これにより、金融庁は不動産投資の融資に対して厳重な監視を行うようになったのです。
購入金額の全額融資はほとんど下りないので、自己資金での負担分が以前に比べてかなり多くなっています。
二つ目の理由としては、新型コロナウイルスの影響で、銀行側も入店人数の制限や、一日に対応可能な業務の縮小を強いられ、審査や手続きに時間がかかっているという現状が考えられます。
このような様々な影響を考えると、今後不動産投資への融資情勢がどうなっていくかは不透明な状況にあるので、確実に融資を受けるためにも、日頃から各金融機関の動向を情報収集しておくことが大切でしょう。
3.不動産投資で融資を利用すべき理由
不動産投資で融資を利用するべき理由を、メリットと共に説明していきます。
1)いち早く資産を増やすことができる
不動産投資で利益を出して資産を増やす一番の方法は、複数の物件を購入し、規模を拡大していくことです。
まずはみなさん一つの物件の購入から始めると思います。
そして利益が出て十分な資金が溜まったらそのお金で次の物件を購入しようという方も多いですが、それではなかなか資産は増えず次の物件は購入できません。
しかし、融資を受ければ、 購入できる物件の規模が広がり、さまざまな物件に投資ができるようになり、結果としてスピーディーに資産を増やすことが出来るというメリットになります。
2)自己資金が少なくても投資を始められる
不動産投資を始めたいと思っても、十分な自己資金がない、という悩みをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、融資を利用すれば、自己資金が少なくても物件を購入出来るというメリットがあります。
もし、ある程度の資金はあるので自己資金だけで物件を購入したいと思っても、良い物件は高額なので、「無理なく購入できる物件を買う」ということを最優先条件とし、金銭面で妥協してしまうと、利益の出ない物件を購入することになり、「負」動産を背負ってしまう事にもなりかねません。
また、十分な自己資金が出来てから物件を購入したいと思っても、貯めるのには時間がかかり、その間に時期を逃してしまうこともあるでしょう。ですから、ある程度の自己資金にプラスして融資を利用すれば、自己資金以上の多額の資金で、納得のいく良い物件を購入でき、投資の成功に繋がるのです。
3)家賃収入を融資の返済に充てられる
物件を購入し、不動産投資を始めれば家賃収入が得られます。
その家賃収入を融資金の返済に充てられるのは大きなメリットではないでしょうか。
住宅ローンの場合は、給与から返済することになるので懐が痛みますが、家賃収入をローンの返済に充てれば、上手くいけばそれだけで毎月利益を出しながら返済していくことも出来るのです。
しかし、不動産投資に空室リスクは付き物ですから、家賃収入が無くなる可能性は常に頭に入れておきましょう。
4.不動産投資の融資で必要になる書類一覧
金融機関によって一部異なりますが、不動産投資の融資を受けるためには主に以下の書類が必要です。
融資に必要な書類一式
・物件概要書
・レントロール
・売買契約書
・重要事項説明書
・登記簿謄本
・公図
・建築確認済証
・身分証明書
・印鑑登録証明書
・住民票
・所得証明書類
・納税証明書
・資格証明書
・賃貸借契約書
・支払通帳
・ローン返済予定表
5.不動産投資で融資を受ける際の流れ
不動産投資で融資を受ける際の手順を解説します。
1)融資申請の準備
まずは4に記載した書類を集めましょう。
その中でも特に重要なのが、 物件概要書とレントロールです。
銀行は、物件の収益性や採算性をみて融資をするかどうかの判断材料にするため、物件の情報の詳細が記載されいている物件概要書と、賃料をはじめとした賃貸借条件を記載したレントロールは早めに準備しておきたい資料です。
また、当然ですが個人の属性も重要視されるため、自分がどのような人物かを理解してもらえるよう、これまでの経歴や家族構成などを記した自己紹介用の資料も用意しておくと良いでしょう。
そして、様々な銀行や金融機関を調べ、金利が低い所や自分の属性で融資が通りそうな所、相性が良さそうな所など、あらかじめ何店舗かピックアップしておきましょう。
ちなみに、メガバンクは審査が厳しいと言われています。
資料を用意し、銀行をピックアップしたら、不動産投資をはじめる動機や、資産の状況、どのように経営していきたいかなどを含め、銀行側からの質問に全て答えられるようシミュレーションしておくことをお勧めします。
2)融資審査の申し込み
いきなり銀行へ出向くのではなく、予め電話やwebサイトで融資相談の予約をしてアポイントメントを取っておきましょう。
突然行っても、担当者が不在である可能性や、その日に予約が埋まっていて相談できないケースがあるので、無駄足を踏まないためにも予約は必須です。
また、最近は世の中のIT化の流れやコロナウイルスの影響を受けて、対面ではなくオンラインでの融資相談を行っている銀行もあります。
相談の際、用意した書類を持っていきますが、それを元に融資担当者が聞き取りを行い、事前審査をします。
事前審査では、担当者は申込者の返済能力の有無や、物件の収益性などをみて本審査への申し込みが可能であるかを判断します。
金融機関によっても異なりますが、事前審査の結果が出るまでには数日から数週間かかるケースが多いでしょう。
担当者から連絡が来たら、いよいよ本審査です。
本審査の面談後は、金融機関本部で何段階もの手続きを経て審査されます。
3)融資審査の可否の通知
本審査の可否の通知がくるまでに、2週間~1か月程度を要する金融機関が多いようです。
本審査に通り、融資を受けられることが確定した場合、融資の上限額、融資の期間、金利の条件などについての説明があり、契約手続きに入ります。
4)契約後融資の手続き
正式に金銭消費貸借契約、いわゆるローン契約を締結した場合、その際に団体信用生命保険の加入や、抵当権の設定も行われる事が多く、その後、設定した融資実行日に融資金が銀行口座に振り込まれます。
>>合わせて読みたい「不動産投資は生命保険の代わりになる?「団体信用生命保険」とは」
6.不動産投資で銀行が融資したくなる人の特徴
融資審査で有利となる人の特徴について挙げていきます。
1)安定した収入を得ている人
公務員や士業、看護師や薬剤師、サラリーマンなどは、安定した収入があるため、融資が受けやすいです。
不動産投資ローンは毎月、しかも長期間に渡って支払うものなので、安定した収入がある職業の方はリスクが少ないと判断されます。
例えば、芸能人や作家などは、収入は多いかもしれませんが、売れているときとそうでない時との収入の差があるので、そこまで高額でなくとも、月々安定した収入を得ている人の方に強みがあります。
>>合わせて読みたい「公務員も不動産投資は可能!副業規定や注意点を解説」
2)貯金などの保有資産が多い人
地主や資産家などは、不動産も貯金も多く所有しており、金銭的な心配もないので審査に通りやすい属性といえるでしょう。
地主や資産家でなくとも、貯金が多いことは銀行側に高く評価されます。
万一、不動産投資で利益が出ず、返済が滞るような事態となった場合でも、貯金から返済が可能とみなされるからです。
また、貯金が多いということは、無駄遣いをしない堅実な人という印象も与えるでしょう。
3)大きな借入れがない人
住宅ローンなどの大きな借入がある場合、そちらの方も返済しなければならないので、ローンの滞納の可能性があると判断されることがあります。
また、借入出来る金額には、年収を基準とした上限があるため、他で借り入れがあると、希望金額での融資が下りないことも少なくありません。
そして、借金がほとんど無いというのは、返済能力が高いとみなされ、金融機関への心象が良くなります。
4)健康上の問題がない人
健康に問題を抱えている人は、万が一病気で亡くなってしまった場合や働けないほどの障害に陥った時に、ローンの返済が出来なくなってしまうので、銀行側は大きなリスクとして捉えます。
大病をしたことがなく健康な方は、そのような心配もなく、いざというときに保険金をローンの完済に充ててくれる「団体信用保険」にも加入できるため、融資審査で有利となります。
>>合わせて読みたい「不動産投資は生命保険の代わりになる?「団体信用生命保険」とは」
7.まとめ
現在は不動産投資の融資を受けるのが厳しい状況ではありますが、融資の審査基準を理解して物件を選び、属性を上げて融資審査に臨めば、融資を受けられる可能性は十分にあります。
また、金融機関によっても審査基準が異なるため、某銀行で融資審査に通らなかったので別の銀行で審査してもらったら融資を受けられた、というケースも少なくありません。
如何にして審査に通るかは、審査の前の下準備も重要になるでしょう。
融資が受けられれば、自己資金が少なくても不動産投資がはじめられ、さらに物件を増やしていけるなどのメリットがあるので、積極的に融資審査に挑戦してみることをお勧めします。