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中古住宅の新たなトレンド いま「団地」が見直されている理由

執筆者:Redia編集部 Redia編集部
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「団地」という言葉からイメージするものといえば、昔の集合住宅という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そんな団地ですが、近頃「中古住宅」として注目を浴びています。

今回は、新たなトレンドとしての「団地」について触れてみたいと思います。

1.昭和の集合住宅「団地」とは

戦後の高度経済成長期以降、日本全国に多く建てられてきた「団地」ですが、近年は建物の老朽化や住んでいる方々の高齢化や減少といった課題が各地で山積しています

一方、住まいに対する価値観も多様化するいま、昭和の風情が漂う「団地」が改めて見直されています。そして、課題解決への取り組みも始まり、地域活性化の仕組み作りとして注目を集めています。今回は、あえて「団地」を選択する、その理由についてお話しさせていただきます。

現在、私たちがコンクリート造の集合住宅として、まず思い浮かべる建物は「マンション」ではないでしょうか。そんな日本のマンションの前身とも言える建物こそが「団地」と言って過言ではありません。

そもそも「団地」とは、計画的に開発された一団の住宅地や工場地の総称であり、いわゆる集合住宅としての団地以外に、一戸建てが建ち並ぶ住宅地や、工場が集まったエリアも「団地」として呼ばれています。

集合住宅としての「団地」の始まりは、青山や代官山などに建築され歴史的建築物としても有名な集合住宅「同潤会アパート(現在はすべて解体されています)」がその起源と言われています。関東大震災の義捐金をもとに、翌年の1924年(大正13年)に設立された同潤会(どうじゅんかい)によって、都市生活者のために建築され、入居者は一般募集されました。その同潤会の事業を引き継ぐ形で1941年(昭和16年)に設立されたのが住宅営団であり、終戦とともにGHQにより解体させられますが、その事業を参考に1955年(昭和30年)に設立されたのが日本住宅公団になります。

終戦後の昭和30年代、著しい住宅不足を受け設立された日本住宅公団は「公団住宅」という、現在の「団地」の原型となるコンクリート造の集合住宅を開発し、全国に賃貸や分譲住宅として供給を展開します。また同時期に、各地方自治体も「公社住宅」や「公営住宅」という形で集合住宅を運営し始め、現代における「団地」のイメージが確立されていきました。

1981年(昭和56年)に日本住宅公団は解散しますが、事業はいくつかの特殊法人を経て、現在は独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)に継承されています。

また、団地には前述で紹介した「公営住宅」や「公社住宅」など、運営元や入居者対象別に種類が分けられます。

ここで主な内容を簡単に触れておきますと、「公営住宅」は、各都道府県や市町村などの自治体が、低所得者向け賃貸として運営する団地になります「UR賃貸住宅(旧公団住宅)」は、都市再生機構(UR都市機構)が、中堅所得者層向け賃貸として運営する団地になります

「公社住宅」は、各都道府県や市に設立されている地方住宅供給公社が、中堅所得者層向けに積立分譲・賃貸を運営する団地になります。

積立分譲

持家取得の促進を図るために期間を定め、一定の金額に達するまで金銭を受け入れ、期間満了後に受け入れた金銭の一部を充てて住宅を譲渡する制度

そのほかにも、公務員のための宿舎である「官舎」や、会社員のための「社宅」などが賃貸の団地として挙げられます。また、「分譲団地」といった分譲向けのマンションに近いクオリティの団地も一般に多く供給されています。

2.「団地暮らし」の魅力と特徴

高度経済成長期の折、人々の憧れだった「団地暮らし」。当時、同じ部屋で食事・就寝するというスタイルが一般的な時代に、ダイニングキッチンやリビングに居室といった寝食分離のスタイル、内風呂に水洗トイレなど、先進的な生活環境は画期的なものであり、憧れの的でした。また当時、団地に住むには一定の水準を上回る収入条件もあり、その家賃相場も高額だったと言われています。

しかし、時代とともに人々のライフスタイルが変化すると、その人気は衰退していきます。

再び「団地」が脚光を浴び始めたのは、ここ数年であり、リフォーム・リノベーションといった技術やサービスの向上が大きく関係しています。また団地には、ゆったりとした緑豊な敷地空間や敷地内に点在する多くの施設、長く培われてきたコミュニティなど、同じ集合住宅であるマンションには無い魅力が、再評価される理由にもなりました。

ここで、現在における「団地」の魅力をあげてみましょう。

まず一つに、同じエリア・同等の築年数の中古マンションなどに比べ、「価格が安い」「価格が手頃」という点が最大の特徴です。購入価格を抑えて、その分フルリノベーションに費用を充てることができ、自身の理想とする間取りを手に入れることが可能になります

次に、建物自体が広い敷地内にゆったりと建てられていることが多く、都心のマンションのように容積率(敷地面積に対する建物の延べ面積の割合)ギリギリに建てられていないため、近くの建物との距離もあり圧迫感がなく、低層でも採光・通風にも優れている点が挙げられます。広い敷地には、緑や花壇が植えられていたり、空間が豊かな分、空も広く感じられます。

そして、団地敷地内の施設や、周辺環境の施設も充実しているため、生活利便性が高い点も挙げられます。敷地内には公園や広場があったり、児童施設や商店が入っているケースもあります。近隣には保育園や学校、スーパー、病院など生活に必要な施設が徒歩圏内に整備されていることが多く、子育て環境としても魅力的です。また、鉄道やバスなどの交通の便にも優れており、多摩ニュータウンや千葉ニュータウンなど物件によっては、新たに鉄道も整備されています。

そのほかにも、旧公団住宅や国が整備した団地の多くは、将来や未来を見据えて建築されているため、比較的躯体が堅牢にできているケースが多いです。阪神・淡路大震災や東日本大震災の時にも、団地と呼ばれる築年数の経過した低層の鉄筋コンクリート造の建築物は、地震の揺れに対する被害は少なかったようです。

また、一概にはいえませんが、団地暮らしの特徴として不便な点も挙げておきます。

まず一つに、低層の団地の多くにエレベーターが設置されていないことが挙げられます。買い物や引っ越しの時など、搬入には階段を使って運ばなければなりません。

そして、築年数が古いが故に水道管など設備面のトラブルや、音漏れなどがあります。しかし、こちらに関しては補修工事やリフォームにより改善するケースが多いです。

最後に、住民同士のコミュニティについてです。

団地には、自治会の参加やご近所付き合いが多いなど、人との距離が近いことがメリットでもありデメリットでもあります。人とのお付き合いをあまり好まない方にとっては、負担と感じてしまうこともあります。

しかし、住民同士のコミュニティがしっかりしているため、いざと言うときには助け合えるということは最大の魅力と言えます。なぜなら、近年団地が再評価されている理由は「住民同士のコミュニティ」にあるからです。

3.「団地再生」という新しい価値づくりへ

団地には緑溢れるゆったりとした敷地や公園、コミュニティスペースなど住民同士が交流できる多くの施設が設けられています。そして、それらの施設には人と人とが繋がり合う複合的な機能を持ち合わせています。つまり、地域活性のコアエリアとしての役割がいま団地に期待されています。

団地の全盛期から既に数十年が経ち、建物の老朽化や住民の高齢化、空き家問題など様々な課題があります。地域活性の資源となるには、住人の豊かな暮らしと新たな定住者が必要不可欠になります。そこで「団地再生」という新しい価値づくりが始まっています。

例えば、高齢者や若い世代・子育て世代など、多様な世代が住み続けられる団地再生の取り組みとして、子育てや介護・健康面における相談が可能な団地内の医療福祉施設の設置、若い世代に住んでもらうために、内装を人気の家具メーカーや有名雑貨ブランドとコラボした住宅の供給、長く住んでもらうためバリアフリー化等の住環境の整備など、全国の団地で新たな進化を遂げています

また、産官学民連携による様々な団地再生の取り組みも加速しています。地方自治体による官学連携団地活性化推進事業においては、連携している近隣の大学の学生で団地に入居を希望する人は、自治会の加入や地域貢献活動をしてもらうかわりに家賃や通学費の一部をサポートするという取り組みで、住民の間にも新たな空気が流れることで好循環が生まれ、また学生にとっては社会に出る前に触れる大人の学びの場となり、各地で良い事例が生まれています。

このように、団地再生は地域活性の中心部として、「団地力」という新たな価値の創造が試されているのです。

4.コロナ時代の今だからこそ見直したい「団地」

2019年11月に中国の武漢で最初の発生が確認され、翌2020年に入ると世界中に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、私たちの今後の生活のあり方が大きく変わろうとしています。

「withコロナ」「アフターコロナ」として、テレワークやリモートワークといった新たな働き方が注目され、住まいに求めるものとして「職住融合」や「職住一体」といったキーワードが脚光を浴びています。この言葉は、「仕事・居住」が合わさった間取りといった意味合いのもので、実際自宅にワークスペースを設けるためにリフォーム・リノベーションする人が増えていると言われています

そして、コロナ時代のライフスタイル合わせたマイホームとして、「団地」にも目が向けられています。その理由は、一つに価格や賃料が安い分、コロナショックによる景気停滞の際には検討しやすい点にあります。

もう一つに、分譲団地の「団地リノベーション」、賃貸団地の「DIY住宅」といった、コストを抑えたリフォーム・リノベーションが可能な住宅で「職住融合」や「職住一体」の間取りを実現することができる点です。中には2部屋を購入もしくは借り、一つの居住空間にリノベーションし住む方もいます。また、リノベーションした団地を、賃貸として貸し出し家賃収入を得るという方もおられます。

このように団地は、住む人々のライフスタイルだけでなく、その時代のニーズに合わせた「新しい住まいの価値」を生むポテンシャルを持ち合わせています。

そして「昭和の集合住宅」が見直された真の理由はここにあると思います。これからも団地の進化に目が離せません。

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