パワーカップルこそ世帯年収5倍以内に住宅ローンを収める理由&注意点3選を解説
結婚しても仕事を続ける女性が増加している現在、夫婦共働きで高い世帯年収を得ている「パワーカップル」が増加しています。
パワーカップルは、住宅購入の際に夫婦の合算年収を基に住宅ローンを借り入れることができます。
したがって、夫が単独でローンを組むケースに比べ、高額なローンを組むことが可能です。
しかし、高収入を得ているパワーカップルであっても、住宅ローンを組む際には借入額を世帯年収の5倍以内にとどめるべき理由があります。
今回はパワーカップルが住宅ローンを利用する際の注意点についてご紹介します。
1.パワーカップルの年収の定義とは
パワーカップルと聞くと、なんとなく高い年収を誇るカップルをイメージしますが、パワーカップルには年収の定義はあるのでしょうか。
三菱総合研究所では、パワーカップルの定義を共働きで夫の年収が600万円以上、妻の年収が400万円以上の世帯年収1,000万円の夫婦を指すとしています。
一方、ニッセイ基礎研究所では、パワーカップルは夫婦ともに年収700万円以上の収入があり、世帯収入1,400万円以上の夫婦を定義としています。
定義が異なることから、パワーカップルには明確な定義があるわけではないことが分かります。
しかし、厚生労働省が公表している「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、30代の平均世帯年収は614万8,000円、40代の平均世帯年収が694万8,000円です。
このデータから見ると、いずれのパワーカップルの定義であっても平均的な世帯年収よりも高収入であることがわかります。
したがって、パワーカップルとは共働きで、平均以上の世帯収入を得ている夫婦のことを指す言葉だと考えることができます。
※出典:厚労省2019年 国民生活基礎調査の概況
2.パワーカップルの住宅ローンを世帯年収の5倍以内に収める理由
住宅ローンを借りる際、借入れ可能額は年収の7~10倍だと言われています。
そうなると、夫の年収が600万円、妻の年収が400万円の世帯年収1,000万円のパワーカップルの場合は、7,000万円~1億円程度まで借り入れが可能です。
しかし、住宅ローンは長期にわたって返済を続けるものです。
35年ローンで借り入れを行った場合、35年間、夫婦が現在の収入を維持し続けられるかどうかはわかりません。
子供が生まれたり、親の介護が必要になったり、何らかの理由で妻が働き続けられなくなるケースもあります。
そうなったときに、どちらか1人の年収で高額な住宅ローンを完済することはできるのでしょうか。
もし、世帯年収の5倍に借入額を抑えた場合の金額は5,000万円となります。
5,000万円であれば、夫の年収の8倍ほどの額となり、万が一、妻が働けなくなった場合でも返済が可能な額なのです。
3.パワーカップルが住宅ローンを組む際の注意点3選
平均よりも多い世帯年収を誇るパワーカップルが、それぞれの年収を活かして住宅ローンを組む際に注意したいポイントをご紹介します。
1)ペアローン
パワーカップルが住宅ローンを組む際には複数のローンの組み方があり、その中の1つにペアローンがあります。
ペアローンとは、同じ物件に対し、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを組む方法です。
1人で住宅ローンを組む場合に比べて、借入額を増やせるために高額な物件も購入できるようになります。また、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、節税対策としても有効です。
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ペアローンでは夫婦2人の収入で返済を行うことを前提としています。
妻が途中で退職せざるを得ないようなことがあっても、返済はそのまま続けなければなりません。
ペアローンでは、団体信用生命保険も夫婦それぞれで加入します。
そのため、夫に万が一の事態が発生した場合には、夫の分の借入額は保険によって保証されますが、妻側のローンは残る点にも注意が必要です。
2)持ち分
夫婦それぞれの名義で住宅ローンを組む際には、住宅は夫婦共有の名義となります。
そのため、購入した物件の所有権を登録する際には、夫の持ち分と妻の持ち分に分けて登記を行います。
このとき、住宅ローンの借入金額の割合と登記する住宅の持ち分割合に差が生じると、贈与税の課税対象となるケースが出てくるため注意が必要です。
例えば、5,000万円の物件に対し、夫が3,000万円、妻が2,000万円の借り入れを行った場合、物件の持ち分割合は夫が60%、妻が40%となります。
もしも、夫と妻の持ち分割合を50%ずつとしてしまうと、本来はそれぞれが2,500万円ずつ負担すべきところ、妻側が500万円少ない負担となるため、差額の500万円は贈与税の対象となるのです。
住宅ローンを組むときには、夫婦の持ち分割合と費用の負担割合にも注意しましょう。
3)離婚リスク
パワーカップルがそれぞれの年収を活かして住宅ローンを組み、住宅を取得した場合に最大のリスクとなるのが離婚です。
例え離婚したとしても、住宅ローンは返済し続けなければなりません。
購入した住宅にどちらかが住むのか、それとも売却するのかによっても対応は変わってきます。
特に共有名義で購入した住宅の場合には、名義変更や任意売却などを行う必要も出てくるため弁護士など専門家を交えながら、今後の住宅の取り扱いなどについて話し合わなければなりません。
住宅購入時に、将来的な離婚を考えているカップルはいないでしょう。
しかし、3組に1組の夫婦が離婚をしているという昨今、夫婦共有名義での住宅購入は単独名義でローンを組む場合よりも、離婚時には話し合いや様々な手続きの負担が大きくなることを理解しておきましょう。
パワーカップルは世帯年収が多いからこそ、住宅ローンには慎重に
パワーカップルは世帯年収が多いからこそ、単独ローンでは購入できない高額な住宅に居住することも可能になります。
しかし、世帯年収が多いからといって世帯年収の10倍ほどの借り入れを行うと、万が一、どちらかが働けなくなった場合に一方にかかる負担は大きくなります。
パワーカップルこそ、後々のリスクにも備えるためにも住宅ローンは世帯年収の5倍以内に収めておく方が賢明です。
また、ペアローンの利用や持ち分登記の注意点にも十分配慮し、住宅ローンの組み方や借入額について慎重に判断することをおすすめします。