交差点に面した建物の敷地が削られている理由【角地と隅切り】
交差点に面した建物の敷地が削られている部分を「隅切り(すみきり)」といいます。
あるいは「角地の建築制限」と呼ばれることもあります。
例外はあるものの、隅切りは、交通安全上、車や人の通行を見通せる目的で設けるため、建築物だけでなく塀やフェンス、門扉等も建築することができません。
本記事では、隅切りについて、必要な条件や方法について解説します。
1.角地が隅切り(すみきり)は2つに大別される
角地の隅切りは「自治体による条例」によって規定されているケースと「建築基準法」によって規定されているケースに大別されます。
1)自治体による条例
隅切りの目的の1つは、角地の建ぺい率緩和のためです。
自治体によって、角地の建ぺい率10%緩和を活用するために「隅切り」を求められることがあるのです。
隅切り部分は自治体に買い取ってもらったり、自治体に隅切り部分の土地を寄付する代わりに補助金が受けられたりすることもあります。
隅切りを自治体に渡す場合は、固定資産税の免除が受けられることもあるため必ず確認しましょう。
隅切り部分は敷地面積に算入できるのが基本ではありますが、必ず所在地の建築指導課等に確認してください。
2)建築基準法による規定(位置指定道路など)
建築基準法では、位置指定道路や開発行為に対して隅切りの整備が求められます。
このケースは、新築分譲地などでよくみられます。
既存の道路と位置指定道路が接続する部分、指定道路が屈曲する部分には、一辺が2mの二等辺三角形の隅切りが必要です。
前面道路幅員が6m以上ある場合や、角地の角度が120°以上の場合は「見通しが良好」という理由から隅切りは不要です。
2.隅切りの基準
各自治体の条例ごとに、隅切りの規定は異なります。
多くの場合、道路幅員が狭い場合や120°未満の見通しの良くない角地に隅切りを設けますが、自治体によっては規定がないこともありますので必ず役所に確認しましょう。
1)二面の道路幅員が狭い場合
東京都では、二面の道路幅員がどちらも6m未満の場合に、底辺が2mの二等辺三角形の隅切りをしなくてはなりません。
内角が60°未満の敷地にも、底辺が2mの二等辺三角形の隅切りをします。
出典:「神奈川県建築基準条例等の解説」(I-91)|神奈川県県土整備局建築住宅部建築指導課
一方、神奈川県では、二面の道路幅員がそれぞれ4m以上でかつ、道路幅員の合計が10m未満の場合、底辺が2mの二等辺三角形の隅切りをします。
埼玉県狭山市のケースでは、内角が60°以下の場合は、底辺が2mの二等辺三角形の隅切り。
内角が60°を超えて120°未満の場合は、2辺が2mの二等辺三角形の隅切りを設けます。
2)角地の内角が120°以上の場合は隅切り不要
見通し良好という理由から、内角が120°以上ある敷地は隅切りが不要です。
3.隅切りがある場合の「間口」はどうなる?
出典:間口距離の求め方|国税庁
隅切りがある土地の間口は、上記図の「a」あるいは「b」どちらなのでしょうか?
原則的に、間口距離は道路に面した部分の距離ですので、隅切りを省かない「a」が間口となります。
ただし、隣接する私道部分を評価する際は、隅切りを除いた「b」が間口距離です。
間口距離は土地の評価に影響するものですので、購入時には間口距離の扱いについて必ず確認するようにしましょう。
4.隅切りに関するトラブル事例と対策
隅切りは、自治体によって規定が異なり、煩雑になりがちな制限です。
そのため、次のようなトラブルが発生してしまう可能性があります。
1)売買時の隅切りの扱いは異なる
隅切りした土地を売買する時は「分筆部分」について確認してください。
分筆登記されていて、隅切り部分が自治体の所有名義であれば売買対象には含まれません。
しかし、隅切りがまだされておらず「隅切り予定」である場合は、売買対象の場合もあります。
売買時は測量図、売買価格、重要事項説明をよく確認しましょう。
2)建物の形状や間取りに制限が生じる
隅切り部分には、基本的に建築物も工作物(塀やフェンスなど)も建てられません。
角地の土地を購入する場合は、思い描いていた建物形状や間取りが叶わないこともあるので、事前に知っておいた方が良いでしょう。
なお、東京都安全条例では、道路状面から高さ4.5メートルをこえる部分については、隅切り部の建築制限はありません。
3)既存不適格物件になってしまう
隅切りのある土地で、容積率や建ぺい率の上限いっぱいで設計している場合には既存不適格物件になってしまう恐れがあります。
というのも、後から自治体に隅切りの部分を買い取ってもらった場合には、容積率・建ぺい率ともに下がるからです。
建築当時は大丈夫でも、上限ぎりぎりの設計をしている場合は、隅切りの買い取りや寄付によって既存不適格物件になってしまうこともあります。
既存不適格建築物になると、増築や改築ができず、土地活用も難しくなりますので注意が必要です。
購入時、建築時には、自治体の条例をよく確認しましょう。
まとめ:角地の取り扱いについては役所に確認しましょう
隅切りの規定は自治体によって異なりますので、購入時、建築時には必ず調査しましょう。
土地購入の場合は、不動産契約の「重要事項説明書」で説明があります。
ご自身で確認したい場合は、役所の建築指導課等へ問い合わせると良いでしょう。