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「100年コンクリート」や「100年マンション」について

執筆者:棚田 健大郎 棚田 健大郎

築古マンションの老朽化が社会問題となりつつありますが、そんな中「100年コンクリート」や「100年マンション」が注目を集めはじめています。

そこで今回は、専門家の視点からコンクリートの将来性について解説していきたいと思います。

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1.100年コンクリートとは

そもそも100年コンクリートとは、「大規模な修繕をしなくてもおよそ100年は持つと予想される高強度コンクリート」のことをいいます。

一般的なコンクリート造の建築物の設計基準強度が24N/㎟なのに対し、100年コンクリートは30 N/㎟と定められており、非常に強い負荷にも耐えられるのです。

設計基準強度

30N/㎟とは、1㎠の面積で約300kgの重さに耐えられる強度のこと

コンクリートの耐用年数と歴史

鉄筋コンクリート造物件の法定耐用年数は47年ですが、実際の寿命はというと必ずしもそうではありません。日本国内のマンションの多くは、37年前後で寿命がきて建て替えになるものが多いのです。

なぜこのような違いがあるのか、その答えを紐解く鍵はコンクリートの歴史を振り返ることでわかります。

建物の建築材としてコンクリートが普及したのが、昭和33年から昭和48年の高度成長期で、生コンの出荷量も急激に増加しました。

ただ、このころはまだ耐震基準も現在に比べると甘い上に、コンクリートに関する技術や知識が乏しかったことなどから、かなり水で薄めた強度の悪いコンクリートを使用するケースも多かったようです。

つまり、昨今建て替えなどで叫ばれているマンションの中には、このような質の悪いコンクリートを用いて建てられたマンションが数多く含まれている可能性が高いのです

2.コンクリートの技術革新

一般的によいコンクリートとは、次の要件を満たすコンクリートのことをいいます。

  • 必要な強度がある
  • 収縮率が小さい
  • 水密性が高い
  • 耐久性が高い
  • 耐用年数が長い

対して、建築現場で用いられている生コンのうち、よい生コンとは具体的に「単位水量ができるだけ少なく、施工性がよいもの」のことをいいます。

従来までのコンクリートは、水セメント比が50~60%と非常に高く、なめらかで施工のしやすさを重視するあまり、よいコンクリートの条件を完全に満たすことができませんでした。

ところが最近では、水セメント量50%以下というコンクリートを用いてマンションを建てることで100年も持つようになってきたということなのです。

プレキャスト工法などの技術革新

これまでコンクリート造のマンションを建てる場合、コンクリートは現場打ちが主流でした。ただ、現場打ちの場合は繊細な調整が難しいほか、天候にも左右されるため、どうしてもコンクリートの質や強度は落ちてしまいます。

対してプレキャスト工法は、コンクリートの壁面などのPC板を予め工場で生産した上で、現場では組み立てのみを行います。

水セメント率の低くて流れにくいコンクリートでも、細かな振動を加えながら鉄筋の型に均等に流し込むなどの技術を使うことで、天候に左右されず良質なコンクリートを製造できるのです。

これにより、高品質で耐久性、耐震性の高いコンクリートマンションの施工が可能になりました。

3.100年マンションとは

100年マンションとは、文字通り100年間住み続けられることをコンセプトにしたマンションのことで、100年コンクリートなどによって強靭な強度を誇るマンションのことをいいます。

ただし、100年コンクリートとは違い単なる強度を追い求めるだけでなく、給排水設備や間取りなどを随時、かつ任意に「更新」して快適に住み続けられることもコンセプト1つです

4.100年コンクリートが不動産市場を大きく変える?

高度成長期にできたマンションについては、どうしても質が悪いものが多いため、建て替えもやむなしといったところですが、今後100年コンクリートを用いて100年マンションが建てられるようになれば、現在の不動産市場が大きく変わる可能性があります。

というのも、欧米では木造住宅でも100年以上使われていることが一般的で、市場においても新築と遜色ない価格で取引されることもあるくらいです。過去に国土交通大臣の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」の報告書でも同じことが書かれていました。

※出典:国土交通省 「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書とりまとめ後の取組紹介 11ページhttps://www.mlit.go.jp/common/001014514.pdf

つまり、築年数を「古い」とネガティブなイメージで捉えるのではなく、「実績」というポジティブな視点で捉えているのです。

今後日本で100年コンクリートが主流になってこれば、欧米と同じように資産価値が上昇して中古物件が高く評価されるようになる日も近いかもしれません。

5.まとめ

100年コンクリートと聞くと半信半疑の部分もあるかもしれませんが、現在の技術を持ってすれば十分実現できます。ただし、人が快適に100年住み続けるためには、強度のことだけでなく、他の設備の更新なども容易にできる設計でなければなりません。

また、不動産投資の視点で見た場合は、それらの更新にどの程度の費用がいつ頃かかるのか、事前に試算した上でキャッシュフロー計画を立てておく必要があるでしょう。

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