不動産投資は「出口戦略」で決まる!物件別の儲かるパターンを紹介

不動産投資における「出口戦略」とは、運用後の物件をどう処分するかを指し、売却の他に自身で住む、相続税対策として利用するという手段も存在します。
ただし投資用として利益の出る物件と居住用で住み心地の良い物件は条件が異なる事も多いため、売却を選ぶオーナーが数多いのが現状です。
物件の売却価格は主にエリアや築年数などによって決まりますので、物件選びの時点で既に「出口戦略が始まっている」と言えるでしょう。
高い売却益を得て、不動産投資を成功させるためには何を意識して物件を選べば良いのでしょうか?
今回の記事では、不動産投資を成功に導く出口戦略とは何か、「成功」の定義、売却価格が高くなる投資用不動産を選ぶためのポイントをお伝えしていきます。
1.不動産投資の出口戦略とは?物件別の選択肢を解説
出口戦略とは元々軍事用語で、いかに「損失を少なくおさえて撤退するか」の作戦を指す用語で、経営・投資の分野でも使用されています。
不動産投資では「物件を運用した後にどう処理するか」が出口戦略となります。
出口戦略は物件別で異なり、主に以下の選択肢があります。
区分マンション |
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マンション・アパート一棟 |
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戸建て |
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区分マンション・一棟・戸建て物件に共通する出口戦略としては「売却」「自身で住む」「相続税対策に活用する」という3つがあり、一棟・戸建ての場合は土地も所有しているケースが多い事から「現状のまま売却」「更地にして土地活用」「更地にして売却」という選択肢が加わります。
ただし更地にするためには建物の解体費用がかかります。さらに土地やマンション・アパート一棟は区分マンションより市場の流通量が少なく売却に時間がかかる、思ったより売却価格が高くならないというケースがあります。
新築の物件を所有するオーナーの中には自身で住む、相続税対策として利用する方も存在しますが、一般的には「運用して収益を出した後に売却」を選ぶ投資家が多くなっています。
2.不動産投資の「成功」とは?~インカムゲインとキャピタルゲイン~
不動産投資の収入は家賃収入だけと思われがちですが、最終的な収益としては「(家賃収入-経費)+売却で得た利益」となります。
家賃収入のような資産(不動産)を保有していることで得る利益を「インカムゲイン」と呼び、株式投資の場合は配当金が該当します。一方で資産(不動産)を売却して得られる利益を「キャピタルゲイン」と言います。
不動産投資では物件の売却益、株式投資では株式が値上がりした場合の譲渡益となります。
出口戦略を立てる際には、インカムゲインとキャピタルゲインを試算し以下の式に当てはめてみましょう。
投資用ローン残債<(家賃収入-経費)+売却益
投資用ローンの残債を総収益が上回ったら、「事業として成功だった」と言えるでしょう。
プロの不動産投資家が重要視する物件の判断要素とは?
国土交通省が2019年に不動産会社や金融機関などプロの不動産投資家を対象に行ったアンケート調査によると、不動産投資の判断要素重視度は以下の通りになっています。
1位は「キャッシュフローの見通し」(インカムゲイン)となり「大いに重視した」と答えた投資家は74.3%に上りました。続いて周辺地域の不動産価格情報や動向を重視する投資家が多い傾向にあります。
キャピタルゲインも「大いに重視した」「おおむね重視した」いう回答を合わせると74%となり、インカムゲインとキャピタルゲイン、周辺地域の価格や動向は不動産投資の判断において重要となることが分かります。
プロの不動産投資家は個人投資家のように自身で住む、相続税対策といった選択肢はなく「売却」が主な出口戦略となります。
そのため常に「売却益が出ること」を念頭において物件を判断するため、上記のような結果になったと推測されます。
不動産の売却価格は家賃収入(インカムゲイン)に加え、周辺の不動産価格や市場の動向が重要な要素となります。
ただし、新築は中古よりもキャピタルゲインを狙いにくいと言わざるを得ません。
その理由は、新築ならではの価格設定方法にあります。
新築物件は、施工や開発に携わった会社の利益やいわゆる「新築プレミア」が相場価格に上乗せされて販売されます。
その分、中古になった場合の下落率が高く、売却時に利益を出すことが難しいのです。
3.物件種別ごとの儲かるパターン
不動産投資で売却価格が高くなる物件は、【1】インカムゲインが多く収益性が高い、【2】資産としての価値が高いという2点が挙げられます。
インカムゲインは賃貸経営において重要であり、収益性の高い物件は売却価格も高くなる傾向があります。周辺の不動産価格が高い物件は資産としての価値も高くなりますので、売却益を見込む事が出来ます。
具体的に売却価格が高くなる投資用不動産の条件を見ていきましょう。
収益性が高い物件
物件の需要が高く満室経営である物件は収益性が高いと判断され、売却の際に有利となります。
物件を購入する際には利回りだけではなく、空室率をチェックしておきましょう。駅から近い、主要駅への乗り換えが少ないなど利便性の高い物件は需要が高く、家賃の下落率が低い傾向にあります。
エリアの需要やターゲット層も確認しておくことが重要です。一般的に需要が高く高収入の住人が多いエリアは、インカムゲインを多く見込めると言われています。
現在の日本は地方では人口が減少傾向にありますが、東京都心部では人口が増え続けています。2025年にピークを迎えますが、地方より減少がなだらかであり賃貸需要は減りにくいと予測されます。
※出典:総務省「平成 27 年国勢調査」https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/plan/pdf/honbun4_1.pdf
特に区部は企業の本社などが集中していることもあり、人口減少が進みにくいことが分かります。物件を選ぶ際には都心、特に東京23区内を選んでおくことで、高い需要を見込む事が出来ます。
資産価値の高い物件
都心の物件は、資産としての価値が高い傾向にあります。
都心や高級住宅街の物件も利便性が高く、ブランド力がある事から資産としての価値が高いと判断されます。
建物の構造がRC造・鉄骨鉄筋コンクリート造である、耐震基準を満たしているなどの要素も売却価格に影響を及ぼします。
周辺地域の価格を調べる際には、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で周辺の地域の似た条件の物件の価格を参考にしてみましょう。
※土地総合情報システムhttps://www.land.mlit.go.jp/webland/
加えてエリアの災害リスクも価格に影響がありますので、ハザードマップで事前にチェックしておくことをおすすめします。
※ハザードマップポータルサイトhttps://disaportal.gsi.go.jp/
キャピタルゲインが出やすい物件の特徴
各物件種別のうち、キャピタルゲインが出やすい特徴は次のとおりです。
区分マンション
- 中古物件
- 駅近
- ビッグコミュニティ
- 管理状態が良い
資産価値が維持されやすい区分マンションの特徴は、上記のとおり。
まず、先のとおり新築住宅は売却益が出しにくい物件のため、キャピタルゲインを狙うなら中古住宅を選択するべきでしょう。
また、中古マンションの価値は「立地」でほぼ決まるといっても過言ではありません。
駅近であり、できることなら急行停車駅かつ都市部に近い駅だと、より資産価値が維持されやすいと考えられます。
マンションの規模は、大きいほど価値が下がりにくい傾向にあります。
そもそも、戸数が多いマンションは分譲時から需要が高いからこそ戸数が多いのであり、管理費や修繕積立金を負担する世帯が多いため維持・管理にかかる費用も抑えられやすいといった特徴があるからです。
そして、これからの時代、重視すべきなのが管理状態の良さ。
近年、マンション管理適正化法の改正やマンション管理計画認定度制度の創設により、マンションの管理が資産価値に直結しやすくなっています。
いくら好条件のマンションであったとしても、修繕積立金が不足していたり、修繕計画が立てられていなかったりすれば、将来的に価値が落ちるおそれがあります。
マンション・アパート一棟
- 中古物件
- 立地が良い
- 空室率が低い
- 取得時の価格が安い
- 築浅のうちに購入
マンション・アパート一棟も、中古物件のほうがキャピタルゲインは狙いやすい点は他の物件種別と同じです。
加えて、立地が大切なことも中古マンションと同様ですが、必ずしも駅近・急行停車駅・都市部に近いという条件を兼ね揃えていない一棟ものであっても、キャピタルゲインは狙えます。
とはいえ、将来、人口が大きく減少するような地域では、売却益を出すことは難しいでしょう。
特に高齢化や人口減少が進む昨今では、これまで人が多く集まっていたエリアでさえ、将来の地価は保証されていません。
都市部でないとすれば、人口動態も着目して物件選びすることをおすすめします。再開発や新駅開業などの有無を見ることも、将来性があるかどうかの判断に役立ちます。
戸建
- 中古物件
- 立地が良い
- 整形地
- 地価が上昇傾向にある
- 住宅性能が高い
戸建は、投資期間によってキャピタルゲインが出やすい物件の特徴は異なります。それは、建物は一定の期間が経つと価値がほとんどなくなってしまうからです。
そのため、一定期間、投資した後に出口を設定するとするならば、重点的に見るべきは土地の資産価値です。戸建が建つエリアは、必ずしも駅近ではありません。
また、戸建に住むのはファミリー世帯が中心です。
そのため、生活利便施設が豊富にあるか、人気の学区内にあるか、将来的に人口が増加する地域であるか……この辺りがポイントとなります。
また、土地の形は正方形に近いほど価値が高く、落ちにくいものです。
その分、取得費も割高になりますが、将来的な価値の維持を考えれば、取得費だけで物件選びするのは危険だといえるでしょう。
一方、短期的に利益を出したいのであれば、土地だけでなく、建物の価値にも着目すべきです。昨今では、耐震性や断熱性、機密性、レジリエンスなどの住宅性能が戸建選びの1つの基準となっています。
2025年には、全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられます。
このようなことを踏まえれば、高性能な建物であるかどうかは、資産価値の維持に直結する要素であると考えられます。
4.出口戦略を見据えた不動産投資を
売却価格が高く成功しやすい物件は都心の物件という結論になりました。
中古は利回りが高い物件が多く、区分マンションであれば購入価格が安くサラリーマンでも融資が通りやすいという特徴があります。
利便性の高いエリアの中古物件を選ぶ事で、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を得られ、出口戦略で成功できる可能性が高くなります。
「収益性が高く資産価値も高い」という理想的な物件を購入することは難しいですが、不動産会社と相談し現実的な出口戦略を設定することで不動産投資を成功させましょう。