建ぺい率オーバーの建物はリフォーム可能?既存不適格か違法建築かが鍵
「実家を相続する話が持ち上がっているけれど、実は建ぺい率だか容積率だかが、オーバーしているらしい」
「実家は違法建築なの?リフォームして住んでもいいのかな?」
建ぺい率や容積率オーバーの原因は、主に2つ。「既存不適格」と「違法建築(違反建築)」です。
混同されがちですが、この2つは全く異なるものです。
「既存不適格」は、建築当時の法令には適合していたものの、その後の法律改正等で現行の法令に適合しなくなったケースです。「既存不適格」は決して違法建築ではありませんし、継続して住むことができます。
一方で「違法建築(違反建築)」は、新築当時は建ぺい率・容積率とも範囲内で確認申請も提出したが、後から無許可で増築や改築をした結果、建ぺい率や容積率をオーバーしてしまったものです。
ここでは、法律改正等で建ぺい率をオーバーした「既存不適格建築物」でも可能なリフォームと、確認申請が必要なリフォーム内容について解説します。
1.建ぺい率・容積率オーバーの建物もリフォームは可能!ただし制限あり
建築当時は法律に適合していたものの、法改正等で現在の法律に適合しなくなった建ぺい率オーバーや容積率オーバーの
「既存不適格建築物」は、建物を継続して使うことが認められています。
また簡単なリフォーム、具体的には部屋のビニールクロスの張り替えや、トイレやユニットバスなどの設備機器の入れ替えなど、構造部が変わらないリフォームは、確認申請をせずに行えます。
「4号建築物」のリフォームは確認申請自体が不要です。
4号建築物とはこのような建物です。
4号建築物の特徴
・木造の場合は、2階建て以下かつ、延床面積が500平方メートル以下のもの。
・木造以外の場合は、平屋かつ、延床面積が200平方メートル以下のもの。
一般的な広さの木造2階建て住宅や、木造以外の平屋建て住宅は、基本的に確認申請不要でリフォームできます。
2.確認申請が必要なリフォームの工事内容とは?
リフォームで届け出(確認申請)が必要かどうかは、工事内容によります。
鉄骨2階建て住宅や木造3階建て住宅などの「4号建築物以外」で、かつ、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)の1種以上を、過半(1/2 超)にわたり修繕・模様替えする「大規模の修繕、大規模の模様替え」(分かりやすく言うとリフォームのことです)する工事においては確認申請が必要です。
(用語の定義)
第二条
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
※引用元:建築基準法第2条14号,15号
事例を見ていきましょう。
1)外壁のリフォーム(大規模の修繕)
4号建築物ではない建物で、外壁仕様の変更を伴う外壁の過半(外壁面積の2分の1を超える)の張り替えを行う場合、確認申請が必要です。
外壁がタイル張りだったものをサイディング(外壁に張る仕上げ板材)に張り替える場合は、大規模の修繕にあたりますので確認申請を行います。
外壁が吹き付け塗装で、汚れが目立ってきて塗り替えるだけなら、確認申請は不要です。
2)屋根の葺き替え(大規模の修繕)
4号建築物ではない建物で、屋根の過半(屋根面積の2分の1を超える)の葺き替えを行う場合、確認申請が必要です。
外壁や屋根のほかにも、2階建て以上の鉄骨造住宅や木造3階建て住宅で、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根または階段)の半分を超える面積をリフォームするなら、確認申請が必要です。
3.増築リフォームも確認申請が必要なので注意
建築業界では「増築」と言われる工事も、一般的には「リフォーム」と呼ばれますので、ご紹介します。
- 防火地域、準防火地域は、面積に関わらず床面積が増える「増築」は確認申請が必要
- 防火地域、準防火地域「以外」の地域は、10平方メートルを超える「増築」は確認申請が必要
1)吹抜を床にする(増築)
吹抜けを床にするリフォーム工事の場合、防火地域と準防火地域は、面積にかかわらず確認申請が必要です。
2)カーポートや物置を後から設置する(増築)
カーポートや物置、小規模な倉庫などは建築面積に参入されるため、確認申請が必要です。
(物置や倉庫は、人が入って作業できない仕様であれば、建築面積に算入されないものもあります)
4.確認申請が必要なリフォームは現行法規に適合させる(遡及適用)が緩和措置あり
いくつかのケースで、「このリフォームは確認申請が必要です」とお伝えしてきました。
「既存不適格建築物」は違法ではなく、継続して住めます。
しかし、確認申請が必要なリフォーム(増築・改築、大規模の修繕、大規模の模様替)をする場合は、建築物と敷地に現行の法規が適用されます。
これは「遡及適用」といい、リフォームの確認申請時、建築物と敷地ともに現行法規に適合させる必要があります。
もし、建ぺい率や容積率がオーバーしている場合は、リフォームのために減築したり物置やカーポートを撤去したりするなどして、指定建ぺい率内におさめなくてはならないケースもあるのです。
一方で、「政令で定める範囲において増築等(増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替)をする場合には適用しない」という緩和措置もあります(建築基準法第86条の7)。
緩和措置の対象は以下の通りです。
おわりに
建ぺい率オーバー、容積率オーバーの建物は、「既存不適格」と「違法建築(違反建築)」の2つがあり、既存不適格建築物であれば、政令で定める範囲でリフォームは可能です。
快適な暮らしのためにリフォームをするにも関わらず、リフォームによって減築しなければならない場合も。
それならば、確認申請が不要なリフォームに留めるのもひとつの選択肢になるかもしれません。
確認申請が必要なリフォームをされる場合、建物が適法に建築された証明として、確認済証(古い建物では確認通知書)や検査済証が重要な資料になります。
建ぺい率がオーバーしていることがわかっている建物を、確認申請を出してリフォームする場合は、行政の建築指導課や住宅リフォーム会社に必ずご相談ください。