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空き家投資での失敗事例とリスクを回避する方法

執筆者:椙原 あやめ 椙原 あやめ

人口減少や少子高齢化などにより、日本中に空き家が増えています。

安価に取得できる空き家は、不動産投資物件として魅力的です。

とはいえ、人が住まなくなり、活用もされていないからこその空き家であり、運用するには「コツ」があります。

初期投資が少なく、利回りが高いとされる空き家投資ですが、本記事ではリスクを回避し、高収益を目指す方法をご紹介します。

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1.空き家投資とは?

空き家を使った不動産投資を「空き家投資」といいます。

空き家の多くは築年数が古く、投資を始める前にはほとんどの場合リフォームが必要ですが、安価な空き家はリフォーム費用を加味しても高利回りに期待できる投資方法です。

1)空き家は増え続けている

(出典「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)

空き家は、右肩上がりで増えています。

日本の1世帯当たりの住宅数は、1.16戸(2018年)。

総住宅数が総世帯数を上回り、家が余っている状況です。

 

増加の一途をたどる空き家は、社会問題の1つでもあります。

不動産が負動産!?知らないと大変なことになる負動産の実態と今からできる対策

適切な管理が行われていない空き家は、防災上、衛生上、景観上、問題視されており、2015年には空き家に関する初めての法律「空き家対策特別措置法」が施行されました。

空き家を活用した空き家投資は、社会貢献にもなると考えられます。

2)空き家投資のメリット

●取得費が安価
●利回りが高い

物件が安く手に入れられることから、空き家投資は往々にして高利回りです。

たとえば、新築時の価格が3,000万円の空き家が1/6の500万円で取得できたとしても、新築当時の家賃12万円が1/6の2万円になるとは考えづらいでしょう。

3)空き家投資のデメリット

●需要が低いエリアが多い
●そのままでは賃貸に出せないことも多い

冒頭で述べた通り、人が住まなくなり、活用されていないからこその「空き家」です。

売却も活用もしやすければ、現所有者はなんらかの運用をしているはず。

「活用するのにも手間やお金がかかる」あるいは「需要が見込めない」という考えから、空き家と化してしまっているわけです。

空き家を取得したあとにはなんらかの“工夫”をしなければ、運用できない物件が多いものと考えられます。

 

築古中古戸建ての不動産投資のポイントの詳細は、以下の記事をご覧ください。

初心者にもおすすめ!築古中古戸建てによる不動産投資のポイント

2.空き家投資での失敗事例6個と対応策

1)リフォームにお金をかけすぎて失敗

空き家で投資するには、リフォーム・リノベーションが不可欠です。

しかし、気になるところを全て綺麗に修繕し、デザインも細部までこだわろうとうと思うと、いくらお金があっても足りません。

せっかく安く取得したのにリフォーム・リノベーションをお金かけすぎると、利回りが下がり失敗してしまいます。

対応策

空き家を取得するときに一緒にリフォーム業者も伴って内見するなどし、購入前にリフォーム・リノベーション費用の概算を知ったうえで購入を決めることが大切です。

一見、綺麗に見える空き家でも、壁の中の構造躯体はボロボロといったケースも少なくありません。しっかり空き家の状態を把握して購入するため、ホームインスペクションを実施するのもおすすめです。

2)DIYに挫折して空き家のまま放置

リフォーム・リノベーションにかける費用を抑えようと、自身でDIYしようと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、空き家の修繕は、棚の造作やクロスの張り替えといった単純なDIYと大きく異なります。

DIYに予想以上の時間と費用がかかってしまうと、そのまま放置してしまう要因にもなってしまいかねません。

 

空き家を放置すると、空き家特別措置法により、固定資産税の増税や過料といったペナルティが課されることも懸念されます。

対応策

やはり、大事なのは、空き家を取得する前に要リフォーム箇所を検討することです。

DIYできそうな箇所についてはトライしてみても良いでしょうが、水回りの交換や構造部の強化など、大掛かりのリフォーム・リノベーションはプロに任せるのが無難でしょう。

(出典:国土交通省

また、近年では「DIY型賃貸借」という賃貸方法も少なからず見られます。DIY型賃貸借とは、入居者にDIYを一任するというものです。最低限のリフォーム・リノベーションだけ行い、あとは入居者の好きなようにDIYしてもらうことで、費用も手間も抑えられます。

3)入居者が決まらない

空き家投資のうえで最も危惧されるのが、入居者が入らないことです。

どんなに安価に取得しても、どんなに綺麗に修繕しても、入居者が入らないことには収益は発生しません。

対応策

「安価に取得できる」というのは、空き家投資のメリットの1つです。しかし、「安い」「利回りが高い」ということを優先するのではなく、空き家投資の物件選びで最優先すべきは「需要」です。

 

空き家は、需要が低いからこそ空き家になっていたのであり、需要が見込める物件はそう多くありません。

販売価格が安い理由についても、多くの場合、需要が低いからです。そんな中、需要が高い物件を見つけるのは容易ではありません。

 

空き家投資は、不動産投資のなかでも難易度が高い投資です。場合によっては、他の物件種別で投資するなど、根本から見直すことも必要でしょう。

4)相続登記に時間がかかり投資を開始できない

売買ではなく、相続によって取得した空き家で投資できないかと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

相続空き家を活用するとなると、初期費用はリフォーム・リノベーションだけ。融資も不要なため、利益率は高いと考えられます。

 

しかし、相続した不動産をすんなり登記できるとは限りません。

2025年4月から相続登記は義務化されますが、これまで相続登記は任意でした。登記名義人が先々代、先々々代……となっていて、登記するまでに数年かかったという事例もあります。

対応策

この場合の対応策は、速やかに相続登記するということに尽きます。

相続登記は自分で手続きすることも可能ですが、登記名義人が被相続人になっていない場合や相続人が多い場合は、戸籍謄本などの書類を集めるのにかなりの時間を費やすことが予測されるため、司法書士に委託するのが無難です。

5)共有者の同意が取れない

相続登記の問題をクリアしても、共有者の同意が取れないことには空き家を貸し出すことはできません。

原則的に、不動産を賃貸に出すには、全ての共有者の同意が必要です。

対応策

「共有」による相続は、相続方法の1つです。

共有不動産は、活用や売却など、ことあるごとに共有者同士で揉める可能性があるため、共有分割ではなく「換価分割」や「代償相続」などその他の分割方法も検討してみましょう。

 

換価分割とは、相続した不動産を売却してお金を分ける相続方法です。換価したお金で新たに物件を取得すれば、物件を選ぶこともできます。

 

一方、代償相続とは、不動産を相続した相続人が、他の相続人に代償金を支払う相続方法です。

ある程度まとまったお金が必要になりますが、単独所有とすることで、相続した不動産の方向性を決めやすいといえるでしょう。

6)遠方にある物件を自主管理して失敗

不動産投資をするにあたって、考えなければならないのが「管理方法」です。

最もお金がかからないのは「自主管理」ですが、空き家は遠方にあることも多く、入居者から問い合わせや苦情がある度に現地に赴くとなると労力も交通費もかかってしまいます。

対応策

空き家は見えない瑕疵も少なくないため、他の物件と比べて不具合が出やすいものと考えられます。

遠方にあるのならなおのこと、管理はプロである管理会社に委託することをおすすめします。

賃料収入の5%前後の管理費がかかることをあらかじめ想定したうえで利回りを考え、投資判断をしましょう。

7)出口戦略が取れない

空き家は、その特徴から「出口戦略」が取りにくいものです。

出口戦略とは、どういった投資の終わり方を迎えるのかということです。空き家は総じて古く、土地の需要も低いものです。

 

賃貸経営中は収益が上げられていたとしても、手放せなかったり、手放すのにお金がかかったりすれば、それまでの収益を相殺し、損失が生じてしまう恐れがあります。

対応策

空き家投資に限ったことではありませんが、出口戦略は物件選びの段階で考えておくべきです。

特に空き家は、何十年も投資できるものではありません。

 

限られた期間の中で収益を上げられるのか、投資を終えたときには売却したり、更地にして投資物件したりできる見込みはあるのか……このようなことまで見極めたうえで購入するようにしましょう。

3.失敗しない空き家選びをするための5つのチェックポイント

空き家投資で失敗を回避するには「物件選び」が何より大切です。

ただ取得費が安く、表面利回りが高ければ良いのではなく、「稼げる」物件なのかを見極める必要があるでしょう。

1)賃貸需要が見込めるか

築古の空き家で投資をする場合、賃貸需要があるかどうかの見極めはとても大事です。

一般的に賃貸戸建ては、駅から近く、生活利便施設や教育施設、公園、病院などが近いエリアが好まれます。

とはいえ、近年ではリモートワーク化が進んでおり、必ずしも居住用として古民家を借りる人ばかりではありません。

一般的には「好立地」といえない場所にあっても、都市としての魅力があったり、環境が良いエリアであったりすれば、一定の需要が見込めます。

 

大事なのは、どういった用途で貸し出すかを決めたうえで物件探しをすること。

戸建てとして賃貸に出すだけでなく、デイサービスや介護支援事業所、シェアハウスや民泊にして貸し出す空き家投資も可能です。

事業用に転用する為にリフォームが必要になるケースがありますが、このような活用には補助金が使えることもあります。

 

シェアハウスとして貸し出せば、複数人が部屋を借りるため収益がゼロになりにくいというメリットも。

注意点は、シェアハウスは「寄宿舎」になるため、面積が200㎡を超える場合は用途変更が必須になるほか、関連法令の対応をしなくてはなりません。

シェアハウス ガイドブック|国土交通省

 

民泊にする場合も住宅設備に規定があり、住宅宿泊事業者としての届出もしなくてはなりませんのでご注意ください。

対象となる住宅 | 民泊制度ポータルサイト「minpaku」|国土交通省

 

用途を変えて不動産投資をすることを「コンバージョン」といいます。建物としての魅力に欠ける空き家は、コンバージョンの判断が投資の成否の鍵を握るといっても過言ではありません。

不動産投資のコンバージョンが空き家対策になる!?成功パターンとデメリットを解説

空き家のコンバージョンの例は、下記の記事にまとめています。

空き家を有効活用して稼ぐ!成功事例も交えて解説

2)リフォームにいくらかかるか

空き家投資にリフォームは不可欠です。

いくら物件価格が安価であっても、リフォームにお金をかけすぎてしまえば利回りは悪化します。

物件を取得するときには、取得費のみならずリフォーム費用も見積もったうえで「総額」から購入の判断をしましょう。

3)欠陥・瑕疵(かし)の有無と契約不適合責任

築古の戸建てを買う場合は、とくに「物件状況」および「売買契約書」をよく確認することが大切です。

たとえば、売買契約書に雨漏りの記載があれば、雨漏りを了承した上で購入するということになります。

逆に、売買契約書に雨漏りの記載がなく、住み始めてすぐに雨漏りが起こった場合、住むという目的を果たせないため売主に補修の請求ができます。

これを、売主の「契約不適合責任」といいます。

●物件状況と売買契約書の記載内容に相違がないか
●契約不適合責任の期間・範囲はどうなっているか
●欠陥や瑕疵の修繕負担はどうなっているのか

 

契約不適合責任がしっかり履行されるかは、契約書の内容次第です。

契約不適合責任とは、その名の通り「契約内容に適合していない部分」に対する売主の責任。

物件状況と契約書の内容に相違がないかも、必ず確認しましょう。

4)見えない部分の瑕疵

目に見える範囲は「物件状況」のごく一部にすぎません。

重大な欠陥の多くは目に見えない箇所にあるもの。

この瑕疵を見逃さないためにも、空き家の購入前にはホームインスペクションを実施することをおすすめします。

 

ホームインスペクションとは、第三者機関による建物状況調査です。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

ホームインスペクションとは?中古住宅を購入するときに知っておきたいポイント | Redia

5)かかる費用を想定して利回りを計算する

利回りを計算するときには、取得費用や賃料だけでなく、投資するまでにかかるインスペクション費やリフォーム費、投資中にかかるランニングコストなども想定するようにしましょう。

たとえば、500万円で空き家を取得し、月8万円で貸し出した場合、表面利回りは「8万円×12ヶ月÷500万円=19%」と非常に高いですが、実際に次のような費用がかかることを想定すると、実質利回りはここまで高くなりません。

 

  • 仲介手数料:物件価格×3%+6万円
  • インスペクション費用:5〜6万円
  • リフォーム費用:全面リフォームすると500万円程度〜
  • 管理委託費:賃料の5%程度
  • 固定資産税:8万円程度

 

上記のような費用を踏まえて利回りをあらためて計算すると、次のようになります。

(8万円−4,000円)×12ヶ月-8万円÷(500万円+21万円+5万円+500万円)=8%

まとめ:リスクを回避した空き家投資を

空き家投資は、初期投資が抑えられ、高利回りに期待できます。

さらに、昨今、急激に進んでいる働き方や暮らし方の多様化は、空き家投資の大きな後押しとなるでしょう。

 

その一方で、空き家投資には少なからずリスクもあります。

今回ご紹介した空き家投資の失敗事例を踏まえ「低価格」「状態が良い」というだけで飛びつくことはせず、しっかり先を見越した物件選びをしましょう。

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