二級建築士と一級建築士の違いは?設計できる建築物の範囲が異なる資格

建築士の資格には、一級建築士・二級建築士・木造建築士があります。
特に、よく疑問で挙げられるのが、二級建築士と一級建築士の違いです。
二級建築士と一級建築士では、設計可能な建築物の構造や規模が異なります。
ここでは、二級建築士と一級建築士の違いを解説します。
1.二級建築士と一級建築士の違い
二級建築士と一級建築士の違いを具体的に解説します。
1)設計可能な建築物が異なる
二級建築士は、比較的小規模な建築物についてのみ設計・工事監理ができます。
それに対し、一級建築士は全ての構造・規模・用途の建築物の設計・工事監理ができます。
以下は、都道府県知事(二級建築士)、国土交通大臣(一級建築士)から中央指定試験機関の指定を受けて建築士試験を行う、公益財団法人建築技術教育普及センターの公式サイトの表です。
一般的な戸建住宅(300平方メートル以内)なら、二級建築士で設計可能。
ハウスメーカーや工務店で住宅設計に携わるなら、二級建築士で十分といえます。
一級建築士は制限なく、すべての建築物を設計可能です。
2)免許登録要件と登録先が異なる
一級建築士と二級建築士では、免許登録の要件も異なります。
一級建築士は、試験に合格することとともに、大学卒業後、通算2年以上の実務経験が必要ですが、二級建築士は実務経験が不要です。
従来まで、大学を卒業して一級建築士を受験するためには、先に2年間の実務経験を積まなければなりませんでした。
しかし、法律が改正され、実務経験は免許登録要件にかわりました。
二級建築士 | 一級建築士 | |
免許登録要件
(※細かく規定あり) |
大学・短期大学・高等専門学校を卒業後、実務経験なしで免許登録可能 | 大学卒業後、2年以上の実務経験で免許登録可能 |
登録実施機関 | 各都道府県の建築士会 | 公益社団法人日本建築士会連合会 |
免許を与える者 | 都道府県知事 | 国土交通大臣 |
資格の種別 | 国家資格 | 国家資格 |
3)試験制度と合格率、建築士資格の難易度
建築士の試験は、二級建築士と一級建築士ともに、1年に1度です。
学科試験、製図試験の両方に合格しなくてはなりません。
学科試験は、二級建築士は「建築計画、建築法規、建築構造、建築施工」の4科目。
一級建築士は「計画、環境・設備、法規、構造、施工」の5科目、すべての科目が合格基準点以上で学科試験合格です。
1点でも足りない科目があれば学科試験は不合格となり、翌年以降に再受験となります。
二級建築士と一級建築士では、難易度が異なります。
令和3年の総合合格率は、二級建築士で23.6%、一級建築士で9.9%です。
先述通り、二級建築士試験に合格すれば、所定の大学・短期大学・高等専門学校の卒業者は実務経験なしで免許登録できるのに対して、一級建築士試験の免許登録には実務試験が必要です。
初受験で、学科試験・製図試験を同じ年に合格するストレート合格者は多くありません。社会人として建築業務に携わる等、実務経験を積みながら受験勉強する人がほとんどのため、二級建築士より一級建築士の方が難しいといえます。
ただし、二級建築士と一級建築士のどちらが上ということはありません。
異なるのは、設計する建築物の用途や規模によって、二級建築士と一級建築士のどちらを取得することが適しているかどうか。
戸建住宅をメインとする住宅メーカーの方なら、二級建築士でも実務で活躍できますし、大規模建築物を設計している会社で働くなら一級建築士の取得が必須といえるでしょう。
2.二級建築士と一級建築士の共通点
設計可能な建築物の規模は二級と一級で異なるものの、建築士でなければ建築物の設計・工事監理を行うことができません。その点が共通しています。
また、二級建築士・一級建築士と名乗れるのは有資格者のみです。
(名称の使用禁止)
第三十四条 建築士でない者は、建築士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
2 二級建築士は、一級建築士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
一般的な規模の戸建住宅であれば、二級建築士も一級建築士も設計できます。
二級建築士と一級建築士の違いは設計可能範囲
「戸建住宅の設計担当者が二級建築士だけど大丈夫?」
「二級建築士ではなく一級建築士に依頼した方が安心なのでは?」
とよく聞かれますが、設計が認められている建築物を設計するのであれば、二級建築士か一級建築士かは気にすることではありません。
ゼネコンや組織系設計事務所の設計部を経て、ハウスメーカーや住宅を得意とする設計事務所に転職した人などは、一級建築士を持っていることが多いものです。
それに対して、長年住宅設計をしている人は、二級建築士しか持っていないこともあるでしょう。
二級建築士か一級建築士かを気にするよりも、普段その人がどのような建物を設計しているかがポイントです。
戸建住宅の設計を依頼しているのなら、設計者が住宅設計を多く手掛けているのかを聞いてみてください。