1.不動産の流動性リスク
不動産における流動性とは、売買のしやすさを表します。
世の中にある商品の中で不動産は売れるまでに時間がかかりやすく、換金できるまでの期間が比較的に長い商品だといわれています。不動産は株やFXのように取引市場がなく、1対1の相対取引となるため、売主と買主が双方見つからなければ契約が成立しません。
そのため、売りたいときにすぐに買い手が見つからなければ希望価格より安く売らなければならなくなり、これを不動産の「流動性リスク」といいます。不動産投資にはこの流動性リスクがつきものなのです。
2.不動産の種類による流動性の違い
不動産の種類によって流動性には違いがあります。
区分マンションは不動産の中では比較的、流動性が高いです。理由としては、価格帯がほかの不動産(一棟ビルや一棟アパート)よりも手頃であるため、買い手がつきやすいことが挙げられます。
また、投資用の物件であれば「入居がつきやすい物件」や「売却益を得やすい物件」などが流動性に影響します。
3.流動性を高める要素
1)都心であること
投資用不動産の流動性は都心ほど高く、都心から離れるにつれて低くなります。
現在の日本は、少子高齢化により人口が減少し続けていますが、全国で一律に減っているわけではなく、都心に関しては、むしろ人口は増えています。今後はさらに周辺地域の高齢化と過疎化が加速し、コンパクトシティ化も進んでいくと考えられます。その結果、中心部ほど流動性の高いエリアとなり、それ以外は流動性の低いエリアとなっていくことが考えられます。
しかし、地方へ行くほど流動性は低くなりますが、利回りの高い物件は増えます。不動産投資戦略のポイントは利回りと流動性のちょうどいいバランスの物件を見つけることです。
2)立地がいいこと
「立地の良さ」は入居者に選ばれる物件の理由のひとつです。そのため、立地が良ければ需要は高く、買い手が見つかりやすくなります。立地の重要ポイントとして次の3つがあります。
- 駅から近い
- 都心(ターミナル駅)まで近い
- スーパーやコンビニが近い
賃貸の場合は「不便」ということは命取りになりかねません。賃貸物件を探している人は「利便性」に重点をおいて探しているため、入居者に選ばれる立地は投資用不動産の流動性に大きな影響を及ぼすのです。
3)設備や状態がいいこと
物件のクオリティも流動性に影響します。
物件の管理が行き届いていて、設備や状態がよければ魅力のある物件として入居者が付きやすくなります。そうなると売却時に買い手の目にも留まりやすくなり、流動性が高まる可能性があります。
4.将来の売却を見越した物件選びをする
不動産の流動性は投資計画にも大きく影響します。物件が将来的に売却しやすいかどうかは次の3つを考慮することで、ある程度の予測を立てることができます。
1)建物の耐用年数の残存期間
多くの金融機関はこの残存耐用年数を基準として融資期間を設定するため、残存耐用年数が短い物件ほど売りづらくなってしまいます。
2)利回りと家賃下落率
投資用物件では利回りも重視されるため、利回りの高い物件は売れやすくなります。また、家賃下落率も売却時の不動産価格に大きく影響します。
3)物件の積算評価
利回りと同様に重視されるのが積算評価です。積算評価とは土地の価値と建物の価値をそれぞれ別に評価し、それを合算する評価方法です。
どれくらいの担保価値があるのかを測る参考値となり、積算評価が低いと金融機関からの融資も限定され自己資金が多く必要となるため購入できる人が限られてしまいます。
5.流動性と融資の関係
不動産の流動性は、金融機関の融資とも大きく関係しています。
金融機関が金利を下げ、融資条件を緩くしてくれる場合、購入を考えている人は融資を使って物件を購入しやすくなるため、結果として流動性が高くなります。
逆に金融機関が融資条件を絞ってくると、お金を借りにくくなるため、物件の流動性は低くなります。このため、売却のタイミングについては、金融機関の状況を知ることも重要になります。
6.まとめ
不動産投資を成功させるには、収益性や利回りだけを見るのではなく、出口で資金回収できるのかという流動性と、投資した元本のことも考える必要があります。
思うような売却ができなかった場合、運用している期間は家賃収入が得られ、表面的には利益が出ているように見えても、売却したときに最終的な利回りが計算よりも下回ってしまうことにもなりかねません。
自分に合った投資スタイルを考えて、流動性を重視するのか収益性を重視するのかをじっくり検討することをおすすめします。