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【フラット35】不正利用で自己破産!?居住・投資用に併用できる落とし穴とは

執筆者:棚田 健大郎 棚田 健大郎

審査が通りやすい住宅ローンである「フラット35」ですが、昨今、不正利用が横行しているのをご存知でしょうか。

不動産会社が素人である一般買主を説得し、フラット35を利用して投資用物件を買わせていたのです。

このように、不動産会社が“勝手に”不正を行うケースが大半で、結果的に購入者が自己破産する例もあるほどです。

フラット35を利用して自宅を賃貸に出すのは違反行為ですが、必ずしもそうなるわけではありません。

本記事では、
・フラット35を利用した不正問題について
・住宅ローンを利用して投資用に賃貸できる方法

これらについて解説します。

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1.フラット35不正利用問題とは

2019年8月に、住宅金融支援機構が特定の業者が関与したフラット35の不正利用の疑いが複数件発生していると記者発表しました。

 

そもそもフラット35は、「自己住居」を購入する際に利用できる全期間固定金利の住宅ローンですので、不動産投資を目的とした利用はできません。

 

ところが、一部の目をつけた不動産業者が、素人である一般買主を説得してフラット35を使って投資物件を買わせていたのです。

問題1)そもそもフラット35利用後に投資用目的に自宅を賃貸に出してはいけない

前述したように、フラット35は、マイホーム購入の用途で、そこに本人が住むことを前提としている住宅ローンです。

衣食住は、人間が生きていくうえで基本となる3大要素であり、その中の「住」を支えるマイホームは、多くの人が無理なく購入できるよう、他のローンに比べて金利がかなり低く設定されています。

ですから、契約時の規約にも、マイホームの用途であることや、貸し出しをしないことなどが記載されており、フラット35を利用して不動産投資を目的とした建物を建設し、賃貸に出すことは契約違反となるのです。

問題2)フラット35は審査が通りやすい点を悪用

フラット35は、通常のローンよりも審査が通りやすいという特徴があります。

 

目的がマイホームということもあり、他のローンと比較すると、本人の属性に関する審査が緩めでローンが組みにくいといわれている個人事業主の方や、勤続年数が少なく年収が安定していない方でも審査が通りやすいのです。

 

不動産業者はここに眼をつけ、投資経験が浅い20~30代の単身者をターゲットにフラット35の不正利用を繰り返していました。

問題3)フラット35『オーバーローン』で利用されていた

今回浮き彫りになったフラット35問題のもう1つのポイント、それはオーバーローンです。

オーバーローン

本来の借入目的である物件価格よりも高い金額を住宅ローンで借り入れること。

最初に解説しておきたいのが、「オーバーローン=違法」ではない、ということです。

物件の購入には、様々な経費がかかりますが、実際の物件の価格に経費分をプラスした価格であることを正しく申告したうえでローンを申請し、金融機関が許可をすれば、オーバーローンではありますが、違法性はありません。

違法となるのは、金融機関に虚偽の申告をし、物件の価格を大きく上回るオーバーローンを組んだ場合です。

 

フラット35を不動産投資で使用していることだけでも十分悪質ですが、当該事案ではフラット35でローンを組む際に、より多くの金額を固定金利で借入するために、実際の売買代金を水増しして金融機関に申請していたのです。

 

一般の方からすると信じられないかもしれませんが、実は私も水増しした書類を過去に見かけたことがあります。

 

というのも、融資金額の水増しであるオーバーローンは今でこそほとんどなくなっていると思いますが、一昔前は投資物件を扱う不動産会社の間で横行していたのです。

 

そのやり口はこうです。

 

悪質な不動産業者は、「数年住んでから賃貸に出すのは問題ありません」と嘘をついたり、ろくに説明もせず「一番低い金利のローンで申し込みしておきますね」などと言って、購入者を騙し、フラット35で不動産投資物件の申し込みをさせたりします。

住宅ローンについてあまり詳しくない方なら、不動産のプロともいえる不動産業者の言うことなら間違いないだろう、と容易に騙されてしまう可能性があります。

場合によっては、「不正行為ですが、みなさんやっているので大丈夫です」、「バレることはありませんよ」と言い、購入者側も不正だと承知したうえで投資物件のローンの申し込むケースもあります。

さらに、「この金額で申し込めば、投資物件のリフォーム代に回すことができますよ」、「この物件をローンで買えば借金をチャラにできますよ」、などと言葉巧みに勧誘し、フラット35のオーバーローンを組ませようとします。

購入者から承諾を得られたら、虚偽の見積書を用意して金融機関の審査を通すのです。

オーバーローンで得た水増しした資金は、上記のように、リフォーム資金になったり、本人の別の借金の返済に充当したりといった使われ方をしますが、なんと不動産業者が着服するケースまでありました。

悪徳不動産業者としては、一件でも多く契約を取り、仲介手数料を手に入れるのが目的であり、そのために購入者も金融機関も騙します。

金融機関に偽の売買契約書を提示して組むオーバーローンは、明らかな不正行為なので許されません。

2.フラット35を不正利用する『オーバーローン』はなぜバレる?

フラット35の不正利用問題が発覚し、メディアなどにも大きく取り上げられたことにより、融資審査もその後の調査も厳しくなったため、オーバーローンがバレやすくなりました。

以下、具体的にどのようにしてバレるのか見ていきたいと思います。

1)金融機関による物件評価調査

金融機関は、融資の審査を行う際、不動産売買契約書や工事請負契約書を確認したうえで、独自に物件の資産価格の評価も行います。

つまり、独自に調査した物件の価格と、ローン申し込みの金額や契約書に記載された金額とが明確に違いすぎる場合は、違法性のあるオーバーローンの可能性が高いと判断し、さらに厳しい調査を行うのでバレてしまうでしょう。

2)金融庁による金融検査

金融庁は、金融機関に対し、適切な業務を行っているかや、財務状況などのチェックを行っており、これを金融検査といいます。

この金融検査により、オーバーローンが発覚することがあります。

3)第三者による密告

例えば、オーバーローンによる水増しした資金で借金を返済出来た場合、得をしたような気がして、つい他人に自慢したくなってしまうものです。

自慢された人の中には、「不正なことをして借金を返済するなんて許せない!」と密告する人もいるでしょうし、「自分にも借金があるから、この銀行でローンを組んだ〇〇さんと同じ方法で返済出来ないだろうか?」と、住宅ローンの申し込みの際に悪気なく金融機関に相談してしまうケースもあります。

3.フラット35を不正利用するとどうなる?

フラット35を不正利用しても、バレない可能性はないのでしょうか?

また、バレてしまったらどうなるのでしょうか?

1)金融機関から調査が入る

住宅ローンを内緒で不動産投資に使ってもどうせばれない、といわれてきましたが、今回のフラット35問題を受けて、国からも金融機関に調査を強化するよう指導が入っています。

金融機関が「調査が必要」と判断した案件については次のような方法によって、本当に本人が居住しているのか確認するとしています。

 

文書の送付

フラット35を利用している方に、本人限定受取郵便や、転送不要郵便などを送付し、戻ってくるようであれば、ローン利用者が住んでいない可能性が高いと判断されます。

「フラット35について聞きたいことがある」という旨の文書が届くこともあります。

 

電話による確認

フラット35を利用して建てた家に、自分自身が住んでいるのかなどの確認の電話がきます。

不動産会社から勧められるがまま、違法性を認識せず不正利用している方は、この時に正直に話すのでバレてしまいます。

 

現地訪問

金融機関の方が、調査のために現地訪問をしてくることもありますが、調査ではなくとも、住宅ローンの利用者には投資信託などの金融商品の営業に担当者が訪問してくることもあります。

よって、万が一不動産投資で利用していれば現地訪問された時点で完全にバレるでしょう。

 2)金融機関から一括返済を求められる

では、フラット35の不正利用がバレるとどうなってしまうのでしょうか。

フラット35の不正利用は完全に契約違反なので、基本的にはローンを一括返済するよう請求を受けることになります。

今回発覚したフラット35問題については、極めて悪質性が高いということもあり法的措置も検討しているそうです。

 

ちなみに、私が以前投資マンションの一括返済で立ち会った方が、実は住宅ローンだったというケースがありました。一括返済当日、銀行の窓口で行員の方から現住所と物件住所が一致しないことを指摘されてかなり焦っていました。

 

幸い、一括返済当日だったこともあり、銀行側もそれ以上は深追いせず一括返済が無事終わってことなきを得ましたが、その方も購入当初に当時の不動産会社から住宅ローンの不正利用の斡旋を受けていたようです。

 

いくら不動産会社から斡旋を受けたとしても、不正利用の責任は本人がとることになります。

4.例外的にフラット35が投資用として使える『賃貸併用住宅』

フラット35は投資物件では使えませんが、賃貸と自己住居が一体となっている「賃貸併用住宅」については、例外的に使えます。

 

例えば、1階が賃貸で2階を自己住居とする賃貸併用住宅の場合、2階の自己住居部分についてフラット35を適用することが可能です。

 

ただ、実務的にはローンを2本に分けることになってあまり効率が良くないのでおすすめではありません。

 

このようなケースでは、フラット35よりも通常の住宅ローンの方がおすすめです。面積の50%以上を自己住居が占めていれば、住宅ローン1本でローンが組めるからです。

まとめ:お咎めなしの考えは古い

住宅ローンを投資目的に不正利用するケースが横行していた時代を知っている営業マンは、どうせバレても結局お咎めなしだから大丈夫、と思っているようですがその考えは古いです。

 

今回のフラット35問題に加えて、スルガ銀行の不正融資問題など投資用マンションをめぐる融資問題については金融庁も目を光らせており、昔のような甘い対応では終わらない可能性が高いのです。

 

どんなに営業マンから大丈夫といわれても、住宅ローンやフラット35は絶対に投資目的で利用しないよう注意しましょう。

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