大阪市のワンルーム規制は東京に比べて厳しい?購入価格と出口戦略の影響とは
ワンルーム規制とは、ワンルームマンションの建築を制限する条例のことです。
東京23区では全区でワンルーム規制が行われていますが、大阪にもワンルーム規制があるのでしょうか。
大阪や東京でのワンルームマンション投資を考えているのであれば、ワンルーム規制の違いについてもしっかり押さえておきたいものです。
そこで今回は、大阪のワンルーム規制の現状と東京との比較、ワンルーム規制が購入価格や出口戦略などに与える影響についてご説明します。
ワンルーム規制制定の背景と大阪のワンルーム規制
ワンルームマンション規制は、一部の自治体で行われている新築ワンルームマンションの建設を制限する条例です。
まずは、ワンルーム規制の概要と大阪のワンルーム規制の状況をご紹介します。
ワンルーム規制制定の背景
ワンルーム規制とは、自治体がワンルームマンションの建設に対して最低限確保しなければならない専有面積や天井高などを、建築基準法よりも厳しい基準に設定する条例です。
ワンルームマンションの建築を規制する条例が制定された背景の一つには、自治体が若い単身者層の割合を増やしたくないという思惑があります。
ワンルームマンションに住むのは、学生や社会人になって間もない若い世帯が中心です。学生の場合は、アルバイトをしても収入は住民税の課税対象額以下であることも多いため、学生が増えても自治体は住民税を徴収できません。
また、同様に社会人であっても仕事を始めてからまだ数年の若い世代では年収も低いことが多いため、住民税額も低くなります。
税収が低下すれば、自治体はごみの収集や消防、救急、教育、福祉などの円滑な行政サービスの提供が難しくなってしまいます。
そのため、自治体としてはワンルームマンションが増えて若い世代よりも、住民税をしっかり徴収できるファミリー世帯の流入を増やしたいのです。
若い世代が地域活動に参加しないケースやゴミ出しなどを巡るトラブルなどを起こしやすい傾向にあることも、ワンルーム規制導入の目的として挙げられています。
大阪にワンルーム規制はある?
大阪にもワンルーム規制はあります。大阪市では、「大阪市ワンルーム形式集合建築物に関する指導要綱」を1995年に制定しています。
大阪市内でワンルームマンションを建築する場合には大阪ワンルーム形式集合建築物に関する指導要綱に基づき、事前協議を行う必要があるのです。
また、大阪市では条例ではないものの、ワンルームマンションの建築を計画する際には一戸当たりの専有面積を18 ㎡以上確保する旨が示されています。
住戸専用面積 | 18㎡以上 |
居室の天井の高さ | 2.3m以上 |
駐車設備 | 住戸が30戸以上の場合は、全住戸数の10%以上の駐車場、3%以上のバイク用駐車場の設置 |
管理人室 | 30戸以上の場合は管理人室を設置。 |
管理体制 | 管理人の駐在又は巡回による管理を行う。
30戸未満の場合は、監視カメラによる管理でも可。 |
※出典:https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000200692.html
大阪と東京のワンルーム規制はどれだけ違う?
大阪にもワンルーム規制があることをご紹介しましたが、ワンルーム規制の内容は自治体によって異なります。
大阪と東京ではどちらの方が厳しいワンルーム規制が定められているのでしょうか。
大阪市のワンルーム規制と東京23区のワンルーム規制を比較してみましょう。
東京 | 大阪 | |
専有面積 | 25㎡(30㎡以上も有) | 原則18㎡ |
ファミリータイプ住宅
設置義務 |
21/23区が設置義務 | なし |
東京のワンルーム規制は、区によって規制内容が若干変わってきますが、大阪市のワンルーム規制と比べると、主に次のような点に違いがみられます。
専有面積の広さ
大阪市のワンルーム規制の最低専有面積は18㎡です。
一方、東京23区のワンルーム規制では、ほとんどの区で最低専有面積を25㎡に設定しているため、専有面積に関しては、東京の規制の方がより広い面積を確保しなければならない厳しい条件となっています。
ファミリータイプ住戸の設置義務
東京23区では、ほとんどの区で一定数以上の戸数を持つマンションの場合、ファミリータイプの部屋の設置が義務付けられています。
例えば、荒川区では住戸数が15戸~29戸の場合は、住戸数の1/3以上を50㎡以上のファミリー住戸にしなければなりません。
また、文京区では15戸以上の住戸数がある場合は、(住戸総数-15)×1/2以上の戸数を40㎡以上にする必要があります。
大阪市では、ファミリータイプ住戸の設置に関しての規定はないため、この点においても東京のワンルーム規制の方が厳しい条件であるといえるでしょう。
大阪と東京では東京の方がワンルーム規制は厳しい
大阪と東京のワンルーム規制の内容を比べると、東京の規制のほうが厳しいことが分かります。
大阪市のワンルームマンションは専有面積が18㎡以上であれば、建築できるのに対して、東京23区の多くでは25㎡も必要になります。
1部屋で2坪も広さが変わることから、新規マンションを建築する敷居も高くなるでしょう。
また、戸数によってはファミリータイプの住戸も設置しないといけないといった条件もあり、東京23区は大阪よりもワンルームマンションの新築が難しくなっています。
出口戦略は東京に軍配。対して大阪は購入価格が低い
ワンルームマンション規制の内容を比較すると、東京の方が大阪よりも規制が厳しくなっています。
では、ワンルームマンションの規制内容は不動産投資にどのような影響を与えるのでしょうか。
東京は物件の資産価値を維持しやすい
規制が厳しいとワンルームマンションの建築ハードルが上がるため、東京では大阪よりもライバルとなる新築のワンルームマンションが増えにくいと言えます。
ライバル物件が増えなければ、マンションが供給過多になる可能性は低くなり、時間が経過しても物件の価値が落ちにくく、物件売却時に高い価格で売却できる可能性が高まります。
出口戦略を考えると、ワンルーム規制の厳しい東京の方が大きなメリットを得られるといえるでしょう。
購入価格は大阪のほうが低い
出口戦略の面では東京のワンルーム投資に軍配が上がりますが、資産価値が下がりにくいということは、物件の購入価格も高額になることを意味します。
つまり、東京のワンルーム投資では、売却時にも高額で売却できる可能性が高いものの、購入時も高い費用を払わなければ物件を購入できないというわけです。
物件価格が高ければ、ローンの借入額も大きくなり、毎月の収支が赤字になる可能性もあります。
相当な精神力の強さや確実な逆転成功の見込みがなければ、赤字の中で不動産投資を続けていくことは難しいでしょう。
それぞれの特徴を踏まえた戦略を
大阪は東京と変わらないぐらい、ワンルームマンションのニーズがあるエリアです。
しかしながら、物件価格は東京よりも安いため、投資用物件を購入する際のハードルが下がるというメリットがあります。
売却時の物件価格を考えると、東京の方がより良い条件で売却できる可能性が高くなりますが、大阪は物件価格が安いために繰り上げ返済で早期完済を行うこともできます。
ローンを完済してしまえば、支出が減り手元に残るお金が増えるため、出口戦略を気にする必要もなくなるでしょう。
ただし、大阪エリアのワンルーム投資は、ワンルーム規制が緩いためにライバル物件が増えやすいというリスクがあります。
大阪でワンルーム投資を始める際には、入居者を獲得できるように人気のエリアを見極め、駅から徒歩圏内の物件を取得するようにしましょう。
まとめ
大阪にもワンルーム規制がありますが、規制内容は東京に比べると緩くなっています。
したがって、出口戦略を考えると東京のワンルーム投資の方が高く売却できる可能性があります。
しかしながら、物件の購入価格を考えると東京のマンション価格は高騰しており、高額で物件を購入しても毎月持ち出しが発生してしまうリスクがあるのも事実です。
大阪の場合は、比較的低い金額で物件を購入できますが、ワンルーム規制が厳しくないために今後もライバル物件が建つ可能性があります。
東京と大阪のどちらかでワンルーム投資を始める場合には、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえでエリアを選択するようにしましょう。