日本発の貼る太陽光電池 次世代の発電分野で世界シェア奪還へ
太陽光発電の分野で、ゲームチェンジが起きるかもしれません。
現在の主流は太陽光パネルですが、これに代わる次世代の発電地として「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。
実用化に向けて政府や民間が開発を急ぐ中、中国が量産に乗り出すなど、開発競争は今後激化していくでしょう。
本記事では、日本の太陽光発電分野における失態と、新技術「ペロブスカイト太陽電池」での巻き返しの可能性について解説します。
1.発電能力は原発6基分に相当「ペロブスカイト型」とは?
二酸化炭素を排出せずに電気を動かすカーボンゼロの時代へと世界が移行しています。
洋上風力や水素の分野などで新たな再生エネルギーが誕生する中、次世代の太陽光発電とされているのが、ペロブスカイト型の太陽光電池(以下、PSC)です。
特徴は厚さ1マイクロメートルのフィルム型で、従来のパネル型に比べ重さが10分の1程度。
折り曲げられる柔軟性の高さから、ビルの壁面や建物の屋上をはじめ曲面にも貼り付けることが可能です。
平地が少なく太陽光パネルを置ける場所が限られる日本において、PSCは設置可能面積が最大で東京ドーム1万個分となり、発電能力は原発6基分に相当するとの試算があります。
その注目度は高く、2023年4月に開催された気候・エネルギー・環境相会合では、主要7ヵ国(G7)がPSCなど革新的技術の開発を推進する共同声明を採択。
桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が2009年に発明して以降、その技術が世界に与える影響力に各国が気づき始めています。
2.パネル型で世界シェア取るも中国に王座を明け渡した過去
政府は電力全体に占める太陽光発電の割合を2021年度実績の8.3%から2030年には16%まで拡大する方針です。
実用化に向けて急がれるPSCの開発ですが、日本は従来の太陽光パネルで世界シェアトップの座を明け渡した過去があります。
2000年代前半まで、京セラやシャープなどの日本勢は太陽光パネルの出荷量で世界シェアの大半を占めていました。
その後、国の経済支援を受けた中国企業に価格競争で敗れ、市場から次々と撤退。
今もなお、中国は太陽光電池のモジュール(パネル1枚)生産で世界シェアの7割を占める独走状態を堅持しています。
PSCにおいても数十億円を投じて開設した工場で中国企業が量産に乗り出し、2023年には生産能力を10倍に引き上げる見込みです。
これより先行して2021年にポーランドの企業が生産を開始するなど、新技術を巡る世界の生産レースは既に火蓋を切っています。
3.量産支援と実証実験に動く官民!脱炭素時代の革新に期待
日本としては自国発のPSCでリードを取りたいところです。
自民党の議員連盟は2023年6月5日、PSCの量産支援を政府に提言。
2030年の実用化に向けて岸田総理は支援に前向きな姿勢を示し、官民の動きも目立ち始めています。
2023年6月27日にはトヨタ自動車と京都のスタートアップがEV車でPSCの搭載を目指す共同開発を発表したほか、NTTデータは2024年4月から東京都港区にあるデータセンターの壁にPSCを設置して実証実験をスタートする予定。
また、東京都も都内の下水道施設で発電効率や設置方法の検証を始めています。
奇しくもPSCの基幹部材となるヨウ素の産出量が世界全体で3割を占める日本。
お家芸と称されるモノづくりの技術と、恵まれた国産資源を活かし新たな発電分野で革新を起こせるのでしょうか。
脱炭素時代に向かう世界が問いかけます。