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行政手続き、オンライン完結は1割未満、電子申請経験は5%程度、家賃支援給付金にも影響か

執筆者:棚田 健大郎 棚田 健大郎

コロナ禍で売り上げが大幅に減少して困っている方が多い中、二次災害ともいうべき被害が発生しています。

それが行政手続きの遅延です。

新型コロナウイルス感染症の影響によるダメージを補填するために、国はさまざまな給付金制度を打ち出しましたが、支給までに時間がかかる状況が続いています。

そこで本記事では、行政手続きのオンライン化が進んでいない実態と、日本が直面している問題点について切り込みたいと思います。

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1.特別定額給付金のオンライン申請が次々中止に

紆余曲折ののちにようやく1人10万円の支給が決まった特別定額給付金ですが、皆さんはすでに受け取りましたでしょうか。

ちなみに、私も申請しましたが、未だに振り込まれておらず、役所のホームページを見ても進捗状況については個別に回答できないので、問い合わせをしないよう書かれているだけです。

諸外国に比べ、なぜ日本の行政手続きはこんなにも遅いのでしょうか。

2.オンラインアレルギーの日本人

そもそも日本の行政手続きのオンライン化はどの程度進んでいるのでしょうか。

政府公表のデータによれば、国の行政手続きのうち、オンライン完結できるものが全体の1割にも満たないことがわかりました。

一方、お隣の韓国は多くの手続きについてオンライン化が進んでおり、アナログで手続きすることが珍しいくらいです。

技術的にはそこまで差がないはずなのに、ここまでの違いが出てしまうのには、主に次の原因が関係していると考えられます。

印鑑依存症の体質

日本は古くから印鑑を書類に直接押印することを強く好む傾向があり、押印がない書類を見ると何となく不安になるという国民性があります。

これは行政手続きに限らず、あらゆる申込書、契約書、さらには社内で用いる申請書などもすべて押印が必要なケースが多いです。

デジタルに押印できない、そんな前時代的な事情も行政手続きのオンライン化の足かせになっています。

これを受け、政府の規制改革推進会議は、6月22日のオンライン会議で行政手続きの完全オンライン化をするとともに、押印も原則廃止にするよう提言する意見書を安倍総理へ申し入れるとしました

意見書によれば、デジタル化しないのが例外というデジタルファーストの姿勢で検討を進めるべきである強調されていますが、果たしてうまくいくのでしょうか。

3.特別定額給付金オンライン申請でわかった致命的弱点

日本の行政手続きのオンライン化が進まない理由をあげ始めたらきりがありませんが、中でも今回の特別定額給付金のオンライン申請で浮き彫りとなった問題点があります。

それは行政データのデジタル化です。

行政手続きの完全オンライン化を図るためには、前提として役所側が保有している住民に関する情報をデジタル化して管理している必要があります。

なぜならオンライン申請を行う目的は、役所に行かずに手続きができるということだけでなく、申請されたデジタルデータを役所側のデジタルデータと自動で照合してスピーディーに処理をするためです。

一方通行だったオンライン申請

特別定額給付金のオンライン申請は、何とかオンラインで入力して送信することが可能になりました。

ところが、受信したデータを処理する役所側のデジタル化が進んでいないがために、せっかくデジタルで受信したデータを職員が目視で役所のデータと照合して確認するという、信じられないほどアナログな処理がされていたのです

結果、大量の不備が発覚して処理しきれなくなった役所が、オンライン申請を打ち切り始めるという異例の事態に発展しました。

せっかくオンライン申請できるのに、郵送で申請したほうが早く処理できる、というアナウンスをする始末となってしまったのです。

家賃支援給付金にも影響が

政府は事業者の経営が持続できるよう支援する目的で、「家賃支援給付金」の支給を打ち出しました。

最長6ヶ月間、毎月最大で50万円の家賃補助を行うという内容の給付制度ですが、すでに開始している持続化給付金の支給が遅れている中、果たしてすぐに支給されるのかすでに不安の声が上がっています。

2020年6月24日現在では、まだ申請方法について発表はありませんが、仮にオンライン申請が可能になったとしても申請後の審査がアナログなので、持続化給付金のように支給までに時間がかかる可能性は十分考えられるでしょう。

デジタルファーストの考え方とは

今後日本がデジタルファーストを推進するなら、必ず直面する問題がデジタルプア問題です。

日本のIT技術は諸外国と比べても決して劣ってはいません。

ですが、日本人は中高齢者を中心にデジタル化に拒否反応を示す傾向が強く、ガラケーからスマホに移行できないなど、中高齢者のデジタルプアが行政手続きのオンライン化の大きな足かせとなっているのです

今回のコロナ禍で行政手続きのオンライン化が必要なことは身に染みて分かったはずなので、これを機会にデジタルプア世代もデジタルファーストを理解して、率先して勉強してできるようにならなければならない、という強い意識を持てるかどうかがポイントになるでしょう。

4.オンライン化の切り札

日本のオンライン化を進めるための切り札になると考えられるのが、マイナンバーです。

もともとマイナンバーは社会保障、税、災害対策の3分野で複数の機関に存在する個人情報を一括管理することが主な目的でした。

ところが、今回コロナ禍という災害が起きたにもかかわらず、ほぼ何の役にも立たなかったといえます。

マイナンバーに個人の所得、家族構成、口座情報などが一括管理されていれば、特別定額給付金も自動で振り込まれたかもしれません。

マイナンバーを中心に、あらゆる行政データが一元管理されれば、マイナンバーと暗証番号だけであらゆる行政手続きができるようになるでしょう。

5.不動産業界もデジタル化が必要

デジタル化の問題は行政だけの問題ではありません。

不動産業界も媒介契約書、売買契約書、賃貸借契約書、重要事項説明書など様々な書類が必要ですが、中には書面ではなくデジタル化することも一部可能です。

デジタル化が進めば、不動産会社が大量の書面を長期にわたって保管するコストを削減できますし、IT重説と組み合わせていけば取引の完全オンライン化も不可能ではないでしょう

コロナ禍によって浮き彫りとなったオンライン化、デジタル化の必要性は、今後求められる新しい生活様式を実現していくうえでも、対応が必須となる課題といえるでしょう。

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