【サブリース契約】更新拒絶は無理?賃料減額が加速する2025年問題

サブリース契約は、サブリース会社が物件を借り上げ、入居者の有無にかかわらず一定の家賃を支払う賃貸借契約です。
オーナーは入居者集めに気を配ることなく一定の収入を得られますが、一方で賃貸経営の不振や物件の経年劣化などを理由に賃料が引き下げられるリスクもあります。
十分な収入を得られないサブリース契約の破棄や賃料減額の拒否はできるのでしょうか。
本記事では、サブリース契約の更新拒絶や賃料減額の申し入れについて対応方法をご紹介します。
1.サブリース契約の更新は拒絶できる?解約は?
サブリース契約は、サブリース会社が第三者へ転貸することを前提に物件を借り上げる賃貸借契約です。
オーナーとサブリース会社の間で結ばれる契約は賃貸借契約にあたるため、一般的な借主と貸主の間に存在する権利と義務が発生します。
賃貸借契約は借主に非常に有利な契約であるため、サブリース契約においては借主にあたるサブリース会社が優位に立ちます。
1)貸主からサブリース契約を途中解約するのは難しい
サブリース契約は「特定賃貸借契約」と呼ばれ、借地借家法や賃貸住宅管理業法、民法などの適用を受けます。
民法第618条では、賃貸借契約で定めた期間中の解約について、いずれか一方が契約期間中に解約する権利を留保できるとしています。
すなわち、貸主側から解約の申し入れがあっても、借主側が拒否できるということです。
また、借地借家法第28条においても、貸主側からの解約には正当な事由が必要である旨が定められています。
たとえ契約書上に貸主から解約の申し入れを認める特約が盛り込まれていたとしても、同法第30条がその効果を無効とするため、貸主側の都合による一方的な解約はできません。
上記をサブリース契約に当てはめると、貸主であるオーナーは借主であるサブリース会社に対し、契約期間中の解約を申し入れたとしても認められない可能性が高いといえます。
2)契約満了時の更新拒絶も困難
では、オーナーは契約満了時の契約更新はできるのでしょうか。
サブリース契約は、一般的な賃貸借契約と同様に普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約のいずれかの形態で結ばれます。
定期建物賃貸借契約は契約更新を行わない前提であるため、契約満了時に契約更新の手続きは発生しません。
一方、普通建物賃貸借契約は契約期間の定めはあるものの、借主側に更新する権利が認められています。
そのため貸主側からの途中解約には正当な事由が必要なだけでなく、契約満了6カ月前までに更新しない旨の通知が求められるなど、貸主側からの契約拒絶には高いハードルが設けられます。
すなわち、貸主側からのサブリース契約満了時の更新拒絶は非常に困難であるといえます。
2.賃料が減る?サブリース2025年問題とは?
サブリース契約は解約が難しい契約ではありますが「安定して高額の家賃収入が入り続けるなら問題ない」と考えるオーナーも多いのではないでしょうか。
しかし、近い将来、サブリース契約物件の賃料値下げ請求が多発すると予測されています。
これは「サブリース2025年問題」と呼ばれており、次のような影響によって発生すると考えられています。
1)2015年相続税法改正にともなうサブリース物件の増加
2015年に施行された改正相続税法では、相続税の基礎控除が以下のように変更されました。
改正前:5,000万円+1,000万円×法定相続人数
改正後:3,000万円+600万円×法定相続人数
この改正により、従来まで相続人がいれば最低6,000万円の基礎控除が受けられたところ、3,600万円まで引き下げられました。
すなわち、以前は相続税を納める必要が無かった人も、今では課税される可能性があります。
この相続税法の改正を受け、2015年頃から不動産投資を開始し、サブリース契約をはじめた方が多発しました。
当時建てられた物件の多くは2025年に築10年を迎えるため、ちょうど家賃の見直しにともなう値下げ請求が多発すると予測されているのです。
2)高齢者増加が見込まれる人口動態の予測
2025年は、第一次ベビーブーム期に生まれた世代である団塊世代が全員75歳以上になる年です。
引越しの機会が減少する高齢者の増加にともない賃貸物件の需要が低下するため、サブリース物件も賃料を下げざるを得ない事態に陥ることが予測されます。
この影響は若者が集まる都市部よりも高齢者比率が高い地方で顕著に見られると考えられます。
3.サブリース物件の賃料減額を請求されたときの対処方法
2025年問題が現実味を帯びてきた現在、オーナーはサブリース会社からの賃料減額請求に備えておく必要があります。
減額幅によっては物件を建てた際に組んだローンの返済が難しくなることも考えられますので、キャッシュフローを健全に保つための対処を行いましょう。
1)当事者間での協議
最初にすべきは、サブリース会社との協議です。
サブリース会社が借主の正当な権利を行使して減額請求を行うとしても、オーナーは必ずそれに応じなければならないわけではありません。
まずは減額の必要性や減額幅について話し合い、双方が納得できる妥協点を探りましょう。
賃料減額請求について話し合う上で参考にしたいのが、過去の判例です。
サブリース契約における減額請求にまつわる数多くの判例は、法的な観点からも妥当な落とし所を探るのに役立つでしょう。
2)調停および裁判による決着
過去に判例があるからといって、サブリース会社側が納得するとは限りません。
双方が納得する形で話がまとまらないようなら、調停や裁判の場で決着をつけることになります。
なお、裁判で新賃料の合意ができていない間は、サブリース会社が主張する値下げ後の新賃料分しか振り込まれなかったとしても、オーナーは旧賃料との差額分の支払いを求めることができます。
ただし、最終的に裁判で減額された新賃料が確定した際には、サブリース会社が減額請求を行った時点まで遡って新賃料が適用されますので、オーナーは受け取った賃料の一部を返還する可能性を念頭に置いておきましょう。
3)違約金を支払い解約
サブリース契約の解約を最重視する場合には、契約書に設けられた解約条項に従って解約の手続きを進めましょう。
前述の通り、オーナー側からのサブリース契約の解除は簡単ではありませんが、契約書に定められた違約金の支払いに応じることで解約できる場合があります。
ただし、契約書上で合意していてもサブリース会社が法的な権利を盾に解約に応じないケースも。
また、サブリース会社がさらに別の会社に転貸しているような場合もありますので、オーナーは違約金の二重支払いや、追加の立退料の上乗せといった対応が必要になることもあるでしょう。
最終的には長い時間をかけた上に多額のお金を支払って解約することになります。
弁護士などの専門家に入ってもらい、協議で決着をつけるのが望ましいでしょう。
4.サブリース解約後は「管理委託」を!
賃貸物件の管理の委託先は、サブリース会社だけではありません。
オーナーが主導権を持ったまま管理業務のみを外部に任せる管理方法を「管理委託」といいます。
管理委託とは、オーナー自身が貸主の立場で賃借人と契約を結ぶ管理形態です。
基本的にサブリースのように賃料保証はありませんが、サブリースほど高額の手数料は必要ないため、家賃収入を最大化しやすくなるというメリットがあります。
また、サブリース会社に徴収されていた更新料や礼金をオーナーが受け取れますので、家賃以外の臨時収入も期待できるようになるでしょう。
物件の運営方針はオーナー自身が決めなければならないため手間はかかりますが、サブリース会社の方針に従わなければならなかったリフォームをオーナー自身の意向で行えるようになります。
また、管理委託契約の解約時にはサブリースのような違約金を求められることはほとんど無く、オーナーが安心して任せられる管理会社を選びやすい点も大きなメリットといえます。
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まとめ
サブリース契約は、借主にあたるサブリース会社が守られる契約であるため、オーナーが思うような賃貸経営を行いにくい側面があります。
契約満了であっても解約は難しく、また賃料の値下げ交渉にも応じざるを得ないため、オーナーにとって不利な契約になりがちです。
とくに2025年は賃料値下げ交渉の頻発が予想されるため、多くのオーナーは苦しい立場に立たされることになるでしょう。
賃料の値下げにより賃貸経営が難しくなるようなら、サブリース会社と協議したうえで双方が納得できる妥協点を探しつつ、管理委託への切り替えも視野に入れた検討を行いましょう。
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