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関西・九州に多い「敷引き」を解説。敷引き物件を避けるためには?

執筆者:Redia編集部 Redia編集部

関西・九州地方には、敷金の一部を差し引かれる「敷引き」と呼ばれる慣習が存在します。

退去時の修繕費用・原状回復費用に敷金が充てられるケースは多いですが、「敷引き」は別の料金となりますので、できる限り避けていきたい物件です。

敷引きの概要や敷金・礼金について、敷引き物件を避ける方法、法的な有効性についてお伝えしていきます。

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1.「敷引き」とは?

「敷引き」とは、賃貸借契約の場面で退去時に敷金の一部を返還しない特約を付ける事を言います。部屋の修繕費等にあたる原状回復費用とは別になります。

例えば家賃5万円の住宅に入居する際、3ヶ月分として15万円の敷金を受け取ったとします。その内1ヶ月分である5万円を敷引き、さらに原状回復費用を1ヶ月分の5万円差し引かれると賃借人(住宅を借りた人)に返還される敷金は5万円となります。

不動産広告では敷引きは「敷金・敷引き」と記載されているパターンと「保証金・敷引き」と書いてあるパターンがありますが、敷金は保証金と同じ意味であるため双方敷引きされることになります。

「敷引き」や「保証金」の記載は西日本に多いですが、関東圏は「敷金・礼金」という言い方が一般的です

そもそも「敷金・礼金」とは何でしょうか?改めて学んでおきましょう。

敷金・礼金について

敷金は入居者がオーナーに支払う「預り金」であり、保証金とも言い換えられます。

家賃の滞納があった場合に不足分を敷金から補填することがあり、金額は物件によって異なります。

今まで敷金は慣習として扱われてきましたが、2020年4月の民法改正により「賃貸人(住宅を貸した人)は賃貸借が終了した時、または法に則って賃借権を譲り渡した際には敷金を返還しなければならない」という旨の文章が記載され、「敷金は未払い分の家賃や原状回復費用を差し引いた後返還する」と法律として明文化しました

一方で礼金は入居者からオーナーへ「家を貸してくれてありがとう」という謝礼として支払われるお金で、返還されません。

2.敷引き物件を避ける方法2つ

退去の際は引っ越し代等でただでさえ出費が多くなりますので、「敷引き物件を避けたい」という方は多い事でしょう。

敷引き物件に入居しないためには、入居時に賃貸借契約書をチェックする、敷金・礼金がかからないゼロゼロ物件に入居するという方法があります。

賃貸借契約書をチェックする

賃貸物件を借りる際には、不動産会社から賃貸借契約書が提示されます。

敷引き物件を避けるためには契約書の特約事項の欄に「敷引き」の文字が無いかチェックしましょう。敷引き特約がある場合は、不動産会社になぜ敷引き特約が入っているかを確認してみましょう。

たとえ敷引きがあっても物件に価値があると感じた時、敷引き特約がある理由に納得した際は入居したほうが良いですが、後に敷引きを払ってまで物件に住みたいと思わない場合や理由に納得できない時は別の物件を探すことをおすすめします。

ゼロゼロ物件に入居する

近年敷金・礼金が無い「ゼロゼロ物件」が増加しています。

ゼロゼロ物件にはそもそも敷金が発生しないため、敷引きをされることもありません

入居者側にとっては初期費用がおさえられ、オーナー側にとっては早期契約になりやすく、入居率が高まるというメリットがありますが、短期間で退去すると違約金が発生する、家賃が高めに設定されているというケースが存在します。

オーナー側が敷金から退去費用を引く事が出来ないため、原状回復費用、クリーニング代等で退去費用が高くなる事もあります。

ゼロゼロ物件に入居する際は、賃貸借契約書の退去に関する条項をよく確認しておきましょう。

3.敷引きが多い地域

敷引きは関西圏・九州地方に多い傾向があります。敷引き物件数が一番多い都道府県は長崎県で2番目は鹿児島県、次いで熊本県・福岡県と続きます。

一番多い長崎でも敷引き物件の割合は14.8%で、2位以降は1割に満たない結果となっています。関西では京都と滋賀県に見られますが全体の2%程度となっています

敷引きの物件数も減少傾向にあります。

4.敷引きは法的に有効

消費者契約法第10条では「消費者の権利を制限し、または義務を加重する特約で信義則に反し、消費者の利益を一方的に害する特約は無効」と定義されています。

民法上、賃借人は生活する上で仕方のない損傷(通常損耗)に対して原状回復の義務はないと明記されています。

敷引きは通常損耗の回復費用を敷金または保証金から差し引く慣習ですので、消費者契約法第10条による「消費者の義務を加重」という点に引っかかる可能性があります

敷引きが「信義則に反し、消費者の利益を一方的に害する」と判断されると「敷引きは違法」という結論となります

5.敷引きをめぐる裁判の判決

これまで裁判所で幾度となく敷引きの有効性が争われてきましたが、裁判所の判断は意見が分かれています。

2011年には始めて最高裁で裁判が行われ、「敷引きは有効」との判決が下されました

裁判所の判決のポイントは「敷引き特約が賃貸借契約書に明記されていること」、「敷引き金の額が賃貸期間に応じて設定されていること」、「敷引き金の額が極端に高額ではなく消費者の利益を一方的に害するものとまでは言えないこと」です。

賃貸借契約書に明記されており、法外な金額でなければ敷引きは有効とされますが、法外ともいえる値段で契約書に記載されていない場合は違法との判決が下される可能性があります。

6.賃貸借契約書をよく確認しよう

敷引きは関西、九州の風習で敷引き物件は年々減少傾向にあります。

自分が借りる側である場合は、契約書の特約事項に敷引きの文言がないかよく確認しましょう。

オーナー側である場合、敷引き物件は避けられる可能性や訴訟リスクがあることを覚えておきましょう。

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