生活保護受給者と賃貸借契約をする場合の注意点
生活保護受給者の人数は、厚生労働省の資料によれば平成27年3月をピークに減少傾向にありますが、世帯数で見ると高齢者世帯が増加していることで増えている状況です。
そんな中、比較的家賃が低めの物件を所有していると生活保護受給者から入居の申し込みが入ることがあります。
そこで本記事では、生活保護受給者と賃貸借契約を結ぶ場合に、確認すべきことや注意点などについて詳しく解説します。
1.生活保護受給者とは
そもそも生活保護とは、厚生労働省が定めた最低生活費に収入が満たない場合、その差額が生活保護費として支給される制度のことです。
収入には、就労による収入だけでなく、年金などの社会保障給付や家族からの援助等も該当します。
具体的には、何らかの事情で仕事ができずにいる方など、一定の定収入がない人であることが多いです。
※参考:
厚生労働省生活保護制度
住宅扶助の金額
生活保護受給者は自分の収入で家賃を支払うことが困難なため、基本的には生活保護として支給される住宅扶助を家賃の支払いに充当することになります。
住宅扶助には月当たりの限度額があり、例えば新宿区で1人暮らしの場合限度額は53,700円です。
生活保護は本人の生活再建を支援する目的があるため、基本的には限度額を超える家賃の物件についてはよほどの事情がなければ承認は下りません。
2.生活保護受給者審査のポイント
生活保護受給者から申し込みが入ったら、次の点について確認しましょう。
生活保護を受けるに至った事情
生活保護受給者といっても、人によってさまざまな事情があります。
単に仕事が決まらないだけなのか、それとも何らかの病気で就労が難しいのかなど、詳細な事情を確認することがとても大切です。
中には、重い病気を患っている方もいるので、そういった場合はもしもの時の連絡先などの体制を事前に構築しておく必要性も出てきます。
こういった事情を聞いていくことで、一時的に生活保護を受けているだけなのか、それとも今後長期的に生活保護を受けていかなければならない方なのかがわかるので、審査の可否を判断するうえでとても重要です。
連帯保証人は誰なのか
生活保護受給者は収入がないことから、家賃滞納のリスクはどうしても高くなります。
連帯保証人については、必ず親族で最低1名は確保しておくことが大切です。
特に、病気が原因で就労ができない人の場合、連帯保証人がいないともしもの時に対応してもらえない可能性があります。
加えて、家賃保証会社を利用できればなお安心です。
生活保護受給者でも家賃保証会社の審査は通る可能性がありますので、できるだけ使ってもらうことをおすすめします。
引越し理由
意外と忘れがちですが、実は一番重要なのが引越しする理由です。
なぜなら、生活保護受給者の中には現在住んでいる物件の家賃を滞納して追い出された人や家族とトラブルになった人など、何らかのトラブルを起こして引越し先を探しているケースがあるからです。
生活保護受給者は一度賃貸すると、長期的に居住する可能性が高いので、賃貸経営としては安定するというメリットがある反面、万が一トラブルを起こされても出ていく先がなくて居座られるというリスクも負うので、引越し理由については必ず聞きましょう。
3.生活保護受給者の家賃滞納を防ぐ2つの対策
生活保護受給者が家賃を滞納すると、本人から回収することは極めて難しいことから、大前提として滞納を発生させないための対策がとても重要になります。
対策1:役所から直接振込
住宅扶助は通常役所から本人に支払われ、その後本人が大家の口座に家賃として振り込みます。
ただこのやり方だと、大家の口座に振り込む前に生活費などで使い込んでしまって滞納するケースがあるので注意が必要です。
そこで利用すべきなのが「住宅扶助費等代理納付」の制度です。
これは簡単にいうと、大家が依頼することで役所(福祉事務所所長)が本人に代わって住宅扶助費を大家の口座に直接振り込むやり方で、専用の依頼書を提出することで代理納付してくれます。
この制度を利用すれば、住宅扶助が使い込みにあって家賃滞納を引き起こす心配がなくなります。
対策2:保証会社の自動引き落とし
保証会社を利用できる場合は、保証会社の自動引き落としを使うとより安心できます。
通常、保証会社を利用している人が滞納した場合は、大家自らが保証会社に対して代位弁済請求書を出して弁済を受けなければなりません。
対して、自動引き落としを利用した場合は、代位弁済請求の手間がなくなり、万が一家賃が滞納したとしても決められた期日までに保証会社から家賃が入金されるので安心です。
家賃の支払い方法について、上記いずれかの対策をとれば生活保護受給者の家賃滞納を回避できるでしょう。
4.まとめ
家賃が5万円前後の物件を保有している方は、生活保護受給者から申し込みが入る可能性があります。
生活保護受給者は一定のリスクはあるものの、対策をとってリスクヘッジできれば、長く居住してくれるというメリットもあるので、できる限りの対策をとったうえで賃貸借契約を締結する方向を模索してみましょう。