マンションの家賃相場を知る方法と家賃設定で知っておきたいポイントとは?
賃貸物件は諸条件により家賃の相場が異なりますが、オーナーとしては「家賃をいくらに設定すれば良いか」悩まれる方は多いでしょう。
家賃を相場より安めに設定すると空室率は低くなりますが、賃貸経営の収益性が低くなってしまいます。家賃を高めに設定すると、家賃収入は多くなりますが入居率が低くなってしまう可能性があります。
家賃を設定する際には物件の条件や近隣の家賃相場、収益性など様々な要素から総合的に判断する必要があります。
この記事では家賃設定のポイントを、賃貸物件において入居者が「譲れないポイント」「家賃が上がっても欲しい設備」などのデータと併せてご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
1.入居希望者が賃貸物件に求めるものとは?
民間の調査会社(リクルート住まいカンパニー)が2020年6月に行った、首都圏で賃貸住宅の契約を行った方を対象としたアンケートの結果を見ていきましょう。
部屋探しの際に見学した物件数は、新型コロナ感染拡大の影響で減少傾向となり2019年度は2.7件と過去最少となりました。
契約した物件の敷金は平均約1.0ヶ月分となっています。
一方で敷金ゼロの物件は増加傾向にあり、10年前と比較すると約3.5倍の件数になっています。
賃貸住宅を契約する上で決め手となった一番の項目は「路線・駅・エリア」となっており、立地を重視する方が多いことが分かります。次いで最寄り駅からの時間、通勤・通学時間、広さとなっており、やむを得ず諦めた項目は耐震性など建物の構造、日当たりや風通し、セキュリティ、築年数となっています。
「立地の利便性は譲れないが建物の築年数や構造、日当たりなどは妥協しても良い」という意見が多い結果となりました。
家賃が上がっても欲しい設備は「独立洗面台」が1位、次いでオートロック、システムキッチン、エアコン設備となっています。
※参照:2019年度賃貸契約者動向調査(首都圏)https://www.recruit-sumai.co.jp/data/upload/2019SUUMO_chintai_20200902.pdf
入居希望者が譲れない項目である「立地」が良い物件は需要が高いため、駅から近いマンションを所有している場合家賃設定は高めでも入居が決まる可能性は高いです。
一方で立地の良くないマンションは、独立洗面台やオートロックなどの設備で付加価値を上げていきましょう。
2.マンションの家賃を決めるためには?相場の情報収集
賃貸マンションの家賃を設定する際にはマンションの収益性から希望家賃を設定し、物件の条件を把握した上で、周辺環境や近隣の家賃相場を調べ、不動産会社からの聞き取りを行いましょう。
駅から近く利便性の高い物件は近隣の家賃相場も高めとなりますが、「物件の条件」が木造で「周辺環境」の治安が良くないと家賃を少し下げる事になります。
家賃を下げた結果、収益が出ない場合は賃貸経営が立ち行かなくなってしまいますので価格を調整する必要があります。
そのため家賃設定は5つの要素を総合的に判断する事が重要となります。1つずつ見ていきましょう。
1)マンションの収益性を基に家賃を設定する
まずは賃貸経営を行う上で、「どの位家賃収入があれば健全な経営が可能であるか」を基準に家賃の設定を考えていきます。
以下の計算式を基に1ヶ月の家賃を計算してみましょう。
(年間の家賃収入の希望額+年間の必要経費)÷12=希望する家賃
マンションの必要経費は修繕費や管理会社への委託費、固定資産税などが該当します。不動産会社に具体的な金額を尋ねてみましょう。
不動産会社で提示される利回りは「表面利回り」と呼ばれる利回りで、計算式は以下の通りになります。
表面利回り=年間の家賃収入÷購入価格
一方で必要経費を加味した「実質利回り」は以下の計算式となります。
実質利回り=(年間の家賃収入-必要経費)÷購入価格
実質利回りの方がより実際の値に近いため、必要経費は必ずヒアリングし計算に含めるようにしましょう。
収益性を計算する際には上記の「希望する家賃」と「実質利回り」を計算し、不動産会社の担当者と共に10年後、20年後の収支シミュレーションを行っておきましょう。
物件の購入価格やエリアによっては、必ずしも希望の収益性を実現できない可能性もありますので、物件選びの際には収益性を必ず判断材料の1つに入れておきましょう。
2)物件の条件について
物件の条件から家賃の相場を把握します。
- 建物の構造(木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造など)
- 築年数
- 間取り
- 日当たり(東西南北を含む)
- バス・トイレ・洗面台(独立しているか一緒になっているか)
- セキュリティ
- 設備
- 立地
- 共用部分の清掃・管理
建物の構造が鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造など耐震性の高い建物の場合、家賃が上がる要素となり、木造は家賃が低めに設定されています。
部屋数が多く床面積が広い間取りは家賃が高い一方で、ワンルームや1DKなどは家賃が低い傾向にあります。ワンルームマンションの間取りではバス・トイレ・洗面台が一緒になっている物件がありますが、先のアンケート結果でも「独立洗面台」を求める方は多いため、独立していた方が家賃は高くなるでしょう。
室内に洗濯機置き場があるか否かも気にする方は多いです。
防犯カメラ・オートロックなどセキュリティ面が充実したマンションは女性に人気があり、宅配ボックスやインターネット無料等の設備も家賃が高くなる要素の1つとなっています。
加えて新しい建物や都心の物件は家賃が高く設定される傾向にあります。建物の資産価値が高いため売却価格も高い傾向にありますが、物件価格も高くなっています。
加えて共用部分の清掃が行き届いており、管理が徹底していると入居希望者が内覧に来た時に好印象となります。
可能であれば、現地に物件を見学に行ってみましょう。遠方にある場合はGoogleストリートビューなどを利用し確認する事ができます。
見学に行ってみると実は隣で太陽光を遮る高層ビルの工事を行っていた、近くに葬儀場を建設していた等の事態が発覚するケースがあります。
3)物件の周辺環境
周辺環境に関しては以下の要件を参考にしてみましょう。
- 駅までの距離
- スーパー・コンビニ・商業施設までの距離
- 病院・銀行までの距離
- 嫌悪施設(葬儀場・風俗施設等)の有無
- エリアの需要の高さ
駅やスーパー・コンビニ、病院・銀行などの施設と距離が近いと利便性が高く家賃は高めに設定できます。
葬儀場や風俗施設、墓地などは「嫌悪施設」と呼ばれ避ける入居者も多い事から、家賃には悪影響となります。
エリアの需要の高さは、周辺の競合物件を調査してみましょう。
SUUMOやat home、Home’sなどで賃貸物件を探している方が利用するポータルサイトで、募集の家賃が高めに設定されているエリアは、高い家賃でも住む人がいる人気スポットとなります。
ただし検索した物件が長い間募集をしている場合には相場からかけ離れている可能性が高いです。
4)近隣の家賃相場
最後に賃貸物件のポータルサイトで近隣の家賃の相場を調べてみましょう。
ポータルサイトで検索できる物件は「現在空室で入居者を募集している」ことが前提となりますので、相場と異なる家賃設定をしている可能性があります。
5)不動産会社からの聞き取り
近隣の不動産会社からエリアの空室率や需要、家賃相場を聞き取る事で情報収集が出来ます。
既に不動産会社と取引を行っている場合には近隣物件の成約事例を教えてもらいましょう。ポータルサイトと違い、実際に成約になった条件が得られるため家賃設定において重要な情報になります。
賃貸物件は一般的に3月、9月の引っ越しが多い繁忙期では家賃が上がる傾向にあります。
成約の事例を聞く際には時期も同時に聞いておきましょう。
3.家賃を設定する上で知っておきたいポイント
家賃相場を知り、家賃を決めて募集を行う前に知っておきたいポイントがあります。
「家賃がポータルサイトの検索に引っかかる仕様にする」という事と、入居者の要件を緩和する事で入居希望者の数を多くできる、家賃を上げられる可能性があるという2点です。
「ちょっとした工夫」ではありますが、入居率と家賃を上げられる可能性があります。
1)検索に引っかかる仕様にする
入居希望者はポータルサイトで物件を探す方が非常に多いため、インターネットで募集を行うオーナーも多い事でしょう。
ポータルサイトに掲載する際のポイントは「検索に引っかかる」事を意識する点です。
例えば家賃7万円以内の物件を探している場合、7万1千円では検索条件から外れてしまいますので、キリの良い家賃設定にすることを心がけましょう。
駅からの徒歩●分以内といった立地条件、インターネット無料などの設備面ではじかれている可能性もあります。入居希望者から問い合わせが少ない場合は家賃設定を見直す、設備の設置を検討するなどの方法で対処しましょう。
2)入居者の要件を緩和する
「入居者の要件を緩和する」という点も入居率や家賃の設定金額を上げるために重要なポイントです。
例えば都内ではペット可、1DK程度で2人入居可の物件があまり多くないため、高めの家賃設定でも空室率が少ない傾向にあります。
他には高齢者歓迎物件や敷金・礼金ゼロのゼロゼロ物件なども入居率を上げられる可能性があります。
4.まとめ
家賃設定は賃貸経営において重要なポイントとなります。立地や物件の条件、不動産会社からの聞き取りなど様々な情報から総合的に判断していきましょう。
少しでも家賃や入居率を上げたい方は、ポータルサイトの検索に引っかかる仕様にする、人気設備を設置する、ペット可や高齢者歓迎といった入居者の要件緩和などを検討してみましょう。