賃貸住宅の付加価値を高める「コンセプト型賃貸」とは
現在、賃貸住宅を取り巻く環境は厳しくなりつつあり、借り手市場の状態が続いています。
しかし、そのような状況下であっても、他の賃貸マンションとの差別化を行い、入居者からの人気を誇っている物件もあります。
そういった物件の中には、これからの賃貸住宅の一つの形になると言われている「コンセプト型賃貸」があります。
コンセプト型賃貸とは、どのような賃貸住宅を指すのでしょうか。具体例を交えながらご紹介します。
1.コンセプト型賃貸とは
「コンセプト」とは、概念や考えを表す言葉で、何かを作り上げる時の基本的な理念のことを言い、コンセプト型賃貸とは、あるコンセプトのもとに設計・建築された賃貸住宅のことを指します。
コンセプト型賃貸と一般的な賃貸住宅との違いは、コンセプト型賃貸がある特定の層をターゲットに設定している点にあります。
これまでも賃貸住宅は、ファミリー向け、単身者向け、女性専用、ペット飼育可など、おおまかにターゲットを絞っていました。
しかし、コンセプト型賃貸は、生活する人数や世帯構成などに合わせるのではなく、ある特定の趣味や嗜好を持つ入居者向けに作られた賃貸住宅なのです。
そのため、コンセプト型賃貸が対象とする市場は決して広くはありません。
しかし、特定の趣味や嗜好を持つ入居者にとっては、賃貸でありながら趣味や嗜好を存分に楽しめる理想の部屋となり、入居者の満足度を高めることができる物件となるのです。
2.コンセプト型賃貸住宅の具体例をご紹介
では、コンセプト型賃貸住宅には、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的なコンセプト型賃貸住宅の例をいくつかご紹介します。
1)デザイナーズマンション
デザイナーズマンションとは、主に建築家が設計やデザインを行ったマンションで、建物の外観だけでなく、室内の間取り、内装に使用する素材、キッチンやトイレなどの設備にもこだわり、おしゃれで個性的なスタイルを実現したものです。
コンクリート打ちっぱなしの都会的なスタイル、木の質感を生かしたナチュラルなスタイル、一面ガラス張りで開放的な部屋、螺旋階段のある部屋など、デザイナーが趣向を凝らし、一般的な賃貸とは一味違うおしゃれな空間が演出されています。
2)ガレージインマンション
自動車やバイクが趣味の人をターゲットにした物件です。
一階部分にガレージを作り、室内からガレージに停めてある愛車を眺められるような設計になっています。一般的なマンションの駐車場では、大切な車やバイクが汚れたり、傷ついたりする恐れもあります。
しかし、ガレージインマンションでは、専用のガレージが部屋のすぐ隣にあるため、そのような心配もなく、いつでも愛車のお手入れがしやすいような工夫がなされています。
3)ペット共生型マンション
ペット共生型マンションは、ペットと暮らすことを許可したマンションではなく、ペットと飼い主が快適に暮らせるようにと設計されたマンションです。
ペット専用の足洗い場や出入口、キャットタワー、ドッグランなど、ペット専用の設備が備えられています。
4)音楽愛好者・ミュージシャン向けマンション
音大生やミュージシャン活動をしている人など、部屋の中で楽器や発声の練習をしたい人や大音量で音楽を鑑賞したい人などに向けたマンションです。
一般的なマンションに比べて防音対策がしっかりとされているため、時間を気にせずに音楽活動を行うことができます。
また、中には音楽スタジオを併設しているようなマンションもあります。
3.コンセプト型賃貸が賃貸住宅の付加価値を高める理由
1)現在の賃貸住宅市場と今後の予測
少子高齢化により、日本の人口は減少傾向にあり、今後もその傾向は続くと考えられています。
一方で賃貸住宅の建設は増えており、現在は賃貸住宅の需要と供給のバランスが崩れつつあります。
そして、将来的には賃貸住宅は飽和傾向に進むと推測されています。
そのような状況下でも入居者に選ばれる賃貸住宅になるためには、他の物件と差別化を行い、入居者のニーズを満たす物件である必要があります。
2)賃貸住宅の付加価値を高め、選ばれる賃貸住宅
コンセプト型賃貸が目指す市場は、決して大きなものではありません。
しかしながら、一般的な賃貸マンションでは満足せず、趣味や嗜好を実現するための空間を求めている層にとっては、コンセプト型賃貸は魅力的な物件となります。
コンセプト型賃貸は、こだわりを持って作る建物であるため、通常のマンションを建設する場合よりも費用がかかることがほとんどです。
しかしながら、入居者のニーズを満たし、入居者の心理に寄り添う設計や設備となっていれば、ターゲットとした層からの需要は続くと考えられます。
音楽大学がある場所であれば、防音性の高い居室のニーズは高く、海沿いの街であればサーフィンを楽しむ人に特化した賃貸マンションの人気は高まるでしょう。
まずは、地域性などを考慮し、ターゲットとする入居者を明確にした「コンセプト」を打ち出し、そのコンセプトに基づいた計画を立てることが大切です。
4.まとめ
賃貸住宅の経営は、少子高齢化による人口減少や賃貸物件の供給過剰により、厳しい状況が続くと考えられています。
コンセプト型賃貸は、借り手市場のこれからの時代に即した専門性の高い賃貸住宅だとも言えます。
一般的な物件とは異なり、特定の分野にこだわる人に合わせた設計や設備を取り入れ、住む人の利便性や快適性を高める賃貸物件です。