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退去命令はやり方次第で大家が不利に!知らないと大損する強制退去の全知識

執筆者:Redia編集部 Redia編集部

賃貸経営をしていると、家賃を滞納する入居者やさまざまなトラブルを引き起こす入居者に出会ってしまうこともあります。

このような問題の多い入居者を抱えてしまうと、空室対策よりも対応が難しく、オーナーにとっては大きな悩みとなるでしょう。
トラブルの多い入居者には退去を促したいところですが、退去命令のやり方次第では、大家であるオーナー側が不利になってしまう場合もあります。

そこで今回は、大家が損をする前に知っておきたいこと、退去命令前にやっておきたいことなど、退去命令の全知識をご紹介します。

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1.強制退去とは

強制退去とは、家賃の滞納が発生した際に強制的に退去を要求する行為です。

日本では、借地借家法によって入居者の権利が保護されています。

そのため、入居者に退去命令を出すためには、法律に則った然るべき手続きを踏まなければなりません。

1)強制退去には裁判が必要

強制退去は、入居者に対して強制的に退去させる勧告を行うことで、裁判で建物明け渡し請求を行い、勝訴判決を得た場合に請求できる措置です。

裁判で建物明け渡し請求が認められる判決が下されると、強制執行が行われます。

 

強制執行とは

不動産の明け渡し請求権の実現に向けて、強制的に権利を執行する法律制度。

2)強制退去を実行できる条件とは

家賃の滞納があったからといって、すぐに強制退去を実行できるわけではありません。

強制退去を実行するためには、賃貸借契約を解除する必要があります。

 

過去の判決などから判断すると、契約解除が認められるには2つの条件が必要です。

契約解除が認められる2つの条件

・家賃の滞納が3か月以上続いていること

・貸主である大家と借主である入居者の間で信頼関係が破綻していること

 

大家との信頼関係が破綻していることが認められるケースとしては、

・長期的な家賃の滞納

・在留資格を取得していない外国人の不法滞在

・ペット禁止の物件におけるペットの飼育等の契約違反

・近隣住民とのトラブルとなる騒音や悪臭問題を繰り返している事例

・賃貸契約者以外の人を無断で入居させる又貸し

などがあります。

2.強制退去の流れ

強制退去を実行できる条件を満たした場合は、次のような流れで手続きを進めていきます。

1)口頭や文書で改善や賃料の支払いを呼びかける

強制退去の手続きを取る前に、まずは滞納している賃料の支払い、契約に違反している事項や近隣トラブルの原因の改善等を、口頭や手紙で繰り返し呼びかけ、話し合いによる解決を図ることが大切です。

 

それでも入居者が求めに応じない場合には、連帯保証人に対しても同様の呼びかけを行うことを通知しておきます。

また入居者が賃料の支払いに応じない場合は、連帯保証人に対して請求を行います。

2)内容証明郵便で賃料督促、賃貸借契約解除の書面を送付

内容証明郵便とは、郵便物がいつ、誰から誰に宛てられ、どのような内容の郵便物であったかを証明するものです。

今後、裁判に進む際には必要となる書類となります。

督促状(内容証明郵便)には、滞納している家賃の支払い期限改善すべき事項の対応期限を記載しておきます。

ここに記載した期日までに、滞納家賃の支払いや改善事項への対応が見られない場合には、賃貸契約解除の法的効果が生じます。

3)賃貸借契約解除と明渡請求訴訟

期日までに所定の対応が見られなければ、予告通り賃貸借契約の解除を行い、明渡請求の訴訟提起を行います。

賃料の滞納がある場合には、裁判において明渡請求だけでなく、滞納分の賃料の支払い請求が行われます。

 

明渡請求訴訟には以下のような書類が必要となります。

明渡請求訴訟に必要な書類

・建物の不動産登記謄本、固定資産評価額証明書

・予納郵便切手

・収入印紙

・賃料滞納や契約違反等を証明する証拠書類

・法人の場合は代表者事項証明書

裁判の前に、法的な強制力を持つ和解調停を行うことができますが、和解が成立しなかった場合には裁判による判決が下されます。

4)強制執行

明渡請求訴訟で勝訴すると、裁判所の執行官が入居者を強制的に退去させることになります。

入居者と同居している家族がいる場合は、同居人にも強制的に退去させ、入居者の家財道具一式を運び出し、空室の状態にします。

運び出された荷物は、倉庫で保管されることとなります。

また強制執行の際には、賃貸人が執行官に予納金を納めなければなりません。

予納金から執行手数料を差し引かれ、残額があれば後日返金されることとなります。

3.強制退去の注意点

強制退去を実行する際には、注意点があります。

入居者側に非があるために強制退去を実行するにも関わらず、次の2点に気を付けておかなければオーナー側に損害やリスクが生じる可能性があるのです。

1)賃貸人の実力行使は罪に問われる

貸主だからといって入居者の部屋に勝手に入ったり、入居者が不在の間に鍵を変えてしまったりすること(自力救済)はできません。

入居者が警察に通報すれば、賃貸人が罪に問われることになります。

部屋の中への立ち入りは住居侵入罪、家財などの運び出しは器物損壊罪、大声を上げたり脅したりするような行為は脅迫罪、強要罪となる可能性があります。

2)明渡請求訴訟や強制執行には費用がかかる

明渡請求訴訟には訴訟額に応じた手数料、執行官に預ける予納金(基本額として65,000円)、予納郵便切手代 約6,000円が必要です。

他にも、強制執行にかかる費用として荷物の運び出し費用、廃棄物の処分費用などが必要となります。

荷物を運び出す人件費、トラックの費用、荷物の保管にかかる費用などは、ワンルームの場合でおよそ10万円、家族が同居している場合には20~50万円程度となります。

加えて、訴訟を行うためには弁護士費用も必要です。

弁護士費用としては、相談料金、着手金、日当、成功した際の報酬金などが必要となります。

弁護士費用は、弁護士事務所によっても変わってきますが、着手金や報酬金は回収する家賃の金額に応じて高額になってきます。

4.強制退去の前にできる対策

強制退去では裁判が必要になるため、オーナーにかかる費用的負担や精神的な負担は大きくなります。

できれば強制退去を実行する前に、トラブルを解消しておきたいものです。

強制退去を回避するために事前にできることを2つご紹介します。

1)オーナー自らが入居者に事情を聴く

書面での通知だけでは、入居者にも甘えが生じることがあります。

管理会社を通さず、オーナー自らが入居者を訪問し、事情を聴いてみることをおすすめします。

顔を合わせて話をすれば、入居者もことの重大さに気が付き、家賃の支払いに応じてもらえる可能性があります。

ただし、勝手に部屋に入るなどの実力行使は決して行ってはなりません。

2)少額訴訟をする

滞納額が60万円未満であれば、少額訴訟を利用する方法もあります。

少額訴訟は、裁判を行わずに当事者同士の話し合いによってトラブルを解決することを目的としています。

原則として1回の審理で判決が言い渡され、手続きも簡便なため、オーナーにかかる負担を軽減できます。

 

家賃滞納を見過ごしてはダメ!時効があるので早めの退去命令を

家賃滞納には「時効」があります。

滞納から5年が経過すると、入居者は時効を主張することができ、滞納家賃を回収することが難しくなってしまいます。

滞納額を最小に抑えるためにも早めに行動することが大切です。

まとめ

強制退去は、家賃を長期的に滞納するなど、賃貸人と入居者の間での信頼関係が破綻していることを条件に賃貸借契約を解除し、明渡訴訟を行って、入居者を強制的に退去させる措置です。

強制退去を実行するためには、裁判にかかる費用や強制執行の費用などの費用がかかります。

訴訟に勝訴した場合であっても、強制執行の費用が膨らみ、損失が拡大する可能性もあります。

強制執行は最終的な手段であり、それまでに話し合いや和解による解決の道筋が見つけられるのであれば、その方が互いにとって痛みの少ない、最善の解決方法となります。

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