地上権・賃借権の違いとは?借地権を理解してより良い運用を
「地上権・賃借権」という単語をご存じですか?
地上権・賃借権は土地を借りて建物を建てる権利の事で、違いはありますが合わせて「借地権」と呼ばれています。
借地権を理解しておくことで不動産の知識が一層深まり、より良い不動産投資・運営が可能になるでしょう。
地上権・賃借権の違いと借地権の概要、不動産投資におけるメリット・デメリットを解説していきます。
1.地上権・賃借権の違いとは?
地上権・賃借権は共に、「借地権」という第三者に土地を借りて建物を建てる権利を指しますが、2つの権利には違いがあります。
地上権とは、他人の所有する土地において工作物または竹林を所有するために、土地を使用する事が出来る物権のこと。
賃借権とは、賃貸借契約に基づき借りた人(賃借人)が土地を使用できる債権のことで、賃借人には賃料の支払い義務があります。
地上権・賃借権は「物権」と「債権」という点が大きな違いで、
・「物権」は物に対する直接的に支配する権利、
・「債権」は特定の人に対して一定の行為を請求できる権利です。
賃借権では、借りた人が貸した人に対して「使わせてほしい」と請求する事が可能で、地上権は第三者がその土地を占拠しているときに「土地を返してほしい」と請求する事が出来ます。
地上権の方が土地に対してより強い権利を持っており、地主の承諾なく譲渡・転貸ができますが、賃借権は貸した人(賃貸人)の承諾がないと譲渡・転貸はできません。
地上権・賃借権の抵当権や登記義務等詳細な違い・使われることが多いのは?
地上権・賃借権の詳細な違いは以下の通りになります。
地上権 | 賃借権 | |
登記の義務 | あり | なし |
抵当権 | 設定可能 | 建物のみ設定可能 |
譲渡・転貸 | 地主の承諾がいらない | 地主の承諾が必要 |
担保として提供 | 可能 | 不可 |
存続期間 | 最短30年 | 20年以下
※借地借家法が適用される場合最短30年 |
性質 | 物を直接支配する絶対的な性質を有する。
|
当事者間の間で定めたことが原則として債権の内容となる。貸した人と借りた人の間のみ有効で第三者に影響は与えない。 |
地上権は、上記の通り地上権の所有者が持つ権利が圧倒的に強いため、地主にとっては不利な点が多く採用されるケースは少ないです。
ただし土地の上に橋やトンネル、地下鉄・モノレールといった工作物を使用する場合は地上権が設定されます。
市営地下鉄等自治体が地上権を設定する場合、土地の所有者に対し「地上権設定対価」を支払うケースがあります。
一般的には賃借権が採用されるケースが多く、現状では借地権のほとんどが賃借権となっています。
なお賃借権の中には賃料を支払わないで使用できる「使用貸借権」があり、有償の賃貸借と違い貸主に修繕の義務がない、借地権に含まれない等の違いがあります。
2.「借地権」を理解しよう
「借地権」は建物の所有を目的とした権利で、地上権と賃借権の2つを指します。
不動産投資や管理・運用をしていく上で「借地権」を始めとした権利関係や法律を理解せず契約を進めていくと、知らないうちに自身に不利な契約を結んでしまう可能性があります。
今回を機に「借地権」に関しても理解を深め、不動産運営に活かしておきましょう。
なお上記の通り借地権のほとんどは賃借権のため、特にオーナーで賃貸経営をしている方は以下の知識を抑えておきましょう。
借地権の基礎~目的や期間、更新について~
「借地権」の目的は「借り手の保護」であり、借り手にとって不利な特約は基本的に不可能です。
存続期間は期間の定めがある時は30年以上(30年未満であれば30年)、期間の定めがないときは30年です。
更新は「合意」「請求」「法定」による3種類があります。
合意による更新は最初の更新は20年以上、2度目以降の更新は10年以上となります。地主に請求して更新する場合は、建物がある場合に限られ初回の更新は20年、2度目以降は10年となります。
地主から「正当な事由」(土地の利用状況や地主が土地を必要とする事情等)があった際は打ち切られる可能性もあります。
法定更新も合意・請求更新と同様に最初の更新は20年以上、2度目以降の更新は10年以上で正当な事由が無い限り継続されます。
定期借地権とは?
定期借地権とは更新のない借地権のことで、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付定期借地権の3種類があります。
なお事業用定期借地権は用途が事業用に限定されているため、店舗や工場等には該当しますが個人向けの賃貸物件に対しては対象外となります。
3つの定期借地権の違いは以下の通りになります。
一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付定期借地権 | |
存続期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満(※1) | 30年以上 |
用途 | 限定しない | 事業用の建物の所有 | 限定しない |
契約の方式 | 公正証書等の書面で更新の排除を特約とする。 | 借地権設定は公正証書により契約する。 | 30年以上経過した後建物を譲渡する旨の特約を記述する。書式は制限なし。 |
契約終了後の建物利用 |
建物買取請求権(※2)は不適用。建物の利用は継続不可。 |
建物買取請求権は不適用。建物の利用は継続不可。 |
建物を譲渡する特約を実行し、建物の利用は継続不可。 |
※1 事業用定期借地権の存続期間は、「10年以上30年未満」と、「30年以上50年未満」の2通りがあります。
※2 建物買取請求権とは契約が更新されない場合、建物を時価で買い取ることを請求する権利です。
3つのケースでいずれも契約更新は無く、期間満了(建物譲渡特約付定期借地権の場合は建物の譲渡)により借地契約が終了する仕組みです。
不動産投資における借地権の物件のメリット・デメリット
不動産投資で借地権の物件を運用するメリットは、所有権を得るよりコストが低く税負担が軽くなる事です。
同程度の物件であれば6~7割程度の価格で購入できる上に、不動産取得税や固定資産税、都市計画税を支払う必要がありません。
地代を支払う必要がありますが、経費として計上することができます。
一方で借地であるため「土地を担保に融資を受けられない」というデメリットが存在します。物件の担保評価も低く、建物を建て替える、売却する時には地主の許可を得なければいけません。
地主との関係も重要となりますので、借地権の物件運用を検討する際はメリット・デメリットを考慮すると同時に地主と会ってみることをおすすめします。
3.借地権(地上権・賃借権)の知識でより良い不動産運営を
地上権・賃借権とでは地上権の方がより強い権利とされています。一方で、借地権の中においては賃借権が占める割合が高いです。
賃借権は不動産投資を行うオーナーにとって重要な知識となりますので、この記事を参考に借地権と共に覚えておきましょう。