不動産の広告で使われているのはどっち?壁芯面積と内法面積の違い
マンションの床面積には壁芯面積と内法面積という2種類の算出方法があります。
壁芯面積とは設計の場面やマンション広告で利用される事が多く、内法面積は主に不動産業界で使われ、登記の際には内法面積を記載する決まりとなっています。
壁芯面積と内法面積の具体的な違いや面積による税制優遇制度、その他火災保険等で床面積が使われる場面を解説していきます。
1.壁芯面積とは
壁芯面積とは以下の図のオレンジの部分を指し、「へきしんめんせき」または「かべしんめんせき」と呼びます。
主に建築設計の場面で利用され、壁の中心線である「芯」(柱からはみ出している線)を基準として面積を算出します。
マンションの広告やパンフレット等に記載されている面積は壁芯面積であることがほとんどで、建築基準法上で「面積」といえば壁芯面積の意味となります。
2.内法面積
内法面積(うちのりめんせき)は不動産業界で使われることが多い算出方法で、以下の図での緑の部分にあたります。実際に目で見える面積ですので、部屋の広さが重視される賃貸物件等は内法面積が基本となります。
マンション広告で壁芯面積を調べた後物件の内覧に行くと内法面積を実感する事ができます。壁芯面積よりもやや狭く感じますが、不動産として登記される面積は内法面積となります。
なお戸建て住宅は新築・中古共に壁芯面積を記載しています。
物件の情報をチェックする際の参考にしましょう。
3.壁芯面積と内法面積の差はどのくらい?
壁芯面積と内法面積の差は壁の厚みや電気・ガス・水道の使用量を計測するメーターボックス、水道・ガス等の配管スペースによって異なります。
木造の場合壁の厚みは在来工法(木造軸組構法)で120~130mm程度、RC構造では150~170mm程度となります。
内部の断熱材や壁紙を加えると300mm程度になるケースが多いですが、雪が降る地域や寒さが厳しい地域では防寒性を向上するため壁が厚くなります。
壁には断熱性や遮音性、防火性や気密性、耐震性等さまざまな役割がありますので、「楽器を弾くから遮音性の高い壁にしたい」「地震の多い地域なのでより耐震性の強い壁を」という場合にはより壁の厚みは増すでしょう。
壁の厚さは建築基準法で定められていますので、新築の住宅を建築する際は違法物件にならないよう工務店・設計事務所の専門家と相談しましょう。
おおよその目安となりますが、壁芯面積と内法面積の差は5~8%程度と言われています。
4.床面積による税制優遇に注意
不動産の税制優遇で床面積が適用の要件に含まれているケースが存在します。
住宅ローン控除や、すまい給付金、登録免許税の軽減が当てはまります。下記の表で詳しく見ていきましょう。
床面積 | 他の要件 | 控除される金額 | |
住宅ローン控除 | 50平米以上
|
自らが居住
借入期間や年収等についても要件あり |
最大400万円 |
すまい給付金
※消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度 ※中古物件の場合 |
50平米以上
|
売主が宅地建物取引業者である中古住宅等の要件あり | 住宅取得者の収入及び持分割合により決定 |
登録免許税の軽減措置 | 50平米以上 | 2021年3月31日までの暫定措置 | 売買で所有権移転登記の場合は2.0%→1.5%
※登記の理由により軽減される税率が異なる。 |
基本的に戸建住宅の場合は壁心面積、アパート・マンション等の共同住宅の場合は内法面積となります。
他に不動産取得税の軽減措置、住宅取得等資金贈与の特例、新築住宅に係る固定資産税の減額措置等がありますが不動産投資で利用される場面は少ないです。
新築や中古のマイホームを購入する予定のある方、父母や祖父母等直系の親族から贈与を受ける方、新築住宅を建てる予定のある方は床面積等の要件をクリアすることで上記の税金が軽減される可能性があります。
※参考:東京都主税局「不動産取得税の軽減措置」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/tozei/index_f.html#q21
※参考:国税庁「住宅取得等資金贈与の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
※参考:国土交通省「新築住宅に係る固定資産税の減額措置」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000021.html
5.その他に床面積が必要な場面
火災保険で床面積を記載する時は、壁芯面積と内法面積のどちらを書けばよいのでしょうか?
また物件に屋根裏・ロフト・出窓の部分がある場合、床面積に含まれるか気になる投資家の方もいらっしゃることでしょう。
火災保険と屋根裏等が床面積に含まれるかの疑問に加え、不動産広告で利用される床面積についてもご紹介していきます。
火災保険
火災保険はマンションの場合多くの保険会社で「専有面積」と記載しています。ほとんどのケースで専有面積は内法面積となっていますので、内法面積が床面積となります。
マンションの管理規約で専有部分に関する記載があれば、規約に従いましょう。
内法面積で火災保険をかけて壁芯基準であった場合は十分な保険金がおりない可能性があります。保険料も変わってきますので、火災保険を契約する時は専有部分の範囲についてしっかりと確認しておきましょう。
面積は建物登記簿謄本や建物登記済権利証、建築確認書で確認する事が出来ます。
屋根裏・ロフト・出窓はどうなる?
屋根裏とロフトは天井の高さ1.5m未満の場合床面積に含まれませんが、部屋の一部分でも高さが1.5m以上であると床面積に含まれます。
出窓は高さ1.5m以上で、出窓の下部が床と同じ高さである時に床面積に含まれます。段差がある場合は床面積に含まれません。
不動産広告は壁芯面積が多い
不動産の広告では壁芯面積での表記が多くなっています。「不動産の表示に関する公正競争規約」によると、壁芯面積と内法面積のどちらかを記載しなければいけないという明確な記載がありません。
よって「不動産会社は広告でどちらを記載しても良い」という結論になります。
少しでも物件を広く見せるため、面積が大きい壁芯面積を記載している不動産会社が多いのです。
※参考:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/h_kiyaku.pdf
6.まとめ
壁芯面積と内法面積の意味や差、違い等を理解しておくと、税制優遇や火災保険に加入する際、物件を探すときに役に立つことでしょう。
特に税制優遇は経費削減に繋がりますので覚えておきましょう。
物件を購入する際は、仲介会社に壁芯面積と内法面積の両方を聞いておくと後々役立ちます。