中古マンションを所有する上で起こりやすい土地に関するトラブルとは?
土地に関するトラブルといっても何も「土地」のみを直接扱う場合だけでなく、中古マンションを所有する上で起こりやすい土地トラブルもあります。
トラブルには様々なケースがありますが、今回は中古マンションを所有する上での土地トラブルに着目しお話します。
1.どうしてマンションの土地トラブルが起こるのか
マンションは、「分譲マンション」や「区分マンション」と呼ばれる場合もありますが、呼称からもわかる通り、複数人の所有者で101号室、102号室…と部屋(建物部分)を分割して所有しているケースが多いかと思います。
ではマンションが建っている土地(敷地)というのはどのように考えればよいのでしょうか。
答えは「土地は持分割合に基づいて共有している」ということになります。
共有
複数の人が共同で所有していること
持分
各共有者が持つ所有権の割合を指し、所有している建物部分の床面積の割合によりかわる
例えば、1,000平米の土地に総戸数10戸のマンションがあり、どの部屋も同平米数であった場合、10人の所有者が各々持分1/10の割合で土地を共有しているということになります。
不動産売買において上記のようなパターンは「このマンションの土地権利は所有権です」と説明します。
ただしここで注意する必要があるのが、土地は持分割合に基づいて「共有」している、ということです。
あくまで一つのものを複数人で共有している状態ですので、何か決め事等をする際、共有者全員の同意や判断が必要になる場合もあるのです。
また、借りた土地に建てられたマンションもあります。このようなパターンは「土地権利は借地権」と言います。
つまり、マンション土地というのは1つの土地を複数人で共有していたり、建物部分の所有者とは別の誰かの土地であったりと、権利関係が複雑になる場合があるためトラブルが生じやすいのです。
2.想定されるトラブル
借地権によるトラブル
借地権付きのマンションを売却する際は、地主から承諾を得る必要があります。
通常「譲渡承諾料(名義変更料、名義書換料ともいいます)」の支払いに代えて承諾を得るのですが、地主が承諾を認めてくれなかったり、高額の譲渡承諾料を請求される場合があります(一般的には譲渡承諾料は借地権価格の10%程度と言われています)。
借地権がついている場合、毎月地代を地主に支払う必要があります。
支払う側からすると地代が安いことは喜ばしいですが、情勢の変化等で地代の値上げを要求されることも考えられます。値上げには地主と借主双方の合意が必要です。しかし、すぐに折り合いがつかない場合も考えられます。
建物の賃貸借期間は2年更新としている場合が多いですが、土地の賃貸借期間は原則的には最短30年となっています。
比較すると、土地の賃貸借期間はかなり長くなっていることがわかります。急な都合等により地主側で土地が必要になる事態が発生することも可能性として想定されます。
正当な事由がない限り、借主は明け渡し請求に応じる必要はないですが、信頼関係の悪化という面での影響はあるのかもしれません。
敷地権化がされていないことによるトラブル
マンションには「敷地権」というものがあります。
前段で建物部分は区分所有、土地は共有しているという話をしました。
「敷地権化がされている」ということは、建物部分と建物と一体化した土地の持分割合を切り離して売却ができないという意味になります。
逆を言えば、「敷地権化されていない」ということは建物部分だけ売却したり、土地の持分のみ売却することも理論上では可能ということになります。
通常建物と土地はセットですので、多くのマンションでは敷地権化がされています。敷地権化がされていなくても、建物部分と土地の持分ともに権利を持っていれば、所有する上で大きな問題はありません。
しかし、マンションの売却を検討することになった際に、売却活動に時間がかかってしまう可能性があります。
何故なら敷地権化されていないマンションは、銀行からの評価が出づらい場合があるためです。
それはつまり、そのマンションを担保にした借入が難しくなるということです。購入を検討できる方が限られてしまうと売却活動期間の長期化につながるかもしれません。
3.法改正等による既存不適格物件
マンションに関する土地トラブルについて、併せて「既存不適格」というケースもご説明します。
マンション等の建築物は、その建築時の規定(建築基準法)に沿って建設されます。
建築当時は、この建築基準法に適合していても、その後の法改正で建築基準法に適合しなくなってしまう場合があります。
これを「既存不適格」といいます。
例えば、敷地面積に対する建築面積の制限(建蔽率)、敷地面積に対する延べ床面積の制限(容積率)が変更されたことによって既存不適格となると、マンションを建て替えする際に同規模のマンションが建てられない可能性も出てきます。
また、建物敷地は一定の幅員道路幅員に接道している必要があり、これを「接道義務」と言いますが、この接道義務をマンション建築後に満たさなくなってしまった場合は「再建築不可」の物件となってしまいます。
4.トラブルを防ぐにはどうするか
まずは、土地の権利内容を良く確認しましょう。
借地権付きのマンションの場合、地主と所有者で土地の賃貸契約書を締結しています。購入を検討する際は賃貸の期間、月額の地代、譲渡にかかる承諾料等の契約内容まで確認することが重要です。
また、共有にすることによって何か決め事等をする際は、全員の同意が必要となる場合があると説明しましたが、それはつまり全員の同意が揃わないと何も進められないということです。
不動産を相続する際に、兄弟で共有の名義にするといった場合も同様で、共有者が多くなるほど流動性には欠けてしまいます。名義を共有にするのかどうかも慎重に検討すべきです。
マンション購入における土地に関するトラブルは、頻繁に発生する話ではないかもしれませんが、万が一のことまで想定し事前に確認しておくことも大切です。