1.建築基準法とは
日本国内において、建物を建てる時にベースとなる法律「建築基準法」が制定されたのは、1950年(昭和25年)のことです。
建物を建てる際に国民同士がお互いの生命・健康・財産を守るため、建築基準法では最低限の基準が規定されています。
この建築基準法は、都市計画法や宅地造成等規制法の他、消防法といった法律とも関係していて、制限を受けます。建築基準法の規制対象となるのは建築物、その構造や敷地、設備、さらに用途までが範囲です。
「建築確認」から「完了検査」、そして違法ケースへの「是正勧告」も含め、言わば建物を建てる際のすべての工程について、規定されているのです。
建築基準法の構成は以下2つの規定から成り立っています。
- 建物に関する安全性・構造・防災・衛生の基準を定める「単体規定」
- 都市環境に関する防災基準などを定める「集団規定」
2.建築基準法「耐震基準」の新旧
制定から31年後の1981年(昭和56年)には建築基準法が改正され、耐震基準が新しくなりました。
これは日本でたびたび大地震が発生し、その被害が甚大なものだったという背景があります。特に大きな被害を受けた宮城県沖地震(1978年)では、ブロック塀・門柱・家屋の倒壊により下敷きとなって死亡した人は数十名に及びました。
そこで、建物の耐震性を改善することを目的として新耐震基準が設けられることになったのです。
法改正に伴い、新しく定められた耐震基準は「新耐震基準」、それ以前は「旧耐震基準」と呼ばれています。
なお、建築基準法改正後は、「新耐震基準」に則って建物を建設しなければいけません。
3.旧耐震基準と新耐震基準の違い
では、旧耐震基準と、法改正後の新耐震基準との違いについて、具体的に見ていきましょう。
耐震性能
新耐震基準では、「保有水平耐力が、必要とされる保有水平耐力よりも大きいこと」が規定されています。
これは、最大震度5強の地震時では損傷無く、震度6強~7の大規模地震では建物の倒壊が発生しない耐性性能ということになります。
鉄筋コンクリートなどの建材を使うだけでなく衝撃を受け流したり吸収したりすることで、倒れにくさを実現するような技術も向上しています。
住宅ローン減税の適用
新耐震基準では、住宅ローンに関する税制も規定されることになりました。
新築のみならず中古住宅の取得や、リフォームする際に住宅ローンを組んだ場合、年末のローン残高に対しその1%分が所得税・住民税より控除されます。
この住宅ローン減税は、10年間に限り毎年控除を受けることが可能でしたが、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に入居した場合には、控除期間が10年から3年間延長され、13年になります。
この住宅ローン減税を受けられる条件は、以下のようになっています。
- 引渡しから半年以内の入居、床面積50平米以上
- 事務所兼用の場合は居住部分が床面積の1/2以上
- 住宅ローン返済期間10年以上(令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に入居した場合は13年以上)
- 所得合計金額3,000万円以下
- 新耐震基準を満たす建物であること(築年数に制限無し)
新耐震基準に適合しているかどうかを証明するためには「耐震基準適合証明書」が必要です。
4.耐震基準の確認方法
新耐震基準をクリアしている物件かどうかは、「建築確認日」を見ることで判断できます。
建物の着工前には、必ず法令に沿っているかどうかの審査を必ず受ける必要があります。そこで審査に通り建築確認がなされると、無事着工です。
新耐震基準が施行されたのは1981年6月1日ですので、「建築確認日が1981年6月1日以降」の物件であれば、新耐震基準を満たしていると言えます。
ここで思い出していただきたいのが、「建築基準法では最低限の基準が規定されている」ということ。耐震性についての上限は設定されていませんので、実際には旧耐震時代の建築物でも新耐震基準を満たす場合があります。
例えば、壁式構造の低層マンションでは、分厚い壁と平面的な建物の形により高い耐震性を持ち、結果的に新耐震基準を満たしている場合も多いです。
このようなケースでは、あらためて専門家による耐震診断を受けることで、耐震基準適合証明書を発行してもらえます。
このような物件に出会った場合に備えて、建築基準法の新耐震基準について少しでも知識を持っておくとよいでしょう。
5.まとめ
建築基準法があるおかげで、安心・安全な住宅に住みむことができています。また、不動産投資で中古物件を購入する、居住用に中古住宅を購入するといった際には、後悔したくないもの。
そのためにも、建築基準法についての基礎知識や、旧耐震・新耐震の違いについて知っておきましょう。