「生産緑地の2022年問題」で東京都の不動産価格が下落?生産緑地を徹底解説!

「生産緑地の2022年問題」をご存知でしょうか?
1992年に法律の施行によって一斉に指定された「生産緑地」が2022年に解除されます。
その結果、多くの土地が売却されて市場の需給バランスが崩壊し不動産の価格が下落するのではないか、と指摘されています。
東京都は生産緑地が全体の約4割を占めており、不動産業界では2022年以降の地価の行方が注目されています。
生産緑地とは一体どんな土地で、なぜ2022年に売却されてしまうのでしょうか?東京都の不動産価格は本当に下落してしまうのでしょうか?
この記事では、生産緑地の特徴とメリット・デメリット、2022年問題の東京都への影響について解説していきます。
1.生産緑地とは
生産緑地とは1992年に制定された「生産緑地法」により定められた都市部にある農地を指します。
生産緑地として認められた際には、一定の建築物を許可制にして規制することで保護されており、税制上も優遇されています。
基本的に30年間農地として管理することが義務づけられ、住宅などを建築することはできません。
生産緑地法第3条において、生産緑地の要件は以下の通りに定められています。
生産緑地とは
- 良好な生活環境の確保に相当の効果があり、公共施設等の敷地に供する用地として適している
- 面積が500㎡以上※市区町村の条例により300㎡以上に引下げ可能
- 農林業の継続が可能な条件を備えている
国土交通省の「2021年度版 土地白書」によると2019年度の生産緑地は12,497ha(前年比0.7%増)と微増しています。
生産緑地以外の市街化区域内農地は10,430ha(前年比4.3%減)と減少傾向です。
なお東京都の2020年における生産緑地地区は3,020.45haであり、全体の約4割を占めています。
2.生産緑地の特徴やメリット
生産緑地の特徴やメリットは主に以下の3つとなります。
-
- 農業だけではなく、直売所やレストランも営業可能
- 固定資産税が軽減する
- 相続税・贈与税の猶予措置がある
1)農業だけではなく、直売所やレストランも営業可能
生産緑地は基本的に農業を行う土地です。
しかし法改正により、生産緑地地区内においては以下の施設も設置可能となりました。
・農作物等加工施設
・農作物等直売所
・農家レストランの設置 など
2)固定資産税が軽減する
固定資産税を算定する際、「住宅用地(主に住宅などを建てる土地)」、と「農地」では評価が異なります。
多くの場合は農地の方が低く評価されるため、固定資産税の負担は軽減します。
生産緑地は「農地」としてみなされ宅地より固定資産税が少なくなる傾向があります。
3)相続税・贈与税の猶予措置がある
農地を相続した場合には、相続人が営農を継続するための負担軽減を目的として、一定の要件を満たした場合に相続税が猶予されます。
〈一定の要件〉
・相続又は遺贈により取得した農地が引き続き農業のために使用される際に、
・本来の相続税額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税の納税が猶予され、
・相続人が亡くなった場合等には猶予税額が免除される
3.生産緑地のデメリット
基本的に30年間、農地を管理する義務があります。
管理ができていないとみなされた場合には指定が解除され、先に挙げた税金の優遇措置が受けられなくなってしまいます。
建物は農産物の集荷所、処理・貯蔵のための施設など農業用の施設に限られています。
4.「生産緑地の2022年問題」で東京都の不動産価格に影響が?
1)生産緑地の2022年問題とは
生産緑地法は1992年に制定されたため、1992年に生産緑地として指定されてから30年が経過した2022年には指定が解除されてしまいます。
生産緑地地区のうち1992年に指定された土地は、全体の約8割の面積となっています。
さらに東京・大阪・名古屋の三大都市圏では、市街化区域内における農地の約5割が生産緑地として指定されています。
2022年の指定日を迎え生産緑地の指定が解除された土地は、固定資産税の軽減措置の対象外となります。
所有者の負担は大きくなるので、売却を検討する所有者が増えると予想されます。
生産緑地であった土地は売却され市場は供給過多となり、その結果地価が下落するのではないかと言われています。
上記の流れで懸念されるのが「生産緑地の2022年問題」です。
2)東京都の不動産市場に与える影響とは?
生産緑地の指定解除により、東京都の不動産市場に与える影響はどの程度なのでしょうか?
2020年時点で、東京都で生産緑地地区として指定されているエリアは区部で練馬区や世田谷区など2,026件(約401ha)、市部は八王子市、昭島市など9,015件(約2,620ha)に及びます。
合計11,041件(3,021ha)が生産緑地として指定されています。
農林水産省のホームページによると、東京都の総土地面積は219,090haであり、東京の約7分の1の土地が生産緑地として売却される可能性があります。
上記のような事態を受け、東京都では2022年問題に関する取り組みを行っています。
また生産緑地の見解として、2022年1月29日・2022年1月31日の2日限定で、セミナーを開催する事が決定しました。
生産緑地後の経済状況や「マンション投資をしても値段がさがらないか不安だな…」と思っている方こそ、参加費は無料になります。
これから不動産投資を行う方こそ、生産緑地の事を正しく知って未来予想に役に立てて行きましょう。
ご興味のある方はぜひご参加ください。
1月16日セミナー映像見逃し配信:岸博幸氏登壇「令和4年の日本経済と不動産投資を語る ~インフレ・生産緑地・FIREについて~」
5.生産緑地・2022問題に対する東京都の取り組みは?
東京都では2022年問題に対し、生産緑地買取・活用支援事業を行っています。
生産緑地を農地利用として購入する場合に、その費用を基金から一部補助するものです。
2017年度の税制改正時には、買取り申出可能時期を10年延長できる「特定生産緑地制度」を創設しました。
生産緑地の指定から30年が経過する前に「特定生産緑地」としての指定を受けます。
そうすることで10年間、期限を延期することができます。
期限延長以降は10年ごとに更新が可能です。
特定生産緑地の最大のメリットは、生産緑地と同様に固定資産税の軽減措置、相続税の免除や納税猶予がある点です。
相続税は終身にわたる営農で免除されます。
また農地を貸して営農を行っても、一定の要件を満たした場合には相続税が猶予されることもあります。
特定生産緑地への移行や支援制度の活用を促進することで、生産緑地は維持され地価への影響は少なくなると考えられます。
まとめ
生産緑地の特徴やメリット・デメリット、2022年問題と東京都への影響について解説してきました。
特定生産緑地制度と東京都の支援制度により生産緑地が維持された場合、市場への影響は最小限に抑えられる可能性があります。
ただし指定が解除され土地を手放す方が増えた場合、地価が下落する可能性が高くなります。
この記事を参考に、生産緑地の2022年問題を知り今後の賃貸経営に活かしていきましょう。