今、木造マンションの中高層化が熱いワケ
高層マンションは、鉄筋コンクリート造(RC造)であるのが一般的です。
しかし、近年、木造の中高層マンションの建築に、大手ハウスメーカーをはじめとした住宅会社が次々に着手しているのをご存じでしょうか。
そこで今回は、木造の中高層マンションについて、そのメリットなどを解説していきたいと思います。
1.なぜ木造の中高層マンションが増えている?
木造の中高層マンションが増えているのには、主に3つの理由が考えられます。
1)国の方針により建築しやすくなった
2010年、主に公共建築物に木材の利用を促進する「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。
2020年には法改正がなされ、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と名前が変わり、公共建築物だけでなく、民間建築物を含む一般建築物にも木材の利用が促進されるようになったのです。
国が木材の利用を進めていることもあり、各ゼネコンや住宅会社が木造の中高層マンションやオフィスビルなどの建築に乗り出しています。
2)建築基準法が改正された
建築基準法では、防火地域に大規模な建築物を建てる際、一定の場合は耐火構造にする必要があります。
耐火構造とは
火災があった時に、火災終了まで建物の倒壊や延焼を防ぐ耐火性能のある構造のこと。
上記のケースでは、5階建て以上の場合、2時間耐えうる構造が求められる。
近年の建築基準法の改正により、耐火構造の基準を満たしていれば木造でも「耐火構造を備えた建物」として認められるようになり、木造の中高層マンションの建築が可能となりました。
3)技術の向上により、木造建築物の耐火性や耐震性が上昇した
木造の建築物といえば、これまでは、「燃えやすく火災に弱い」、「地震の際倒壊しやすい」、というイメージでした。
しかし、耐火性のある木材の開発が進み、建築基準法の規定をクリアする木材が出てきました。
また、耐火性と共に耐震性に関しても、耐震基準を満たした木材の壁などが開発され、木造でも安全な中高層マンションを建築出来るようになったのです。
2.木造中高層マンションのメリットは?
木造中高層マンションには、鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションにはない、以下のようなメリットがあります。
1)建築費が安くなる
木材は、鉄筋コンクリートよりも軽いため、基礎工事にも労力がかからなくなるので、建築費用が安くなります。
2)ランニングコストが少なくて済む
木材は、鉄筋コンクリートと比べ、熱伝導率が低く、断熱性に優れています。
そのため、冬は室内が暖かく、夏は涼しくなり、光熱費を抑えることにつながります。
3)木造にしか出せない暖かみや温もりがある
木は、日本人にとって馴染み深い存在であり、木材には鉄筋コンクリートにはない素材の暖かみ、そして温もりがあります。
視覚的にはもちろん、その香りにもリラックス効果があり、落ち着いて安らげる空間になるでしょう。
4)林業の活性化になる
近年、国産の木材は利用量が減り、有効活用されているとは言えません。
もし、木造の中高層マンションの建築が盛んになれば、林業が活性化し、森林の荒廃を防ぐことにもなるでしょう。
3.日本で建築された主な木造中高層マンション
日本で建築された主な木造中高層マンションを紹介します。
1)yeni ev (イニエ)南笹口
新潟市にある日本初の木造5階建てマンション。総戸数15戸。
山形県の住宅メーカーである株式会社シェルターが開発した、耐火性に優れた木質耐火部材 「COOL WOOD(クールウッド) 」を使用して建築されました。
2018年3月竣工。
2)プラウド神田川駿河台
野村不動産が手掛けた、日本初の木質系構造部材を使った高層分譲マンション 。
柱や壁に国産の木材を使用しています。
地上14階建て、総戸数36戸で、11階まではコンクリートに木材を接着している、いわば木造ハイブリッド住宅です。
12階~14階は木材の使用部分がより多くなり、木材をメインとした作りになっています。
2021年2月竣工。
3)MOCXION (モクシオン)
東京都稲城市にある、三井ホームによる日本最大級の木造賃貸マンション 。
一階のみ鉄筋コンクリート造(RC造)で、2階~5階が木造の、5階建てです。
分譲はしておらず、賃貸のみで、家賃も周辺の相場より高めですが、申し込みが殺到しているようです。
2021年11月竣工。
まとめ
日本では、現在木造の中高層マンションの建築が進んでいます。
近年まで、RC造でなければ中高層マンションの建築はほぼ不可能でしたが、国の方針や建築基準法の改正、そして木造建築の技術の発展により建築可能となりました。
その数はまだ少ないですが、今後増加の一途を辿ることが予想されます。
不動産投資を考えている方にとっても、木造中高層マンションへの投資が一般的となる時代が来る可能性も十分ありえますし、各住宅会社やゼネコンによる木造マンション建築の動向には常に注目しておきましょう。