家賃債務保証会社とは?登録制度や仕組みについて解説
近年、賃貸借契約を結ぶ際、家賃債務保証会社を利用するケースが増えています。
家賃債務保証会社とは、その名前の通り、入居者が払えなくなった家賃を保証してくれる会社のことです。
しかし、利用者の増加に伴い、 生活相談窓口には、家賃債務保証会社から強引な取り立てを受けている等のトラブルについての相談が多数寄せられているのが現状です。
このような背景を重く見て、家賃債務保証業者登録制度が創設されました。
今回は、家賃債務保証会社の制度や仕組み、新設された家賃債務保証業者登録制度について詳しく解説していきます。
1.家賃債務保証会社とは
家賃債務保証会社とは、部屋を借りたものの諸事情により家賃が払えなくなった時に、滞納した家賃を立て替えて支払いしてくれる会社のことです。
一昔前は、賃貸借契約を結ぶ際に借主は必ず連帯保証人をたてなければなりませんでした。
しかし、連帯保証人という非常に重い責任を負ってくれる人は、そうそう見つかりません。
そのため保証人になってくれる人は、だいたいは近しい親族に限られてきますが、家庭の事情によっては親が連帯保証人になってくれないというケースもあるでしょう。
連帯保証人が見つからない人でも、滞納した場合の家賃を貸主に払ってくれる家賃債務保証会社を利用すれば部屋が借りられるため、近年利用者が増えているのです。
ただし、連帯保証人と、家賃債務保証会社の利用の両方を満たしていないと部屋を貸してくれない不動産会社もあるので注意してください。
また、家賃債務保証会社を利用するにあたり、主に入居者の支払い能力を調査する審査があり、審査に通らない可能性もあります。
2.家賃債務保証会社の仕組みや相場は?
家賃債務保証会社を利用する際、入居者は家賃に基づいた保証料を支払います。
家賃債務保証会社によっても違いますが、保証料の相場は、一般的には初年度で家賃の0.5~1カ月分程度、それ以降は1年ごとの更新で年1~2万円程度です。
「保証料を払うことで、家賃が払えなかった時に立て替えもしてくれるし、保証人の代わりにもなってくれるのだから、家賃債務保証会社は賃借人のためにある仕組みだ」、確かにそれは間違いではありません。
しかし、賃借人が家賃を払えない、そうなった時、いちばん困るのは誰かというと貸主の方なのです。慈善事業ではなく賃貸経営なので、家賃という収入が入らなくなった時に、貸主は誰よりも損害を受けます。
ですから、家賃債務保証会社は借主よりも貸主のために存在している、という側面が大きいのです。
3.家賃債務保証業者登録制度の創設
家賃債務保証会社に関して、国土交通省は平成29年10月、「一定の基準を満たしている家賃債務保証会社は、国土交通大臣の登録を受けることが出来る」という任意登録制度を設けました。
なぜこのような制度が出来たかというと、まず、家賃債務保証会社の特徴として、誰の許可も認定もいらずに設立出来るということが挙げられます。
これは登録制度が出来てからも変わりません。
ですから、中にはすぐ倒産してしまう保証会社もありますし、立て替えた家賃の取り立てを、非常に強引な手段で行う悪質な保証会社も少なくありません。
生活相談窓口にも、家賃債務保証会社に関する相談が多数寄せられるようになったため、トラブルを防止するための策として、一定の基準を満たした家賃債務保証会社の登録制度を設けたのです。
家賃債務保証業者の主な登録基準
・安定した業務を行うための純資産額が1,000万円以上あること
・家賃債務保証の実施に関する法令を遵守するための研修などの制度があること
・相談や苦情に応じる体制が整っていること
・暴力団員の関与がないこと
・肩代わりした家賃の請求方法が適切であること
・家賃債務保証業務に従事していた経験がある者がいること
※出典:国土交通省「家賃債務保証業者の登録制度の概要」
などがあります。
申請が通ると、「国土交通大臣の登録を受けた家賃債務保証業者」としてインターネット上で公開され、登録を受けている会社は、信頼に値する会社であるという証明になります。
4.家賃債務保証会社は誰が選べる?
基本的に家賃債務保証会社を選ぶのは貸主もしくは仲介業者や管理業者です。
そのため、借主は、貸主もしくは管理会社側が提携している家賃債務保証会社と契約を結ぶことになります。
借主から「家賃債務保証会社を自分で選びたい」と交渉を持ち掛けられた場合は、上記の理由で断ることができます。
ただし、借主が保証会社を選ぶこともできるので、頭ごなしに選択を否定すると交渉が決裂する恐れもあります。
まずは借主の相談に乗ってみるのが良いでしょう。
まとめ
家賃債務保証会社と契約すれば、連帯保証人になってくれる人が見つからなくても部屋を借りることが出来るので、利用者が増えていますが、中には悪質な保証会社も存在し、トラブルも多いです。
そこで、国土交通省により、家賃債務保証業者登録制度が創設され、一定の基準を満たしている業者が登録を受けられるようにしました。
国土交通大臣の登録を受けた家賃債務保証業者であるかどうかは、保証会社の良し悪しを見分ける大きな指針となるため、可能ならば登録を受けた家賃債務保証会社を選ぶようにしましょう。