ヤドカリ投資で失敗しない不動産選び!成功事例つきで解説
「ヤドカリ投資」という言葉をご存じですか?ヤドカリと言えば、貝殻を背負って生活する海辺の生き物です。
このヤドカリに名前を借りたヤドカリ投資は、不動産投資初心者におすすめの投資方法です。
では、ヤドカリ投資とはどのような投資なのでしょうか。
今回は、ヤドカリ投資の概要とヤドカリ投資でマンションを購入する4つのメリットについてご紹介します。
1.ヤドカリ投資とは
ヤドカリ投資とは
ヤドカリが成長に合わせて家である貝殻を変えるように、住まいの引越しを繰り返しながら収益を得ていく投資方法。
ヤドカリ投資には、所有しているマンションを賃貸に出して賃貸収入を得るパターンと売却して売却益を得るパターンの2つがあります。
1)所有マンションを賃貸に出して家賃収入を得るパターン
賃貸に出す場合は、自宅マンションの住宅ローン完済後に、それまで住んでいたマンションを賃貸に出して家賃収入を得ます。
自身は、ローンを組んで新しいマンションに住むケース、あるいは別の賃貸住宅に住むケースが想定されます。
2)所有マンションを売却して利益を得るパターン
売却する場合は、物件の価値が上がったタイミングなどで売りに出し、売却益を得ます。
売却する方法では、売却益をローンの返済に充てることができるため、住宅ローンが残っていても問題ありません。
このように、ヤドカリ投資は自宅を投資物件として扱う投資です。
2.ヤドカリ投資のメリット
自宅を投資の対象とするヤドカリ投資には、次のようなメリットがあります。
1)住宅ローンが使える
不動産投資用の物件を購入する場合には、住宅ローンよりも金利の高い不動産投資ローンを利用しなければなりません。
しかし、ヤドカリ投資は自分が住むマンションを購入するために金利の低い住宅ローンを利用できます。
そのため、ヤドカリ投資では、一般的な不動産投資に比べて有利な条件で融資を受けることが可能となります。
また、金利面だけでなく、住宅ローンは「住宅ローン控除」が適用になるという大きなメリットも。
住宅ローン控除とは、最長13年間にわたり、年末のローン残高の最大0.7%が所得税や一部住民税から控除されるというものです。
たとえば、年末のローン残債が3,000万円の場合、その年の所得税と一部住民税から最大21万円が控除されます。
ただし、住宅ローン控除には、物件の築年数や面積、借り入れる人の収入などの要件が設けられているためご注意ください。
住宅ローン控除の適用要件については、後述で詳しく解説します。
2)自分が住める(家賃を節約できる)
自宅マンションを投資の対象とするため、投資を始める前はマンションを自分の住居として使用しなければなりません。
賃貸マンションに住みながら不動産投資を行う場合は、投資用マンションのローンを返済しながら自宅の家賃を支払う必要があります。
しかし、ヤドカリ投資は自分が住むためのマンションを購入し、自宅のローン返済をしていくため、家賃を支払う必要がありません。
毎月家賃を支払っても何も手元に残るわけではありませんが、ヤドカリ投資の場合は、ローンを完済すればマンションを資産として手元に残すことができます。
自分が住めること、家賃の支払いが不要であることもヤドカリ投資のメリットです。
3)空室がない
賃貸経営を行う不動産投資では、空室期間は賃料収入が途絶えて収益が下がってしまいます。
最悪の場合には、自己資金からマンションのローン返済額を支払わなければならない事態となります。
しかし、売却を繰り返すヤドカリ投資では、投資対象は自分が住むマンションであるため、空室期間が発生しません。
空室がないこともヤドカリ投資の魅力です。
4)借金がなくなったタイミングで貸し出しをするので、リスクが低い
自宅マンションを賃貸に出すパターンのヤドカリ投資では、住宅ローンを完済した後に貸し出しを始めます。
そのため借金を背負うことなく賃貸経営を行うことができます。
万が一、空室が発生した場合でもローンの返済が必要ないため、ヤドカリ投資はリスクを抑えた投資を行うことができます。
また、将来的に貸し出す事を目的としている場合は管理組合の役員になり、財務状況の改善施策を自ら推進する事で、資産価値の高い物件にする事も可能になるでしょう。
5)団体信用生命保険(団信)に加入し続けられる
団信とは、ローンの債務者が加入する保険です。
債務者に万一のことがった場合には、団信により、その後の債務の返済が免除されます。
住宅ローンを借りて、完済して……を繰り返すヤドカリ投資では、常に団信に加入し続けられるため、生命保険代わりとすることもできるでしょう。
3.ヤドカリ投資でよくある失敗と対策
ヤドカリ投資はメリットばかりの投資法のように感じますが、次のような失敗例もあります。
しかし、あらかじめ失敗例を熟知しておけば、対策を講じることはできます。
1)物件が高すぎて、なかなかローンが完済できない
ヤドカリ投資は、住宅ローンの完済後に賃貸物件として転用することを前提とした投資です。
高額すぎるマンションを取得すると借入金額も多額に上るため、ローンの返済に時間がかかってしまい、なかなか投資を始められないことにもなりかねません。
ローンの返済に長時間かかるようだと、その分、運用期間および得られる収益は少なくなってしまうでしょう。
したがって、ヤドカリ投資では高額すぎるマンションは不向きだと言えます。
とはいえ、年収によっても「高額」の金額は異なるでしょう。
物件種別にもよりますが、2021年度は年収の6〜7倍ほどの金額の融資を受ける人が多かったようです。
できるだけ早く完済し、ヤドカリ投資を始めるのであれば、取得金額は年収の5倍ほどに抑えたほうがいいでしょう。
2)資産拡大に時間がかかってしまった
ヤドカリ投資は、自宅マンションを住み替えながら資産を形成していく投資方法です。
資産を拡大するフローは、まず自宅マンションを取得し、ローンを完済。その後、別のマンションに住み替えると同時にこれまで住んでいたマンションを賃貸に出すというものです。
物件の数を増やしていくには、相応の時間がかかります。
1つ目のマンションのローンを完済したタイミング、あるいは資産価値が上がって売ったお金で一括返済できるタイミングでなければ物件を増やすことはできないため、高額すぎず、なおかつ資産価値の上昇が見込める物件かを見定めましょう。
3)取得費に経費が使えなかった
投資用物件の取得にかかる諸費用や税金、リフォーム費用は、経費計上できます。ただし、これは収益物件として購入した物件に限られます。
ヤドカリ投資の場合、購入時点では自己居住用物件として不動産を購入するため、取得にかかった費用は経費にできません。
従って、取得時はできる限り出費を抑える工夫をしましょう。出費が抑えられる工夫とは、次のようなものを指します。
- 取得時にリフォームや修繕しない
- 自分で登記する
- 仲介手数料の安い不動産会社に仲介してもらう
4)購入する物件に制限が出る
住宅ローン控除の対象となる物件は、50㎡以上の床面積であることが求められます(収入1,000万円以下の年に限り40㎡以上50㎡未満の不動産も対象になる)。
そのため、所得税の優遇措置を受けられる住宅ローン減税を利用するためには、コンパクトマンションやワンルームマンションなど、賃貸物件として需要が高い広さの物件を購入できないなどの制限が発生します。
参照元:https://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/requirement.html
5)売却益が出そうな物件だったのに家族の反対で売れなかった
所有者個人の判断だけで売却できない点も、ヤドカリ投資のデメリットです。
不動産相場が値上がりし、売却益が出そうな物件であっても、同居する家族がそのマンションを気に入っている場合など転居を希望しないときには、家族の反対を押し切ってまで自宅マンションを売却することは難しいでしょう。
6)簡単に引っ越しができなくなった
ヤドカリ投資は、住宅ローンの完済を前提とした投資です。
基本的には完済するまで住み続け、その後に転居して投資を始めるという流れになります。
しかし、転勤や子どもの進学、親の介護などにより、ローンの完済を待たずして転居を余儀なくされることもあるはずです。
こういった状況に直面した場合、転居しないという選択が生活に支障を与える可能性もあります。
そこでおすすめなのが、自身は転居し、家を保有しながら第三者に貸し出せる「リロケーション」です。
リロケーションは、主に転勤中に空き家になる自宅を活用する手段として利用されますが、家を貸し出す理由は転職や進学、介護であっても問題ありません。
リロケーションの詳細については、以下の記事をご参照ください。
【転勤族必読】リロケーションとは?留守宅を貸して稼ぐポイントと注意点を解説
4.ヤドカリ投資で失敗しない物件の選び方
冒頭で述べたどおり、ヤドカリ投資は次の2つの手法に大別されます。
- 所有マンションを賃貸に出して家賃収入を得るパターン
- 所有マンションを売却して利益を得るパターン
上記で紹介した失敗事例を踏まえると、ヤドカリ投資で成功する可能性が高いのは後者の「売却して利益を得るパターン」であるといえるでしょう。
ローンの完済を待って賃貸住宅に転用していくとなると、数年、あるいは数十年ごとに1つずつしか収益物件を増やすことができません。
また、将来、貸すことを見越して物件を選ぶとなると、住宅ローン控除の適用外だったり、簡単に転居できなくなったりすることにもつながりかねません。
とはいえ、売却益を得ることは容易ではありません。ここからは、売却益の出やすい物件を見極めるためのポイントと成功事例を紹介します。
戸建よりマンション
キャピタルゲインが出やすいのは、戸建よりマンションです。
マンションは戸建と比べると交通利便性、生活利便性、流動性、いずれも高く、建物の耐用年数が高いことから、売却益が出やすいものと考えられます。
2)新築マンションより中古マンション
マンションの中でも、キャピタルゲイン狙いで購入するなら中古マンションがおすすめです。
新築マンションは、販売価格に分譲会社の利益や新築というプレミアが乗せられていることから、相場と比べると割高で販売されています。
新築マンションは、中古になった途端に2割前後、価値が下落するともいわれているため、売却益が出しにくいといえるでしょう。
3)ブランドマンション・タワーマンション・ビッグコミュニティマンション
順位 | マンション名 | 高騰率 | 2022年60㎡換算価格 | 所在地 | 築年 | 地上階 | 総戸数 |
1 | シティタワー麻布十番 | 38.59% | 207,213,596円 | 港区三田 | 2009年 | 38階 | 502戸 |
2 | パークタワー上野池之端 | 29.79% | 110,770,801円 | 台東区池之端 | 2010年 | 30階 | 175戸 |
3 | シティハウス世田谷桜丘 | 22.62% | 63,587,308円 | 世田谷区桜丘 | 2008年 | 8階 | 112戸 |
4 | プラウドシティ府中ブライトコート | 22.03% | 45,368,939円 | 府中市本町 | 2008年 | 8階 | 224戸 |
5 | プラウドシティ大泉学園 | 21.30% | 46,966,414円 | 練馬区東大泉 | 2005年 | 13階 | 403戸 |
6 | パークホームズ杉並善福寺川緑地 | 20.90% | 60,365,682円 | 杉並区成田東 | 2015年 | 3階 | 80戸 |
7 | ブリリアエルシオ萩山 | 20.68% | 31,668,209円 | 東村山市萩山町 | 2009年 | 11階 | 184戸 |
8 | パークタワーグランスカイ | 20.12% | 103,717,112円 | 品川区東五反田 | 2010年 | 44階 | 736戸 |
9 | ザ・パークハウス西新宿タワー60 | 19.86% | 103,932,584円 | 新宿区西新宿 | 2017年 | 60階 | 954戸 |
10 | ザ・パークハウス麻布外苑西通り | 19.39% | 121,242,877円 | 港区西麻布 | 2018年 | 7階 | 73戸 |
11 | プラウドタワー千代田富士見 | 18.26% | 145,289,493円 | 千代田区富士見 | 2009年 | 38階 | 423戸 |
12 | シティタワー有明 | 18.16% | 66,326,578円 | 江東区有明 | 2009年 | 33階 | 483戸 |
13 | パークタワー亀戸ステーションアリーナ | 17.98% | 54,181,967円 | 江東区亀戸 | 2003年 | 20階 | 100戸 |
14 | プラウド大森鹿島 | 17.63% | 63,798,677円 | 品川区大井 | 2007年 | 5階 | 35戸 |
15 | シティタワー高輪 | 17.62% | 113,311,859円 | 港区高輪 | 2004年 | 35階 | 365戸 |
(出典:マンションリサーチプレスリリース)
上記は、2021年から2022年にかけて価値が上がったブランドマンションの中でも、東京都で高騰率が高かったマンションTOP15です。
すべてのマンションに共通しているわけではありませんが、タワー・ブランド・大規模の比率は非常に高いことがわかります。
これらの特徴のあるマンションは、取得費も高額ですが、高騰率も大きいため、うまくヤドカリ投資で住み替えていけば、大きな利益が得られるでしょう。
売却時にローンが残っていたとしても、売却益が得られる金額で売却できれば、ローンを完済したとしても手残りがあります。
4)キャピタルゲイン狙いのヤドカリ投資で成功した事例
東京都内の一等地にある中古のブランドマンションを自己居住用として購入したAさん。
数年住んだ後、家族構成の変化やライフスタイルの変動を受けて、その物件を賃貸に出し、さらには売却益を得ることに成功しました。
Aさんは、東京都内の繁華街からアクセスの良い場所に位置するブランドマンションの中古物件を購入。
購入の動機は、職場へのアクセスの利便性と、再開発が進行中のこのエリアの将来性を見込んだものでした。
数年後、Aさんの家族構成やライフスタイルが変わったことから、物件を賃貸に出すことを決意。
中古物件としての経年劣化や、新しい入居者へのアピールを考慮し、部分的なリフォームを実施しました。これにより、他の同じマンションの物件よりも一段高い賃料設定が可能となりました。
エリアの開発が進行し、物件価値がさらに上昇。Aさんはこのタイミングを見計らって物件を売却。
賃貸に出したときのリフォーム歴も奏功し、購入価格よりも高い価格での売却に成功し、売却益を得ることができました。
まとめ:ヤドカリ投資から不動産投資を始めた人は多い!まずは自宅購入も検討してみては?
ヤドカリ投資は、ヤドカリのように住み替えを繰り返しながら資産を形成していく不動産投資の方法です。
不動産投資ローンに比べて金利が安い住宅ローンを利用することができ、空室期間が発生しないなど、リスクを抑えた投資を実現します。
ヤドカリ投資は、自宅を貸す方法、自宅を売却する方法に大別されますが、自己居住を目的にした物件購入からスタートし、その後のライフスタイルの変化に応じて、賃貸を経て売却という流れを取ることことも可能です。
賃貸を挟むにしても挟まないにしても、ヤドカリ投資は、結果的にキャピタルゲインを狙っていくほうが最終的に手元に残るお金は多く、失敗しづらいといえるでしょう。