マンション管理費の時効は何年?民法改正をおさらい
2020年に民法の改正があったことをご存じでしょうか?
これにより、マンション管理費の消滅時効についての考え方や、修繕一時金の消滅時効に関して変化する部分が出てきたので、不動産を所有するオーナーなら是非知っておくべきでしょう。
そこで今回は、マンション管理費や修繕積立金の消滅時効について、法改正部分を交えながら詳しく解説していきたいと思います。
1.マンション管理費の消滅時効は何年?
消滅時効とは
権利を行使せずに一定期間が経過した場合、その権利を消滅させる制度のこと。
これまでは、マンション管理費は「定期給付債権」として、5年の短期消滅時効が適用されていましたが、2020年の民法改正により「定期給付債権」は、一般の債権と同様に扱うことになりました。
管理費を定期給付債権とし、短期消滅時効が適用されていた時は、債権者が権利を行使することができる時から5年間行使しないと、定期給付債権は時効により消滅する定めになっていました。
具体的に説明すると、管理組合が5年の間に裁判を起こすなどして管理費の請求をしなかった場合、5年前の管理費から、順次、時効によって消滅し、滞納者から徴収できないことになっていました。
2020年の民法改正後は、管理費は一般の債権と同様に扱うことになり、債権の消滅時効は、権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年と定められました。
管理組合は、当然管理費の支払日を知っているわけですから、消滅時効は支払日から5年ということになります。
よって、マンションの管理費の消滅時効は5年であり、民法改正前と変わりませんが、マンション管理費は一般の債権と同じ扱いになったことを覚えておきましょう。
2.時効の更新
時効の更新とは、時効期間が進行している最中に一定の事由(更新事由)が発生した場合は、それまで進行中だった時効期間を意味のないものにし、時効が更新されて、新たに時効期間がスタートすることをいいます。
時効の更新の一定事由には、以下のようなものがあります。
1)債権者からの裁判での請求
裁判で、管理組合が、滞納している管理費を支払うよう請求するなどの訴訟を行い、判決が下って債権者側の勝訴となり権利が確定すれば、時効は更新され、改めて時効期間が始まります。
2)債権者からの強制執行
管理組合が、強制執行の申し立てをし、それが承認されると、管理費滞納者の財産が裁判所により強制的に差し押さえられます。この場合も時効は更新されます。
3)債務者からの承認
管理費滞納者が、管理費を滞納していることを認めた場合、時効が更新され、これまでの時効経過期間は無かったことになり、新たな時効のカウントが始まります。
口頭で認めた場合も承認したこととなりますが、証拠が残らないため、書面にして残しておくことが望ましいです。
3.時効の完成猶予
時効の完成前に、一定の事由が発生した場合は、事由が終了するまでは時効が完成しないことを「時効の完成猶予」といいます。
一定の事由には、以下のようなものがあります。
1)裁判手続きの最中
時効が完成する前に、管理組合が滞納分を支払うよう請求をするなどの訴訟を行った場合、裁判が終了するまでは時効は完成しません。
また、前述した通り、判決が下った場合は時効の更新がなされます。
2)債権者からの催告
管理組合が、滞納者に対し、「滞納している管理費を支払って欲しい」という旨の内容を伝えることは、催告に該当し、6ヵ月間時効の完成を遅らせることが可能です。
催告をした証拠として、内容証明郵便にて書面を送付するのが望ましいでしょう。
また、催告で時効の完成を遅らせることが可能なのは1回なので、その点にも注意しましょう。
3)協議を行うことが書面で合意された場合
管理組合と滞納者とで、金額についてや、遅延損害金についてなどの話し合いがまとまらず、協議を行う場合、協議を行う旨の合意が書面にて為された場合は、一定期間時効の完成が猶予されます。
これは2020年の民法改正により追加された内容なので覚えておくとよいでしょう。
4.修繕積立金の消滅時効は何年?
マンション管理費の消滅時効は民法が改正されても5年ですが、修繕積立金の消滅時効は何年でしょうか。
修繕積立金も、管理費と同様の理由で、法改正があっても原則5年で変わりません。
ただし、修繕一時金に関しては変更があったので注意が必要となります。
修繕一時金は、毎月の修繕積立金とは別に、大規模修繕の際に徴収される修繕費です。
民法改正前は、修繕一時金の消滅時効は10年でしたが、改正後は5年となりました。
約半分も期間が短縮されたため、こちらについては必ず覚えておきましょう。
まとめ
2020年に民法の改正があり、マンション管理費や修繕積立金などは、一般の債権と同様に扱われるようになりましたが、改正前も改正後も、消滅時効は5年で変わりはありません。
ただし、修繕一時金は、民法改正により、消滅時効が10年から5年に短縮されたので注意しましょう。
マンション管理費や修繕積立金を滞納すると、マンション全体に迷惑をかけることになるため、滞納することなく支払うことが重要です。