マンションの修繕積立金は安い方がいい?相場や値上がりなど徹底解説
マンションを購入する場合、毎月、修繕積立金の支払いが必要となります。
修繕積立金は経年劣化などによって生じる建物や共用部の修繕工事に備える費用です。
しかし、マンション購入時にはローンの返済の他に管理費、修繕積立金の負担も発生するため、修繕積立金の安いマンションの方が良いのではと考える方が多いかもしれません。
では、本当にマンションの修繕積立金は安い方が良いのでしょうか。
今回は、マンションの修繕積立金の相場や修繕積立金が安いマンションの方が良いケース、修繕積立金の安いマンションは避けた方が良いケースについてご説明します。
1.マンションの修繕積立金の相場
時間の経過とともに、建物や設備は劣化していきます。
そのため、分譲マンションでは管理組合が定期的な修繕に備えて区分所有者から修繕積立金を集めています。
では、マンションの修繕積立金の相場はどの程度なのでしょうか。
1)修繕積立金の目安
国土交通省では「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を発行しています。
このガイドラインは平成23年に策定されたものですが、令和3年9月には改定、令和5年4月には追補版が公開され、社会情勢に合うようアップデートされています。
ガイドラインの中では、336の事例を対象に長期修繕計画を分析し、必要となる修繕工事費の総額を捻出する場合に必要となる専有面積1㎡当たりの月額単価を算出しています。
機械式駐車場については、修繕工事が大幅にアップするため、機械式駐車場を除いた場合の修繕積立金の目安をご紹介します。
修繕積立金平均額の目安(機械式駐車場を除く)
地上階数 | 建築延床面積 | 専有面積当たりの月額修繕積立金額 | |
事例の2/3が該当する額 | 平均値 | ||
20階未満 | 5,000㎡未満 | 235円~430円/㎡・月 | 335円/㎡・月 |
5,000㎡以上10,000㎡未満 | 170円~320円/㎡・月 | 252円/㎡・月 | |
10,000㎡以上20,000㎡未満 | 200円~330円/㎡・月 | 271円/㎡・月 | |
20,000㎡以上 | 190円~325円/㎡・月 | 255円/㎡・月 | |
20階以上 | 240円~410円/㎡・月 | 338円/㎡・月 |
このデータを見ると、20階未満のマンションでは、延床面積の狭いマンションに比べて、延床面積の大きいマンションの方が修繕積立金の額が安くなることが分かります。
これは、規模の大きなマンションの方が効率よく修繕工事を進められるからです。
ただし、20階以上の高層マンションになると、特殊な足場などが必要になり、施工期間が長くなります。
そのため、修繕工事にかかる費用も高くなり、必要となる修繕積立金の額も高くなるようです。
マンションを購入する際には、この修繕積立金の平均値を参考にすると、修繕積立金が適正な額であるかどうかを判断しやすくなるでしょう。
2)築20年のマンション修繕金の相場
マンション修繕積立金の積み立て方式には、均等積立方式と段階増額積立方式の2つがあります。
均等積立方式とは、将来にわたって定額を積み立てる方式です。
一方、段階増額積立方式は、修繕費に応じて積立金を徴収する方法で、当初の修繕積立金の額は低いものの、時間の経過とともに修繕積立金の額も高くなります。
前述の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、築後30年間に必要な修繕工事費の1戸当たりの総額522万円を確保する場合を想定し、築年数ごとの修繕積立金の相場を示しています。
1戸当たりの築20年マンションの修繕積立金の額は、それぞれの積み立て方式で次のようになります。
均等積立方式 | 14,500円/月 |
段階増額積立方式 | 15,000円/月 |
(※段階増額積立方式は、購入時に36万円を徴収。初年度の修繕積立金の月額を6,000円、5年おきに月額3,000円ほど値上げする方法で算出)
2.修繕積立金が安いマンションの特徴3つ
修繕積立金が安いマンションの方が良いのかどうかを知る前に、まずは修繕積立金が安いマンションの特徴を確認しておきましょう。
修繕積立金が安いマンションの特徴は、主に以下の3つとなります。
- 駐車場又は自動販売機がある
- 機械式駐車場がない
- 戸数が多い
1)駐車場又は自動販売機がある
駐車場があるマンションは、駐車場代を管理組合が受け取り、管理費用として利用するケースが多いため修繕積立金が安い傾向にあります。
自動販売機も同様に、収入が管理費に充てられるため、マンションの修繕積立金が安くなるのです。
国土交通省が制定する「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、駐車場料金などについて以下の通りに定められています。
第29条 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等にかかる使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
マンション管理組合の中には、収入の多くを駐車場の料金が占める所も少なくありません。
駐車場・自動販売機などがあるマンションは、その収入を管理費又は修繕積立金に充当できるためコストが安いのです。
ただし、次でご説明しますが、駐車場でも機械式駐車場がある場合は、修繕積立金は高くなります。
2)機械式駐車場ではない
機械式駐車場は、パレットを動かす電気代やメンテナンス料など、維持費と修繕費が高い傾向にあります。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、機械式駐車場がある場合、修繕積立金は次のように増額するとしています。
<機械式駐車場1台当たり月額の修繕工事費>
機種 | 修繕工事費(1台当たりの月額) |
2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円/台・月 |
3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円/台・月 |
3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円/台・月 |
4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円/台・月 |
エレベーター方式(垂直循環方式) | 4,645円/台・月 |
その他 | 5,235円/台・月 |
例えば3段ピット(ピット1段)昇降横行式の機械式駐車場が50台ある場合、機械式駐車場の修繕工事費として毎月7,210円×50台で360,500円の積み立てが必要となるわけです。
世帯数を100とした場合、360,500円÷100で1世帯当たり月3,605円の修繕積立金が加算される計算となります。
したがって、機械式駐車場がないマンションの方が、修繕積立金は安くなる傾向にあるのです。
3)戸数が多い
国土交通省が実施した「平成30年度マンション総合調査」のデータによると、マンションの修繕積立金は規模が大きくなるにつれて低下する傾向にあります。
規模が大きいマンションは戸数が多いため、按分した金額が低くなることが理由です。
ただし、200戸以上のマンションは、修繕積立金が上昇する事例が多く注意が必要です。
3.マンションの修繕積立金に関する注意点
マンションの修繕積立金に関しては、以下の2点に注意しましょう。
1)「安い=良い」は間違い
マンションの修繕費は「安い=良い」という訳ではありません。
外壁や屋根などの計画的な修繕は、外観の劣化・雨漏りなどを防ぎ、快適な住まいづくりに欠かせないものです。
修繕積立金が安すぎるマンションは、長期的な修繕計画が不十分である可能性があります。
よって修繕積立金は「適切な価格であるか」が重要になるのです。
2)重要事項調査報告書で積立金の値上げ予定をチェック
国土交通省の「平成30(2018)年度マンション総合調査」によると、マンション全体の積立方式は「均等積立方式」が41.4%、「段階増額積立方式」が43.4%となっています。
新築のマンションは「段階増額積立方式」が多く、段階増額積立方式を採用している管理組合が「修繕積立金を増額したことがある」と答えた割合は81.7%に及びます。
「段階増額積立方式」の場合、将来的な修繕積立金の値上がりに注意しましょう。
なお、管理費や修繕積立金を改定する予定があるのかどうかは「重要事項調査報告書」で確認ができます。
4.修繕積立金が安いマンションを購入した方が良いパターン
購入後5年程度で売却を考えている場合、修繕積立金が安いマンションを選んだ方が良いでしょう。
区分マンション投資やヤドカリ投資を考え、5年程度で売却する予定なら、修繕積立金が安いマンションの方が支出を抑えられるため、収益性が上がります。
投資用物件の場合、生み出す利益をもとに不動産の価格を決める「収益還元法」が適用されることが多く、修繕積立金が安い方が利回りが良いため、投資用物件として売却する際にも物件評価が上がり、売却益も高くなるのです。
しかしながら、修繕積立金が安いマンションの場合、工事費用不足が懸念されることから、途中で修繕積立金が上がる可能性も。
この場合、利回りが悪くなるため、売却価格も下がります。
5.修繕金が安いマンションを避けた方が良いパターン
修繕積立金が安いマンションを避けた方が良いケースもあります。
修繕積立金が安いことがデメリットになるケースには、次の2つのパターンがあります。
1)長く住む予定の場合
区分マンション投資やヤドカリ投資のように長く所有する予定がない場合は、支出を抑えられる修繕積立金が安いマンションがおすすめです。
しかし、居住用マンションとして自分が長く住む予定の場合は、修繕積立金が安いマンションは避けた方が賢明でしょう。
修繕金が安いマンションは、修繕金が不足し適切な工事ができないケースも。
長く安心して生活でき、マンションの資産価値を維持するためにも、安すぎる修繕積立金には不安が残るでしょう。
また、修繕積立金の残高が十分に確保されている場合は、途中から修繕積立金を長期修繕計画とは別の計画に使用することも可能になります。
2)3回目の大規模修繕を控えている場合
3回目の大規模修繕を控えているマンションであるにもかかわらず、修繕積立金が安いマンションは注意が必要です。
大規模修繕工事は、12年~16年に一度のサイクルで行われます。
したがって、3回目の大規模修繕計画が実施されるタイミングは、築36年以上が経過したタイミングで、修繕工事にかかる費用も高額になるはずです。
それにもかかわらず、修繕積立金の額が安い場合、工事費用が不足し、まとまった額の一時金を調整される可能性も。
金融機関から大規模修繕のために借り入れを行う可能性もあり、金利の返済で修繕積立金は値上げに追い込まれるでしょう。
一時金の徴収や金融機関からの借り入れができなかった場合、大規模修繕は実施できません。
こうなるとマンションの劣化が進み、資産価値の低下にもつながります。
したがって、3回目の大規模修繕を控えているものの、修繕積立金が安いマンションは避けた方が賢明です。
まとめ
東日本不動産流通機構によると、2022年度に成約した首都圏の中古マンションにおける修繕積立金は、月額平均11,474円となっています。
修繕積立金の額は、マンション敷地内の駐車場・自動販売機の有無、戸数、機械式駐車場の有無によって変わります。
毎月の修繕積立金を少しでも抑えたいオーナーは、本記事で「修繕積立金の安いマンションの特徴」をチェックしましょう。
ただし、修繕積立金は「安ければ良い」と言うものではありません。
区分投資やヤドカリ投資を考えている場合、利回りと売却益を考慮して、修繕積立金が安いマンションを選びましょう。
反対に、長く住む予定のマンションであれば、資産価値を守るためにも修繕積立金が安いマンションは避けた方が安心です。
マンションを購入する際は、予定する所有期間に合わせて修繕積立金の額を「重要事項調査報告書」で確認しましょう。