【建築士解説】地震に強い木造住宅の目安は「耐震等級3」
地震大国の日本で木造住宅を建てるなら、建物の耐震性を高めることは必須です。
「木造住宅は地震に弱そう」
「鉄骨造や鉄筋コンクリート造の方が地震に強いのでは?」
と考える方がいますが、構造や工法による耐震性の違いはありません。
適切な設計と構造計算、施工を行えば、地震に強い木造住宅を建てることができます。
地震に最も強い木造住宅とは、次のような「耐震等級3」の住宅です。
● 許容応力度計算(構造計算)で耐震等級3が認定された住宅
● 住宅性能表示制度において耐震等級3と評価された住宅
木造住宅で耐震等級3であれば、震度7レベルの大地震が複数回きても軽微な補修でずっと住み続けられる住宅だといえます。
ただし「耐震等級3相当」など曖昧な表記をしているメーカーや住宅には注意が必要です。
1.地震に強い木造住宅とは?
地震に強い木造住宅の定義はいくつか挙げられますが、「木の特長」と「木造住宅の耐震性」の点から説明します。
1)木の特長
建材としての木材は、コンクリートや大理石やアルミ等に比べて、単位重量当たりの圧縮強度・引張り強度ともに高く、強度が高い建材だといえます。
画像出典:北海道立林産試験場 木質系住宅のすすめ|地方独立行政法人北海道立総合研究機構
また、地震が起こった時、建物が重いほど大きな力がかかり揺れも大きくなります。
木造住宅は戸建住宅の中で一番軽い構造のため、揺れも小さいという特長があります。
2)耐震性
地震対策として挙げられるものは「耐震」「制震」「免震」の3つです。
ハウスメーカーによっては独自の制震ダンパーや免震システムが用意されていることもありますが、免震システムは数百万円かかるため、戸建住宅に採用するには高額なのが現状です。
基本的には構造計算をして耐震性を確認し、適宜、制震性能(制震ダンパー等)を付加するのが良いでしょう。
耐震性については、4章で詳しく説明します。
2.現行の建築基準法における耐震基準は「2000年基準」
1981年(昭和56年)6月1日から施行された「新耐震基準」では、「中規模の地震(震度5強程度)ではほとんど損傷を生じず、大規模地震(震度6強から震度7程度)に対しては、「人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないこと」が基準になっています。
つまり、建築基準法の「新耐震基準」はあくまで「人命を守るための基準」でした。
1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、木造住宅にのみ、2000年6月1日に「2000年基準(新・新耐震基準)」が施行されました。2000年基準では以下のように定められています。
「2000年基準(新・新耐震基準)」の規定内容
・地盤調査を行う
・地耐力に応じた基礎の仕様の規定
・耐力壁をバランスよく配置
・接合金物の適切な使用
木造住宅を中古購入するなら、2000年6月以降に確認申請を受けていることが、耐震性の一つの判断基準になるといえるでしょう。
ただし、確認申請を受けているだけでは耐震等級1(確認申請を通過する最低基準)が保証されているに過ぎません。
中古住宅の耐震性については、耐震診断を受けて確認すると安心です。
3.地震に強い木造住宅の間取りとは?
地震に強い木造住宅の間取りの一つの目安が、直下率です。
シンプルにお伝えすると、「1階と2階の柱と壁が揃っている割合」で、柱の直下率は50%以上、壁・耐力壁の直下率は60%以上が目安になります。
下の図で、青は1階のみに存在する柱と壁、赤は2階のみに存在する柱と壁、紫は1階と2階両方に存在する1階のみに存在する柱と壁です。
画像出典:伊予市公式サイト
1階に柱のない大空間リビングがあったり、1階リビングに大開口窓があり直上階に壁が乗っていたりすると、構造的に不利になりがちです。
もちろん、許容応力度計算(構造計算)をして耐震等級3が確認されれば良いのですが、構造計算をクリアするために梁を大きくしたり接合金物が増えたりしてはコストがかかります。
直下率が絶対的な指標というわけではありませんが、構造計算を踏まえながら構造的に安定した住宅プランをつくることはとても大切です。
4.地震に強い木造住宅は許容応力度計算をした耐震等級3
小規模な建築物に用いられる構造計算『許容応力度計算(構造計算)』をした耐震等級3が認定されていることが、もっとも地震に強い木造住宅だといえます。
木造住宅において、耐震等級3はもはや必須でしょう。
耐震等級1は、家が倒壊する前に逃げることができる「人命を守ることができる」最低限の基準。
震度7の地震が2回起こった場合、倒壊するリスクが高いです。
その後、住めないほど損壊してしまっては、地震で被災した後の生活が大変です。
それに対して耐震等級3の住宅は、被災後も修繕すれば引き続き住める可能性が高いのです。
耐震等級1 | 耐震等級2 | 耐震等級3 | |
耐震性能 | 数百年に一度程度の地震(震度6強~7)で倒壊、崩壊等しない程度 | 耐震等級1の1.25倍 | 耐震等級1の1.5倍 |
建物例 | 建築基準法の耐震性能 | 長期優良住宅(耐震等級2以上)のほか、学校などに採用されている | 消防署や警察署など防災拠点となる建築物に多く採用されている。
最近では住宅でも採用が増えている。 |
「耐震等級1の1.5倍の耐力壁や構造材を配置したから、構造計算していないけれど耐震等級3“相当”です」という謳い文句は、耐震等級3とは全く別物ですのでご注意ください。
【建築士が説く!】戸建ての耐震等級は1で十分?耐震等級3の強さと費用及び必要性を解説
最近は、標準仕様で耐震等級3の住宅を提供するハウスメーカーも増えてきました。
耐震等級3の設計を標準として行っているメーカーであれば、設計実績も豊富で安心して依頼できるでしょう。
地震に強い木造住宅のまとめ
地震に強い木造住宅とは、耐震等級3の住宅です。
もちろん、全体的に考えると、強い地盤の上に、構造計算された基礎と建物本体があって初めて成立します。
2000年に品確法(正式名:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」)の住宅性能表示制度が始まりましたが、あくまで任意の制度です。
さらに、木造2階建て住宅の構造計算は、法律では義務化されていません。
地震に強い木造住宅は「許容応力度計算(構造計算)で耐震等級3が確認された住宅」と「住宅性能表示制度で評価された耐震等級3の住宅」です。震度6・7レベルの大地震が複数回きても、軽微な補修で長く住み続けられるでしょう。
これから地震に強い木造住宅を考えられている方は、耐震等級3認定をおすすめします。